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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第6章

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87.勇者、Sランクパーティに認定される




 俺たち兄弟で、邪神アクアエレメントを討伐した、数日後。


 8月上旬のある日。

 ダンジョンのボス部屋にて。


「ゴォオオオオオオオオオオ!」


 部屋には巨大な、岩でできた巨人がいた。

 こいつは岩巨人ゴーレム

 SSランクのボスモンスターだ。


 岩巨人ゴーレムは大樹を彷彿とさせる太い腕を振り上げる。


「サクラ、防御の護符を!」

「任せとき!」


 弟ガイアスの指示で、サクラが懐から札を取り出す。


 彼女が札を投げると、空中で聖なる結界を張る。


 岩巨人の強烈な一撃が、結界とぶつかる。

 ガキィイイイイイイイイイイイイン!


「エリーゼ、準備は!?」

「できてるよ、ガイアス君!」


「よし、サクラ、押し返すぞ。それまで耐えろ」

「了解やで!」


 そんなふうに、ガイアス、サクラ、エリーゼが、ボスモンスターと戦闘している。


 一方、俺と義弟は、その様子を離れた場所で見ていた。


「あにうえー!」

「ん? どうした、ミカ?」


 俺は壁際に座っている。

 膝の上に、ミカエルがあぐらをかいていた。


「どうしてぼくらはお留守番です? ぼくも戦いたいですー!」


「今回は海底のダンジョンだからな。暴れると水没して危ないからよ」


「でもでも~! ずるいー! 3人ばっかり楽しそー!」


 ガイアスたちはボスモンスターを圧倒している。


 流れるような連携を見ていると、なるほど楽しそうという意見もわからなくはない。


「仲間はずれはいやです! ぼくもやるでーすー!」


「はいはい、大人しくしてような」


 俺は義弟の頭を撫でる。


「大人しくするです~♪ だからもっと撫でて欲しいです~」


 ミカエルは頭を撫でられると、子猫のように目を細める。


「あにうえ独占できるから、これはこれで良いものですっ。がまんしてやるです!」


「おー、偉いぞミカ。あ、そろそろ終わるな」


 岩巨人はすでにボロボロの瀕死状態だった。


「ゴォオオオオオオオオオオ!」


 最期のあがきに、ゴーレムが自分の右腕を分解し、エリーゼに射出する。


 エリーゼは魔法を打つため、精神を集中させていた。


 以前なら、怖がっていただろう。

 けれど今の彼女は怯まない。


「悪いけど、ボクの仲間は傷つけさせないよ!」


 ガイアスはエリーゼの前に立ち、双剣を振る。


 スパパパパパパパパッ!


 神速の連撃により、岩は粉々になる。


「結界の用意はできてるで! エリーゼ、いつでも撃ってやぁ!」


「うん! いくよ、極大魔法【煉獄業火球ノヴァ・ストライク】!」


 その瞬間、岩巨人の真上に魔法陣が展開する。


 巨大な火の玉が、岩巨人に激突する。


 ドガァアアアアアアアアアアアアン!


 激しい爆発。

 しかしその周りを、サクラの張った結界が包んでいた。


 熱と衝撃波は結界内に留まり、ダンジョンを傷つけることはない。


 岩巨人はドロドロに溶けると、消滅したのだった。


「ふぅ……お疲れ、ふたりとも」


 ガイアスが言うと、エリーゼ達は笑顔で言う。


「あんたもお疲れさん」

「ガイアス君ありがとう! 守ってくれて」


「べ、別に……仲間を守るのは、リーダーとして当然だからね」


 ふんっ、とそっぽを向くガイアス。

 エリーゼは手を伸ばし、弟の手を握る。


「いつも本当にありがとう。ガイアス君がいるから、わたし、敵の攻撃が怖くなくなったよ」


「あ、あっそ……」


 戦闘が終わったので、俺は義弟とともに、ガイアス達のもとへいく。


「いやー、お疲れお疲れ。良かったぞ」


「に、兄さん!」


 バッ……! とガイアスはエリーゼの手を払う。


「あの、その……エリーゼとのこの握手には、別に深い意味ないから! 勘違いしないでよね!」


「がいあす何慌ててるです? あ、わかったー! 浮気してるって思われたくないです? 本命はあにうえだもんね!」


「ば、ばかミカ! へ、変なこと言うなよ!」


 顔を真っ赤にするガイアスに、ニヤニヤとサクラが笑う。


「ほーんまあんたユリウスはんにゾッコンラブやな~」


「違うから! ほんと、違うからね兄さん! 誤解しないように!」


 くすくす、とエリーゼ達が笑う。


 以前と違って、パーティメンバーの間には、なごやかな雰囲気が漂っている。


 俺はガイアスが、女子チームと仲良くしてるのを見れて、兄として満足だった。


「じゃ、帰ろうか、みんな」


「あ、ちょっと待ってな弟よ。すぐ終わるからさ」


 俺は部屋の奥においてある、人間大の結晶のところまで行く。


 虚空剣で空間を裂き、そこにこの結晶を入れる。


「あにうえ、なにしてるですー?」


「【迷宮核】を回収してたんだ」


「めーきゅーかく? なんです?」


 仲間達がぞろぞろと、俺に近づいてくる。


「そう言えば兄さん、毎回ボス戦のあと、こまめにこれ回収してたよね」


「ああ。迷宮には心臓があってな。それがこの結晶なんだ。これがある限り迷宮はモンスターを生み続ける。ボスモンスターを倒した冒険者は、これを回収するのが通例とされてるんだ」


