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それだけ。
世界は五分前に始まっていて。
自分の持っている記憶が、
すべて捏造されたものだとして。
もし、そのことを
真実だと理解してしまったとして。
僕はどうするだろうか。
手に取るように分かる。
ありありと目に浮かぶ。
だからどうした、と
ポケットに手を突っ込んで
退屈そうに歩く姿が。
真実なんてそんなものだと思った。
重さなんてないし、
形なんてないし、
ただ曖昧にそこにあるだけ。
たとえそれが世界の終末だとしても、
僕が死んで、君が死んで、世界が死ぬだけ。
目を背けているわけじゃない。
空に浮かぶ鱗雲が、
どうにも遠い気がする。
それだけ。




