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ニセモノ
僕はニセモノなんだ。
ずっとみんなを騙してたんだ。
話を合わせて、笑顔を絶やさない。
たとえそれが覚えていないことでも。
アルバムに載っていた顔。
それは鏡に映る僕の顔、らしい。
忘れてしまったんだ、僕を。
声を。仕草を。記憶を。人格を。
頼るものがあるはずなのに、思い出せない。
空っぽになりきれず、中途半端に生きている。
それでも、覚えていることはあった。
いつの日か見た青空と、墨汁の色と、誰かの横顔。
失ったものに気付けない。
いつか、いつか思い出すのかな。
本当の僕はどこへ行ってしまったんだろう。
どうして、僕は僕のままなのだろうか。
アルバムを頼りに名前を憶える。
本当のことを覆い隠す。
だから僕は、ニセモノなんだ。
何も知らないんだ。本当に。
騙し続けているんだ。
誰かが、いつか気付くだろうことを。
そうしたら、どうなるのだろう。
「 をかえせ」って言われるのかな。
そんなこと、僕が一番祈ってるんだよ。
でも、できなかった。どうしようもなかったんだ。
けど、僕だけは逃げちゃいけない。
それだけは赦されないはずだ。
全てを知ってる僕は、 が僕の中に戻ってくるまで。
その時まで、僕は生き続けるんだ。
その時までは、騙されたままでいて。
その時までは、ニセモノのままでいるよ。




