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蜘蛛
俺の凭れかかっている壁に
一匹の蜘蛛が這い上ってきた
嫌いじゃない
けれど好きでもない
ただいつも思うのは
その無駄に多い脚を一本
俺に分けて欲しいということだけ
そうしたら俺は
自由になれる
不自由を誇ることができない俺にとって
蜘蛛の脚は翼にも等しかった
そんなことは知りもしない蜘蛛が
跳びはねて俺の手のひらに落ちてきた
あまりにも小さい命
この左手を握るだけで消える命
命が等価であるなんて
誰かの吐いた戯言だ
「いいじゃないか
その体に付いている脚の一本ぐらい
そんなにたくさんあるんだ
失くなったって問題ないだろう?」




