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歌
ある日、おれは心を揺さぶる歌に出会った。
それは憎しみの歌だった。
それは後悔の歌だった。
それは悲しみの歌だった。
それは迷いの歌だった。
歌詞に込められた感情が、ナイフのように脳味噌へ刺さった。
引き抜こうとすればするほど、深く、深く入り込む。
かつておれは、憎しみの塊だった。
光り輝く、欺瞞に満ちた現実を睨んでいた。
鏡に映る、充血した双眸にありったけの感情を込めて生きていた。
世界の全てに憎しみを投げつけて、存在を保とうとしていた。
やがて身を焦がす熱は冷め、渦巻く憎しみは霧散した。
残ったおれは、一体なんだというのか?
それは、実に明白で簡単な話だった。
微かな風の音が過ぎ去る夜道で、ライターの火をつけたまま、
ただそこに立ち続けている……それこそがおれだったのだ!
脳味噌に刺さったナイフは、完全におれと同化してしまった。
かつておれを食い殺そうとした、憎しみだ!
抗えるはずもなく、おれは帳を引き裂いてしまった――。




