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デュランタ
曇り空の昼下がり
乾いた咳をひとつ
とりとめのない話ばかりが
吐息に交じって空に溶ける
庭に咲いたデュランタが
音もなく千々に散る
流れる季節の渦の中
感情をひとつ落としたらしい
隣には誰もいないから
少し濁ったコーヒーを飲もう
爪先から這い上がる空気に
指をさして嗤うのさ
庭に咲いたデュランタが
風に吹かれて消えてゆく
過ぎゆく日々の真ん中で
記憶をひとつ捨てられずにいる
君の植えたデュランタが
あの日のように弾け飛ぶ
君の植えたデュランタが
あの日のように走り去る
あの日のように
君のように
コーヒーカップが空になった
乾いた咳をひとつ
「ずっと見守る」なんて嘘は
これで終わりさ