表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/237

04.勇者、登校する


 朝食を取り終えた。

 俺は学園へ行く準備を調えて、玄関までやってくる。


「あれ、兄さん? 学園いくの? いつもみたいにサボらないんだ」


 弟のガイアスもまた、俺と同じ制服を着て、同じカバンを持っている。


「おう。あれ、もしかして同じ学園?」

「……そうだよ。朝から何おかしなこと言ってるの?」


「じゃあ一緒にいこうぜ」

「は……?」


 ガイアスが信じられないものを見る目で、兄を見やる。


「どうした?」

「……別に。兄さんと一緒なんてごめんだね。あんたと同類って思われたくないし」


 フンッ! と鼻を鳴らすと、ガイアスは出て行く。


 なるほど、思春期なのだろう。

 兄ちゃんと一緒に学園へ行くのが嫌な年頃なのか。


 俺も弟の後に続く。

 玄関を出ると、近くに馬車が2台、停まっていた。


 片方の馬車にガイアスが乗り込む。


「じゃあもう一方に乗るかな」


 弟のと比べて、なんだか妙にボロい気がした。


 特に気にせず近づいていくと、運転席から、御者が降りてきた。


「おはようございます、ユリウスさま」


「おはよう。学園までよろしく」


 俺が挨拶をすると、御者もメイド同様に、目をまん丸にしていた。


 一方で、弟を乗せた馬車が先に動き出す。

 窓からガイアスが顔を出し、俺を見て言う。


「先に行くね。そういえば今日遅刻すると兄さん罰として掃除当番らしいから、遅刻しないようにね」


 弟の馬車は、足音を立てながら、俺たちの元を去って行く。


 ガイアスは良い子だな。

 兄が遅刻しないよう、注意喚起してくれたからな。


「俺も行くかな」


 馬車に乗り込み、席に座る。

 ほどなくして、馬が進み出した。


 ガタタタタッ! ガタタタタッ!


「随分揺れるな。それに遅いし。強化魔法を使ってないのか?」


 物体の強度や走るスピードなど強化できる魔法だ。


「前世じゃいろんなものに、当たり前のように付与されたのに」


 誰でも使える初歩の魔法の一つなのに、使われてないのが不思議なくらいだ。


 と、そのときだった。


 ガタンッ!

 バキィッ!


 馬車が急にストップする。

 窓から顔を出すと、車輪の脇で御者が座り込んでいた。


「も、申し訳ございません! 車輪が壊れてしまいました!」


 この世の終わりみたいな顔をして、御者は何度も頭を下げる。


「ちょっと待ってろ。すぐなおす」


「いますぐ屋敷へ戻って工具を……って、へ? お、お怒りならないのですか?」


「故障は別におまえのせいじゃないだろ?」


 ポカン……とした表情で、御者が棒立ちになる。


 俺は馬車を降りて、側面へ回った。


「石に車輪が乗り上げて壊れたんだな。大したことないし、さっさと直すか」


 両手を前に出し、車輪へ向ける。


【修復魔法】を使用。

 

 壊れた車輪は、時をさかのぼったかのように、みるみるうちに元通りになった。


「すっ、すごい! 車輪が完璧になおってる!? どうやったのですか!?」


「え、普通に魔法でパパッと。これくらいできるだろ?」


「できませんよ! こんな高度な魔法、生まれてから一度も見たことが無い!」


 妙だな。

 壊れた物の修復くらいなら、子供だってできるはずだぞ?


 あんまり魔法が得意じゃないのかな。


「ほら、学園行こうぜ」

「し、しかしこのままでは学園に遅れてしまいます。この老馬の足ではとても……」


 タイムロスはさほどじゃないが、元々馬車を引いているのが、足の強い馬じゃないらしい。


 俺は馬と車輪に【強化魔法】を施す。


「よし、じゃあ出発してくれ」


 御者は運転席へ座り、俺も後ろの座席に座る。


 彼が馬に鞭を入れる。

 すると、凄まじい速さで馬が走り出した。


「なっ!? なんだこりゃ速すぎるぅううううう!」

面白いと思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もしかして▪▪退化した世界ですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