196.家族の愛
マーテルの攻撃を受け続けた、俺。
宇宙規模の攻撃をしかけてくるマーテル。
だが、俺は死なないし、避けない。真正面から受け止めまくる。
やがて……。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
マーテルが肩で息をし出す。
宇宙で呼吸ができるわけないんだが。まあ、ここは領域の中。つまりイメージの世界であって、本当の宇宙ではない。
……裏を返すと。
隕石やら何やらの攻撃は、あくまで、マーテルがイメージし、具現化したものでしかない。
「マーテル……すまなかった」
俺は、頭を下げる。
「…………」
マーテルは俺の話を聞いてくれる態勢を取っている。
だから、俺は言う。
「おまえを忘れて、すまない」
今世の話だけをしてるんじゃない。
魔王ヴェノムザードを討伐後に……。
「家族が欲しい、なんて……馬鹿な望みを言ってしまって、家族であるおまえを一人残して、未来の世界に転生しちまってよ」
……前世の俺は、見えてなかったのだ。
じーちゃん以外に家族がいるってことに、気づけなかったんだ。
見えない家族の愛に、包まれているってことに……。
「……なんで、今なんですか?」
「ん?」
「どうして……今は、気づけたんですか……? 自分の過ちを。家族が居たっていうことを」
そりゃ……。
「ガイアスのおかげだよ」
「……ガイアス」
「ああ。俺は、アイツを通して教えてもらったんだ。家族の愛ってやつをさ」
ガイアスは最初、俺を恨んでいた。
その後も、彼は俺に突っかかってきた。
最初、こいつはただ家の当主になりたい、兄を超えたいだけだと思っていた。
……でも、その気持ちは変化していった。俺も、弟も。
ガイアスが俺に追いつこうとするのは、家族を一人にしないため。
どれだけ実力差が離れていても、どれだけ……煮え湯を飲まされ続けても、俺に食いつこうとする。
俺はガイアスから、強い繋がりを感じる。
俺をつなぎ止めようとする、理由無きこの気持ちこそ……家族の愛なんだって。
「マーテル。ごめんよ……前世の段階で、おまえからの愛に、気づけなくて……ほんとごめん」
「…………………………」
すぅ……とマーテルが近づいてくる。
そして、俺に抱きついてきた。
「……謝らないでください、お兄様。マーテルは……嬉しいです」
俺の胸の中で、妹が泣いている。
「私のこと……家族って……言ってくれて。認めてくれて……」
「ああ、当たり前だ。おまえも、俺の大事な家族だよ。あいつらもな」
「あいつら……?」
びき!
ばりぃん!
「兄さん!」
領域結界をぶちやぶって、俺たちの元へとやってきたのは……。
ふっ、他でもない、俺の愛する弟。そして……。
「あにうえ~!」「ユリウスさん!」
義弟に、嫁。俺の……家族達。
みんな俺を心配してくれたんだ。
ガイアスがぎょっ、と目を剥く。
「兄さん! 離れて!」
「あー、大丈夫大丈夫。もう決着はついたから」
「そ、そうなの……?」
ガイアスがマーテルに目を向ける。
妹はガイアスを一瞥し、ふんっ、と顔を背ける。
「ご迷惑とご心配どうもすみませんでしたね」
「な、なんだよその棒読み!」
「うるさいです。おまえはやっぱり嫌いです。兄さんの嫁を気取るな、男のくせに気色悪い」
「なんだとぉ!?」
マーテルからはしかし、ガイアス、そいて家族に対する、殺意を感じなかった。
じゃれてるだけだな、こりゃ。
「んじゃ、かえろっか。マーテルよぉ」
「お兄様。マーテルは、あなた様のお側にいてもいいのですか?」
「おうよ! 帰ろうぜ、家族」
マーテルは俺を見て、嬉しそうに笑う。
まあ、こうして転校生騒動は、集結したのだった。
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