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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第4章

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57.勇者、魔族から勧誘される



 俺は学園長とともに、理事長室へと入った。


 そこは王城にある、謁見の間に似ていた。

 否。似ていた、ではない。


「魔王の部屋じゃないか。どうしてここに……?」


「魔王城が改装される前に、空間転移を使って、まるごとここへ運んできたのですよ」


 学園長アリシアが、ニコニコしながら進んでいく。


 最奥には、魔王が座っていた玉座があった。


「いずれここに座るべきお人が、現れるとわかっていましたからね」


「やっぱ、あんた魔族だろ、学園長さんよ?」


 アリシアは玉座の隣にたち、にこりと笑う。


「ええ、その通りです。さすが勇者神、慧眼でいらっしゃる」


 恭しく、俺の前でアリシアは跪く。


「魔族を手引きしていたのもおまえだな?」


「よくご存じで。なぜバレたのでしょう?」


「いろいろ理由あるけど、決定的だったのは天使からの攻撃を受けたときだ。あんた、身を守る動作すらしなかっただろ?」


 弟は目を瞑り、手で頭を守ろうとした。

 そうしなかったのは、自分に被害がないとわかってる、天使を使役したこいつのみ。


「お見事です。さすが我が【破壊者】」


 感極まったように、アリシアが言う。


「破壊者? なんだよそれ」


「この世に1つ、有名な予言があります。……『魔王の死後ちょうど2000年後、世界に破滅をもたらす【破壊者】が復活するであろう。しかしそれに抗う【変革者】が現れ、世界に救いをもたらすだろう』」


 予言……何度か耳にした単語だ。


「多くの人はこの【破壊者】を魔王の再臨と解釈しているようです。そして魔王没後2000年後、カーライル家に生まれた男児が【変革者】……【予言の子】であると思われているようです」


 しかし、とアリシアは笑う。


「わたしの解釈は違います。【破壊者】とは勇者神ユージーン、あなたのことですよ。現にあなたは、とてもよい働きをしてくださりました」


 うっとりとした表情で、アリシアが語る。


「あなたはこの世のあらゆる常識の枠組みを破壊し尽くしています。そしてその波紋は世界に広がっている。邪神ガンデスブラッドの復活を引き起こしたのはあなたです。そしてそれを契機に、魔なる物たちは活動を再開した」


「……何が言いたい?」


 アリシアは俺の前までやってきて、うやうやしく頭を垂れる。


「あなたこそが破壊者。世界を破滅に導く、我々魔なる物たちの、新たなるリーダーとなるにふさわしい御方なのです」


 スッ……とアリシアは俺に手を差し伸べる。


「ともに世界から害虫にんげんどもを排除しましょう。魔の物たちの楽園を築き上げるのです」


 俺はアリシアの手を、強く払う。


 バシッ……!


「断る」

「訳をお聞かせ願いますか?」


「馬鹿かおまえ。俺は勇者だ。人間を救うのが仕事だ」


「なるほど……しかしユリウス君。果たして、この世界に勇者は必要でしょうか?」


「……なんだと?」


 アリシアは立ち上がる。


「この世界には魔王は存在しません。勇者と完全に一体化している以上、この世界で最も強き者は誰か? そう……あなたです」


 にこりと笑う。


「愚かな人民どもは、いずれあなたを畏怖するでしょう。そしてこう言うのです。『この化け物め!』とね」


 それは、何度も聞いたセリフだった。


 2000年前も、そして、今も。


「転生してわかったでしょう? この世界のあらゆるものはあなたより格下。もとより最強だったあなたは、この世界における不穏分子エラーであり不適合者イレギュラーなのです」


「人間にとって、今度は俺が魔王になりかねない……っていいたいのかよ?」


「ご明察。さて、この世界において、誰が勇者あなたを倒せるのです? 答えは誰もおりません。それは、かつての魔王ヴェノムザードと、寸分違わぬ同じ状況だとは思いませんか?」


 アリシアの言葉を聞いて、俺はため息をつく。


「もう一度ご提案させていただきます。魔族を率いて、世界を手に入れましょう。我々はあなたを歓迎します。世界の破壊者、新たなる魔王よ」


 俺は真っ直ぐ彼女を見て、即答する。


「断る。俺は勇者だ。魔王になる気はさらさらない」


「……いずれ人間達から迫害されるとしても?」


「知らん。世界が平和なら、俺がどうなろうと、どうでもいい」


 ふぅー……とアリシアは深くため息をつく。


「仕方ありません。手荒なまねはしたくなかったのですが」


「俺に真正面から挑んで勝てるとでも?」


「まさか。あなたを見くびる気はございません。……ですので、人質を取らせていただきます」


 アリシアが酷薄に笑う。


「人質? もしかしてガイアスのことか?」


「もちろん。あなたと違い、彼は実に脆弱だ。わたしの放った蟲たちが、今頃捕縛していることでしょう」


 パチンッ……! とアリシアが指を鳴らす。


「さぁ、蟲たちよ。かの勇者の弟を連れてきなさい。他の人間は皆殺しです」


 しーん……。


「なっ!? ど、どうなってるのですっ!?」


「おまえ、知将気取ってくるくせに、かなりアホだろ」


 俺は深々とため息をつく。


「あいつは勇者おれの可愛い弟なんだぜ? なあ、ガイアス」


 ドガァアアアアアアアアアン!


「兄さん! 助けにきたよ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 学園長も弟は雑魚ってもっぱらのウワサを信じてしまったのか このウワサ流した奴死刑だろ
[気になる点] ガイアスの人気を活かすしかこの作品の生き残る道はないからな [一言] 星0だったけど3くらい入れようかな…
[良い点] 「落ちこぼれの兄の方が実は最強〜史上最強の勇者、未来の世界へ転生する。 優秀な弟に婚約者を寝取られ、 家や学校からも無能と蔑まれてたが、 前世の力を引き継ぎ気ままに 生きてたらいつの間…
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