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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第6章

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79.勇者、幽霊屋敷を掃除する



 冒険者登録を終えた俺たちは、合宿予定地へとやってきた。


「おお! あにうえ~、おっきなお屋敷ですー!」


 俺たちがいるのは、カシクザキの街の端。

 山の中にある、【洋館】だった。


「確かに立派だけど……こ、これちょっとお化け屋敷みたいじゃない?」


 エリーゼが見上げる先にあるのは、なるほど、確かになかなか立派な洋館。


 しかし庭先の草は荒れ放題。

 館の壁には蔦やら葉っぱやらがびっしり張り付いている。


「趣あってええやろ?」


「おう、良い感じだな」

「かっこいー!」


 義弟は明るい表情で答える。


「…………」


「どうした弟よ、暗い顔して?」


「へぇ!? べ、べべべべ別に!?」


 いつもの不機嫌顔ではなかった。

 思い詰めているような表情だった。


「サクラちゃん、このお屋敷どうしたの? あ、レンタルかさすがに」


「んーん、買ったった♡ お小遣いで」


 愕然とした表情のエリーゼ。


「お前金持ちだな。さすがお姫様だ」


「ユリウスはんも公爵やから、お金持ちちゃうん?」


「家はそうだろうけど、別に俺が持っている金じゃないしな」


 お小遣いだってごく一般的な額しかもらっていない。


「で、でもなんで宿取るんじゃなくてお屋敷を買ったの?」


「おもろないやん。せっかくの合宿なんやで? 料理とか洗濯とか、みんなでやろうやぁ♡」


 なるほど、宿を取ると全部サービスでやってもらえるからな。


「よし、じゃあ行くか」


「「「おー!」」」


 みんなが荷物を持って、屋敷の中へと向かっていく。


「弟よ、何ぼさっと突っ立ってるんだ? いくぞー」


「ま、待ってよ兄さん!」


 ガイアスが青い顔をして、俺の腕にしがみついてきた。


「え、どうしたんだおまえ?」


「べ、別に! 置いて行かれたくなかったからだけど!」


「置いてかないって」


 腕に弟をひっつけた状態で、俺たちは屋敷の中へ入る。


「あははっ! 中もおんぼろ~。お化け屋敷みたいですー!」


「ひっ……!」


 青い顔をして、弟が小さく悲鳴を上げる。


「へ、変なこと言うなよミカエル!」


「がいあすはどーしたです? ブルブル震えちゃって……あ、わかったです! 怖いんでしょ~?」


「ち、ちちちち、違う!」


 今度は顔を真っ赤にして、ガイアスが義弟に叫ぶ。


「じゃどーしてあにうえとずっと一緒です? 怖くて離れられないです?」


「え、そうなの?」


 バシッ!


「違う!」


 ふんっ! とガイアスはそっぽを向いて、俺から離れていう。


「ま、そんじゃサクッと部屋決めして、全員で分担してお掃除な」


「「「はーい!」」」


 部屋割りは男チームと女チームに分かれることになった。


「わーい、あにうえと同じ部屋~」


 創生魔法で出したベッドに、ミカエルが飛び乗って、ばうんばうんと飛び跳ねる。


「しかし弟よ、意外だった」


「なんだよ兄さん」


「いや、てっきり自分は一人で部屋使うからー、みたいに言うのかと思ってた」


 ガイアスは単独行動しがちだからな。


「べ、別にいいだろ……?」


 自分の荷物を置いて、ガイアスがため息をつく。


「あにうえ、がいあす怖くて、一人じゃモガモガ……」


 弟が義弟を後ろから羽交い締めにしている。


「え、なんだって?」


「なんでもないよっ! さっさと着替えて掃除するんだろ!」


 汚れても良いような服装になり、俺たちはリビングルームへとやってきた。


「掃除道具は適当に使ってくれ」


 ドチャッ……!


「ナチュラルに魔法で掃除道具作ってるわ。さすが旦那様やで~♡」


「うう~……でも、一人でお掃除こわいよぉ。何か出たらどうするのぉ~?」


 ぶるぶる、とエリーゼが震えていう。


「そ、そうだよ! もし死霊系モンスターとか住み着いていたら、こいつらだけじゃ対処できないよ!」


 弟がエリーゼに乗っかる形で言う。


「おう、そうだな。じゃ2-3に別れて掃除するか」


 くわっ! とエリーゼ達が目を見開く。


「じゃあ俺と……」

「はいはいはーい! わたしユリウス君とがいい!」


「何言うてるん、うちもユリウスはんがええわ」


「もちろんあにうえとー!」


「ぼ、ボクも兄さんとがいい……」


 結局じゃんけんすることになった。


「やったぁ♡ うちの勝ち~♡」


 サクラが笑みを濃くして言う。


「あう~、またユリウス君と一緒になれなかったよぅ」


「エリちゃん大丈夫です。ぼくがいるです。なんかでたらやっつけるですっ」


「ありがと~ミカちゃん」


 そんなわけで、俺はサクラとともに、窓の掃除から始める。


「そんじゃ、とっととやるか」


「ユリウスはん、雑巾つかわへんの?」


「おう、こうするからな」


 俺は魔法で、水と風と火の球をそれぞれ生み出す。


 3つの球を上手いこと調整し、俺は廊下めがけて放つ。


 どぱぁああああああああん!

