表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/237

31.勇者、大観衆の前で弟に圧勝する



 武闘大会も、いよいよ決勝戦。


「これより、ユリウスVSガイアスの試合を行う!」


 ワァアアアアアアアアアアア!


 闘技場コロシアムには、大勢の観客が所狭しと座っている。


「ご覧よ。今日の最終試合ってことで、みんな注目してるんだ……兄さんの大敗北をね!」


 数日前とは打って変わって、自信に満ちた表情で、ガイアスが言う。


「今日ボクは絶好調さ! 全試合圧勝! あんたは絶対に、100%負ける!」


 観客に聞こえるくらい、大きな声でガイアスが言う。


「いいぞー! ガイアスー!」

「またさっきの試合みたいに華麗に決めてくれー!」


 ワァアアアアアアアアアアアアア!


「聞いたこの声援! ボクの勝利を期待し、後押ししてるんだ。あんたの勝ちは誰も望んでないんだよ!」


「そろそろ時間です、私語は慎むように」


 俺たちは距離を取って、相対する。


「ん? おまえ、二刀流だったか?」


 弟の手には、カーライル家の宝剣。

 そして逆の手には、雷速の剣が握られていた。


「アンタに勝つために、寝る間も惜しんで会得したんだよ!」


「では……試合、開始!」


 ガイアスはダンッ……! と素早く地面を蹴る。


「雷速剣の素早さに、魔力による身体強化か」


 以前より格段に、ガイアスのスピードは上昇していた。


 並の剣士なら、動きについて行けず負けていただろう。


 弟が間合いに入ってくる。

 俺は相手の出方を見るため、軽く剣を振る。


「そこだぁ! くらえ!」


 俺の剣を、ガイアスの剣が弾く。


 パリィイイイイイイイイイイン!


攻撃反射パリィじゃん」


「どぉだぁ! あんたの剣を見て盗ませて貰ったんだよぉ!」


 がら空きになった胴体めがけて、ガイアスが2本の剣を突き出す。


「終わりだ! クソ兄きぃいいいい!」


 俺は左手に、2本目の剣を出現させる。


 そして、ガイアスの双剣を弾いた。


 パリィイイイイイイイイイン!


「ぐわぁあああああああ!」


 ガイアスは木の葉のように、宙を舞う。


 滞空したあと、ぐしゃっ! と落ちる。


 しぃーん……。


「……え? うそ」

「……あ、あの強いガイアスが、一撃で?」


 ざわ……ざわ……。


「まだ……まだぁ……!」


 ゆらり、とガイアスは立ち上がる。


 双剣を構えて、特攻をかけてきた。


「せやぁああああああ!」


 すかっ……!


 俺は足を払って、弟の体勢を崩す。


「ぶべっ!」

「確かに速くなった。けど動きがまだ単純すぎる。腕の立つ相手には通じないぞ」


「兄貴面、すんじゃねえっつってるだろぉ!」


 ガイアスは立ち上がると、雷速剣で強化したスピードで、俺に連撃を放つ。


 キンキンキンキンキン!


「うそ! ガイアスの高速の剣を、一歩も動かずに全部捌いてるなんて!」


「あの動きより速く動いてるのに、息ひとつ乱してない!」


 ガイアスの攻撃は、体力を消耗するにつれて、精度が落ちてくる。


 キンッ……!


「ぐああああああああ!」


 ガイアスは俺の剣に押されて、仰向けに倒れてしまう。


「やだぁ、だっさぁ~い」

「あんだけ調子乗ってたのに結果これかよ、ウケるわ」


「てかユリウスってあんなすごかったの……?」


 ざわ……ざわざわ……。


「ぜぇ! はぁ! ハッ! ハッ! はぁ!」


 ガイアスは汗だらけになって、肩で息をしている。


「そん……な……こんなに……頑張っても、兄さんには……勝てないのかよぉ……」


「もう十分だろ。ギブアップしな」


 グッ! とガイアスは歯がみすると、よろよろと立ち上がる。


「まだ……だぁ! 奥の手が、残ってる!」


 ガイアスは従魔であるグリフィン、召喚獣であるサラマンダーを呼び出す。


「ボクはこのクズに打ち勝つ……力を寄越せぇ!」


 鷲獅子は魔法で嵐を、火蜥蜴は炎を、それぞれガイアスの雷速の剣にぶつける。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオ!


「なっ、なんてすごい炎の嵐だ!」

「あんなの喰らったらひとたまりも無いぞ!」


 闘技場のアリーナ全体を覆うような、凄まじい炎の渦が巻き起こる。


「死ねぇ! 兄さぁああん!」


 ガイアスは剣を、俺に向かって振り下ろそうとする。


「それは危ないな」


 俺は剣を創生し、軽く振る。


 スパンッ……!


 斬撃は飛翔し、炎の渦とぶつかると、綺麗さっぱり消えてしまった。


「う、うそだろぉ!?」

「ユリウスのヤツ、あのすげえ炎を一撃で消し飛ばしやがった!?」


 魔力切れで、ガイアスが膝をつく。


「い、いったい……なにがおきたんだよぉ……」


「え、魔力の中心を斬って、魔法をキャンセルしただけだぞ?」


 魔法は、魔力を集中させて放つ。

 その集中している点を破壊されると、魔力は霧散し、魔法が消えてしまうのだ。


「【反魔法】って技術だ。覚えておくと良いぞ」


「くそ……こんな……はずじゃ……」


 

 観客達は、動揺していた。


「し、信じられない! カーライル家の長男が、優秀って言われてる弟に圧勝したぞ!」


「すげえ! いつの間にあんなにも強くなったんだ!?」


 俺は弟の元へゆき、手を差しのべる。


「ナイスファイト」


「うるさぁああああい!」


 バシッ!


「あんたのせいで、大勢の前で恥をかいたじゃないか! どう責任取ってくれるんだよぉ!」


 弟は大粒の涙を流しながら、情けない声で言う。


「恥じることなんてないだろ」


「うるさい! このバケモノ! あんたがいるとこっちが惨めに見えるんだよ! ちくしょぉー!」


 弟は剣を放り投げると、闘技場から走って出て行く。


「優勝は、ユリウス=フォン=カーライル!」

 

面白いと思っていただけましたら、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ストレスなし [気になる点] 心になにも残らない [一言] めざせワンパンマン?
[一言] この小説自体がつまんない茶番
[気になる点] 外部の声が聞こえてないのかよ。無関心通り越して冷血漢じゃないか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