「「「へぇー……知らなかった」」」


「なんだ、こんなの常識だぞ?」


「兄さんに言われると……なんだろう、釈然としないよ……」


 はぁ、とガイアスがため息をつく。


「まあうちら本業の冒険者やないからな、冒険者の常識っちゅーのがイマイチわからん」


「迷宮核って回収した後、どうするのユリウス君?」


「ギルドが買い取ってくれるんだ。そうだ。結構たまったし、今日は売りに行ってみるか」


「「「さんせー!」」」


 俺は虚空剣を使って、空間の壁を切り裂く。


 裂け目をくぐると、ダンジョンの外に到着した。


「毎回思うんやけど、転移魔法使えない迷宮で、転移できるのってほんま凄いと思うわ……」


「さすがユリウス君だよね! ほんと、尊敬するなぁ~」


 雑談しつつ、俺たちは街の冒険者ギルドまでやってきた。


 ギルドは、手前が酒場になっている。


 俺たちは冒険者の間を縫いながら、奥の受付カウンターを目指す。


「……おい聞いたか、【すごいパーティのウワサ】」


 ふと、冒険者達のウワサ話が耳に入った。


「……きいたきいた。短期間で凄まじい数のダンジョンが突破されてるって」


「……ああ、しかも同じパーティがだろ? 信じられるか?」


「……あり得ない。根も葉もないウワサだろ?」


 そんなふうにしながら、俺たちはカウンターまでやってきた。


 受付嬢が、俺たちに笑顔を向けてくる。


「これはユリウス様。ギルド入会試験以来ですね」


「そうだな。2週間ぶりか? 今日は買い取りをお願いしたい」


「かしこまりました。どちらの品を買い取りで?」


「【迷宮核】を100個」


 受付嬢の笑顔が、ビシッ……! と凍り付く。


「え、ええっとぉ……今、なんとおっしゃりました?」


「え、迷宮核が100個くらい溜まったから、全部買い取って欲しいって言ったんだけど?」


 そのときだった。


「おいおい兄ちゃん、嘘はいけないぜぇ~?」


「あ、チンピラ冒険者です。よく見るやつです?」


 柄の悪い男が、仲間を引き連れて、俺たちのもとへやってくる。


「え、別に嘘なんてついてないぞ?」


「ハッ! おまえら冒険者ランクいくつよ?」


「Fだけど?」


「くくく……あーはっは! これはお笑いだ! 最底ランクのてめえらが、いったいどうやって迷宮を100個も突破できるっていうんだよぉ!」


 チンピラが部下とともに、ゲラゲラと笑う。


「どうやってって、普通にこのパーティ組んで、1日に5つくらいダンジョンクリアしてたんだけど?」


「はいはい、そんなの夢物語り。できるわけねーっつーの。ダンジョン1つクリアするのだって、とても苦労するんだぜ? 1日に5つクリアなんてできるわけねーだろボケが」


「あにうえー。こいつあにうえ以上に世間知らずです?」


 俺はもめ事起こさないよう、義弟の口を手でふさぐ。


「まあでも、クリアできてるからな実際」


「ハッ! なら証拠見せろよ。え? 迷宮核100個をよぉ? 見せられなかったら鼻からスパゲッティ食ってもらうぜ?」


「見せられたらどうするんだ?」


「そのときはおれがやってやるよ!」


 俺は虚空剣を使って、空間を切り裂く。


 ザラザラザラザラザラザラザラ……!


 亜空間に収納していた、迷宮核が、いっせいに出てきた。


「ど、ど、どしぇ~~~~~~!? め、迷宮核がこんなにぃ~~~~~~!?」


 チンピラが目をむいて叫ぶ。


「これで信じてくれたか?」

「ま、まだだ! どうせこれ偽物だろぉ! おい受付嬢ぉ! 鑑定しやがれぇ!」


「あにうえ、ぼくスパゲッティ買ってくるです」


 ややあって。


「鑑定の結果……すべて、本物でした」


「な、なんだってぇえええええええ!?」


 愕然とした表情で、チンピラが俺たちを見やる。


「そんな……あり得ない。おまえら、たった2週間前くらいにギルドに登録したばかりだろ! ダンジョンを100個クリアなんて前代未聞だぞ!?」


「え、そうなの?」


 周りに集まっていた冒険者達が、こくこくとうなずく。


「しかも驚くことに、突破不可能とされていた海底ダンジョンの迷宮核すらありました……」


 受付嬢が、俺たちに信じられないものを見る目を向ける。


「そんな! あそこはSランクパーティ25組が結集して数十日かけても突破できなかったんだぞ!?」


「え、そうなの? 今朝出発して、昼前にはクリアしたよな?」


 こくこく、と仲間達がうなずく。


「すごすぎる……なんだ、なんなんだよ、おまえらぁ!?」


「「「ただの、冒険者パーティだけど?」」」


「嘘つけぇえええええええええ!!!」


 叫ぶチンピラ冒険者をよそに、受付嬢が俺たちに近づく。


「上と掛け合ってみますが、ユリウス様たちのパーティは、Sランクに認定されると思います」


「え、最高ランクじゃん。2週間でなれるものか?」


「いえ……ギルド創設以来、こんな短期間でSランクになれたパーティは前代未聞です。ですがあなた様がたは、それほどまでに素晴らしい功績を残したということです」


 かくして、なんかよくわからないが、とりあえず俺たちパーティはSランクになったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガイアス成長しててよかった ミカエルも口悪いけど、ユリウスの言うことを聞いてて成長してますね。 [気になる点] >「あ、チンピラ冒険者です。よく見るやつです?」 ミカエルの毒舌、面白すぎ…
2020/07/26 20:58 退会済み
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