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05.勇者、わがまま王女な婚約者と出会う

 ほどなくして学園に到着した。


「まるでお城だな」


 校舎は真っ白でピカピカだ。

 正門から玄関口まで、歩いて数十分はかかった。


「なっ!? に、兄さん!? どうしてここに!?」


 弟のガイアスが、背後から俺に話しかけてきた。

 脚力強化された馬車は、弟を楽々追い抜いていたな。


「え、普通に馬車に乗ってきたけど?」

「……あ、ありえない。壊れるよう細工してたのに」


 ガイアスはブツブツと何事かをつぶやく。


「弟よ、俺のクラスってどこだ? ど忘れしてさ」

「……ボクと同じクラスだよ」


 弟で同学年ということは、俺たちは双子だろうか。


 教室へと向かうため、ガイアスのあとをついていく。


「……朝から嫌な気分だよ。あぁ早く【彼女】に会って癒されたい」


 ほどなくして教室までやってきた。

 制服を着た男女が談笑している。


「みんな、おはよう」


 誰も返事してくれなかった。

 まあ単に俺の声が聞こえなかっただけだろう。


 さて、どこの席に座ればいいかな……と机の間を歩いていた、そのときだ。


「ちょっとユリウス! このアタシに挨拶しないなんて、良い度胸ね!」


 俺を呼び止めたのは、小柄な少女だった。


 桃色の髪をツインテールにしている。

 気の強そうなつり目が、不機嫌そうに細められていた。


 知り合いか? あいさつしとこ。


「おはようさん」

「なにその態度! あんたこのアタシにそんな舐めた口利いていいわけ! アタシを誰だと思ってるの!?」


 ユリウスの記憶がないからわからんな。


「【ヒストリア】! 愛しのヒストリア! 会いたかったよ!」


「あーん、ガイアスぅ~♡」


 ヒストリアは熱っぽい目を弟に向けた。

 ふたりは至近距離で見つめあい、桃色の雰囲気を醸し出している。


「今日も君はとってもチャーミングだね」

「あなたも素敵よぉ、どっかの魔無しのクズより何万倍もハンサムだわ♡」


 ふたりが俺をチラ見しながら言う。


 ヒストリアは、弟の恋人なのだろう。

 貴族なのだから、もしかして婚約者ってこともありうるな。


「そうかそうか。兄は祝福するよ」

「は? な、なによその態度。もっと悔しがりなさいよ」


「え、なんで?」

「なんでって……」


 邪魔しちゃいけないと思い、俺はその場を離れる。


「……ヒストリア王女、今日も【本当の婚約者】を放置してラブラブだな」


「……出涸らしざまぁ。恋人を弟に寝取られてるのによ」


 クラスメイト達が何かをつぶやく中、俺は教室の一番奥の席を目指す。


 ちょうど窓際が開いていたので、そこに座った。


「…………」


 俺の隣には、女生徒が座っていた。

 髪の毛は伸び放題でボサボサ。

 

 顔や耳が完全に隠れている。

 スカートも長く、制服を着崩していないので、野暮ったい印象を受けた。


 しかし胸部のふくらみはなかなかのものであった。

 

「おはよう」

「……お、はよう」


 お、返事してくれた。

 無視されることが多かったので、これは嬉しいぞ。


「俺、ユリウス。きみは?」

「……え、【エリーゼ】です」


「エリーゼさんか。よろしく」


 彼女に手を伸ばす。

 エリーゼはおどおどしながらも、手を握ってきた。


「なれなれしかった?」

「ち、ちがっ、びっくりした、だけで……」


 勢いよく首をふるったそのとき、隠れていた耳が、隙間から見えた。


「……ん? 長い耳?」


 バッ! とエリーゼが両手で耳を隠す。


「なんで隠すんだ?」

「……ハーフエルフは……気持ち悪い、でしょう?」


「そんなことない。むしろ可愛いよ」


 キーンコーンカーンコーン……。


 教室のドアが開き、先生が入ってきた。

 どうやら授業が始まるらしい。


「……可愛いって、初めて言われた」

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― 新着の感想 ―
勇者としてのブラック労働のせいなのかも知らんけど、流石に主人公の人間性破綻しすぎてるだろ。ここまで来るとただの狂人だぞ。
[一言] エリーゼはヒステリック?王女より百万倍可愛い!能力は10000000倍?
[良い点] ワガママ王女な婚約者 ワードにセンスを感じる
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