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17.勇者、学園長に呼び出される



 俺が教室で、昼食を食べているときのこと。


「ミスタ・カーライル、いますか?」


 魔法学の先生が、ドアを開けて入ってきた。


「学園長がお呼びです、至急、わたしと一緒に来てください」


「はい! わかりました!」


 弟は勢いよく立ち上がり、駆け足で先生の元へ向かう。


「学園のトップが、兄さんじゃなくて、ボクに何の用でしょう!」


「あ、いえ。あなたじゃないです」


「え……? え、そ、そう、ですか……」


 かぁ、っとガイアスが耳まで真っ赤にして、消え入るようにしてつぶやく。


 呼ばれた俺は立ち上がって、先生の元へ行く。


「くそっ! また選ばれたのは兄さんの方だなんて! 畜生!」


「え、おまえ何悔しがってるんだ? 単に呼ばれただけで」


 ガイアスは俺をにらむと、教室から出て行ってしまう。


「では、参りましょう」


 先生に連れられ学園の廊下を歩く。

 改めて校舎を歩くのは初めてだな。


「ん? あれ? なんかここ見覚えあるな」

「見覚えも何も、あなたここの生徒でしょう?」


 中身である俺は転生してまだ2日。

 学園に詳しいわけがない。


「すごい既視感があるんだよなぁ、この学園の構造」


 ややあって。

 俺はひときわ高い塔の上にある、部屋の前にやってきた。


「中に入って待っていなさい。学園長をお呼びしてきます」


 俺は言われた通り、ドアを開けて、中に入る。

 妙な内装の部屋だった。


 山積みになった本だけでなく、望遠鏡や、仰ぎ見る程度の大きさの【とかげ】の標本が飾ってある。


「ん? 誰かいる……子供?」


 ソファに幼い女の子が座っている。

 ふわふわとした紫色の長い髪に、あどけない表情。

 くりくりとした大きな目が、より一層幼さを際立たせる。


「学園長の親戚の子供か?」


 幼女は羊皮紙を広げて、熱心に読んでいる。

 他に座って待つところもなかったので、俺は彼女の隣に腰を下ろす。


「よっ」

「…………」


 羊皮紙から顔をあげると、幼女はきょとんと眼を丸くする。

 だがすぐに、ふっ、と上品な微笑を浮かべる。


「こんにちは」


「何読んでるんだ?」


「これは【魔法巻物(マジック・スクロール)】です。魔法陣をあらかじめ羊皮紙に書いておくことで、魔力を流すだけで魔法が使えるというものです」


「ふーん……ちょっと見せてくれよ」

「ええ、どうぞ」


 俺は暇つぶしに、羊皮紙に描かれた魔法陣を見やる。


「え、なにこれ?」

「つい先日わたしが作った、新しい魔法の魔法陣です」


 描かれていたのは、あまりにお粗末な出来の魔法陣だった。


「どうかしたのですか?」

「ちょっとペン貸してくれない? 添削してやるよ」


 幼女は素直に、羽ペンを手渡してきた。


 俺は羊皮紙に描かれた無駄な部分を省き、より効率よく魔法が使えるよう、魔法陣に手を加える。


 添削した魔法陣を見せると、幼女は目をキラキラさせながら言う。


「なるほど! この構文を少し直すだけで威力が10倍に、魔力変換効率を100倍に変えることができるんですね! すごいです!」


「おまえ、センスはなかなかいいな。けど末尾に無駄な構文を多用する癖がある。そこをなおせばより上手に魔法陣が描けると思うぞ」


「はい! アドバイスありがとうございます、ミスタ・カーライル!」


 幼女が笑顔で、俺を見て言う。


「ん? なんで俺の名前知ってるの?」


 すると部屋のドアが開いて、魔法学の先生が入って来る。


「学園長! すでに部屋に来てるのでしたらおっしゃってくださいよ!」


「え、学園長?」


 幼女は背筋を伸ばし、ほほえみながらいう。


「初めまして、わたしは【アリシア=フォン=メイザース】。この学園の長を務めております」

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― 新着の感想 ―
[一言] 威力の上がり方がえげついw
[一言] なんていうのか。 このやり過ぎ感。 ある種突き抜けていて、これはこれでいいかもしれませんが、ずっとこのまま「なんかやっちゃいましたか?」系で行くのであれば、現状を把握する能力無し、もしくは…
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