 びょぉおおおおおお!

 ごぉおおおおおお! 


「あ、あっちゅーまに窓ぴっかぴかになってるやん……。なにしたん?」


「え、水で洗い流して、熱風で乾かしただけだけど?」


「完璧に窓ピッカピカになっとる。水も乾いてるし……見事な魔法のコントロールやな。さすが旦那様♡」


 むぎゅーっとサクラが俺の腕に抱きついて言う。


「次はどないする?」


「そうだなぁ、とりあえず【浄化】するかな」


「へ? じょうか?」


 俺は右手を挙げて魔法を発動する。


「【ターン・アンデッド】」


 カッ……!


 手からまばゆい光が発せられる。


【【【うぎゃぁあああああああ!!】】】


 屋敷に居着いていたらしい、死霊系モンスター達の叫び声が、どこからか聞こえる。

 光は一瞬で収まる。


「もうっ、びっくりしたわぁ。やるならやるって言うてや」


「すまんすまん。これで大半は片付いたと思うわ。あとは残りを片付けるな」


 俺たちは廊下を渡る。


「残りって……ユリウスはん、その言い方やと他にもモンスター居るような口ぶりやな?」


 そのときだった。


 廊下に鎧の置物があった。


 突如として動き出し、サクラめがけて、持っていた剣を振り下ろす。


 ブンッ!


 パシッ!


「ひっ……!」


 俺は振り下ろされた剣を、人差し指の先で受け止める。


「ケガないか?」


 こくこくとへたり込んだサクラがうなずく。


「俺の友達、何いじめてるんだよ」


 受け止めている剣を、俺は指で弾く。


 バリィイイイイイイイイイン!


「こ、鋼鉄の鎧が、跡形もなく粉々になったわ……い、いったいなにが?」


「え、別にただ指で弾いただけだぞ?」


 さきほどのは【動く鎧リビング・アーマー】というモンスターの一種だ。


 その後も、俺は残っていたモンスターをひたすら掃除しまくった。


 パリィイイイイイイイイン!

 ぼしゅぅううううう!

 ズバンッ……!


「めっちゃ強そうなモンスターいっぱいおったのに、サクサク倒してくなぁ。さっすがユリウスはんやで~♡」


 うっとりとした表情で、彼女が俺を見上げる。


「しかしやたらモンスター多いな」


「昔吸血鬼が住んでたお屋敷らしいからな。その配下がうろついてるんちゃう?」


「ふーん、吸血鬼ねぇ」


 俺とサクラは、魔法を駆使して部屋を綺麗に掃除していく。


 道中、俺たちはガイアスチームとすれ違った。


「ほらミカエル! サボるんじゃない!」


「えー、めんどいです~」


 ベッドの上で寝そべるミカエルを、ガイアスが注意する。


 ぱりーん!


「きゃっ、ごめん……お皿落としちゃった……」


「ああもう、どいて。ボクが拾うから。あっちでミカエルのやつとシーツ変えてて」


 エリーゼの落とした食器の破片を、ガイアスが拾い集める。


「う、うん……ありがとう」


「……別に。ケガしてない?」


「ううん、大丈夫……痛っ」


「あーもう、手貸しなよ。鈍くさいな……」


 弟はエリーゼの手を取り、治癒の魔法をかける。


 その様子を、俺たちは遠巻きに見ていた。

「いいぞガイアス。その調子で頑張るんだっ!」


「ユリウスはん、弟さん思いやなぁ」


 くすくす、とサクラが笑う。


「そんなとこもうち、大好きやで♡」


 俺たちはその場を離れ、今度は地下室へと向かう。


 石造りの部屋は、ひんやりとしてて気持ちが良い。


「ただちょっとかび臭いなぁ」


【ぬははは! よくぞ来たな下等生物! この我の屋敷に土足で踏み入ってただですむと】


「【浄化ピュリフィケーション】」


【これは浄化の光魔法……ぬわぁああああああああ!!!】


 ぼしゅぅううう……!


 光魔法により、消毒殺菌が完了。


「ゆ、ユリウスはん……今のって?」


「え、消毒しただけだぞ?」


「いやいやいや吸血鬼! おったやん今! なんかめっちゃ強そうなヤツが!」


「そんなのいたか?」


 ぽかんとした表情のあと、サクラが苦笑する。


「あんたの物差しじゃ、吸血鬼程度じゃ小物過ぎて計れんのやな。ほんま、さすがやで♡」

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― 新着の感想 ―
[一言] ゆ、ユリウスがっ、お小遣いの一般的な額を知っている、だとっ!(衝撃)
[気になる点] 幽霊屋敷→聖域 とかなってたりしてw
[一言] せめて描写くらいしてやれw 外見わかんねえw
感想一覧
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