22.勇者、盗賊と魔族を余裕で倒す
放課後、俺は馬車に乗って、王都を目指していた。
『勇者よ、どこへ行く?』
「王都。城で【夜会】があるんだって。貴族はみんな参加なんだとさ」
まもなく森に差し掛かろうとしている。
『ここらは昔、魔の物たちが多く出歩く場所だった。だがまあ2000年たっているのだ、魔族はもう滅んでしまっただろう、絶対に』
そのときだった。
「お、敵だ」
俺は馬車の窓からヒョイっと躍り出て、荷台の屋根の上に飛び乗る。
魔力で視力を強化。
「結構離れた場所で【馬車】が盗賊に襲われてるな」
『この距離から殺気を感じ取るとは、さすが勇者だ』
俺は転移魔法を使って、襲撃現場へ向かう。
「なんだてめえ! ど、どっからきやがった!」
一番近くにいた盗賊Aが、目をむいて俺に尋ねる。
「大人しくするなら何もしないぞ」
「ガキが! 大人を舐めるんじゃねえぞ!」
盗賊Aが、腰の短剣を抜こうとする。
ピッ……!
俺は手刀で、短剣を破壊した。
「この俺の毒のダガーを……って、ええ!? ど、どこいった!?」
「ん? 壊した。素手で」
「そんなバカな! 猛毒が塗ってあったんだぞ!?」
「え、全状態異常に対する防御魔法って、外出のとき必ずかけるよな?」
「しねぇよ!」
盗賊BとCが、騒ぎに気づいて、俺に近づいてきた。
「死ねおら!」
パキン!
「くたばれ!」
パキキン!
武器を抜く前に、俺は手刀で武器破壊を行う。
「こいつやべぇ!」
「袋叩きにするぞ!」
俺の周りを、盗賊たちが取り囲んだ。
その数は、30。
「いくらてめえが武術の達人だろうと、30人を相手に勝てるわけがねえだろ!」
「え、なんかいった?」
ドサッ!
「ありえねぇ! 30人いたんだぞ!? それが一瞬で全滅!? なにしやがった!」
「「「え、分身しただけだぞ?」」」
拳豪から習った【影分身】のスキルだ。
闘気を活用し、実態を伴った分身を作り出す。
あとは分身たちが、盗賊の首の後ろに手刀を当てて気絶させた。
残りは盗賊Aのみだ。
俺は分身を解く。
「こうなったら……用心棒の先生! 出番です!」
突如、上空から、何かが落ちてきた。
ずずぅううううんッ!
「おお、魔族だ」
外見は、人の倍くらいの大きさのゴリラだ。
「こんなひ弱な人間相手に、なにてこずってるんだよぉ」
ゴリラは余裕たっぷりに、俺の元へやって来る。
「魔王がやられたあとも魔族って残ってたんだな」
「なにごちゃごちゃ言ってやがる! 死ねごらぁ!」
ゴリラが拳を振り上げて、俺めがけて振り下ろす。
ドゴォオオオオオン!
衝撃波は周囲の木々をなぎ倒し、俺の足元にクレーターを作った。
「サル相手に少々強すぎたかぁ?」
「覇気のないパンチだな」
「な、なんだとぉおおおおお!?」
頭部を狙ったゴリラの拳は、しかし、俺の体にすら届いていなかった。
「なんつー石頭だ! 岩盤を砕くこの一撃を受けて平然としてるなんて!」
「え、魔力の鎧すらやぶれないのに?」
達人は常時、体の周囲に魔力の鎧をまとわらせているものなのだ。
「う、うわぁああああ!」
ゴリラは、めちゃくちゃに拳を繰り出す。
「す、すげえ! 用心棒の先生の眼にもとまらぬ連撃を、ぜんぶ受けても平然としてやがる!」
「もういいか?」
俺はゴリラの間合いの内側に、一瞬で潜り込む。
がら空きの胴体に、トン……と手で触れる。
ほんの少し闘気を流す。
ボッ……!
ゴリラは存在まるごと消し飛んだ。
その余波が暴風となって、森の木々をなぎ倒す。
巨人が通り過ぎたかのように、森が一直線上に更地になっていた。
「ば、化けもの……だ」
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