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162.悪人成敗



 ユリウス達が対校戦で勝利を収めた。

 その数十分後。


「はあ……はあ……! くそくそくそぉおお! あの使えないゴミどもがぁ!」


 神聖皇国の学園長は、水路の中を歩いていた。

 ついさきほど、悪魔ダンタリオンによって捕縛されていた。


 しかし彼は転移の魔法結晶を懐に忍ばせていたのだ。

 転移の魔法を発動させ、あの悪魔の拘束をといて、こうして逃げてきた次第。


「ちっくっしょぉ……おぼえてろよあのガキ……特に、ユリウス=フォン=カーライルぅ~! あいつのせいで、すべての計画がおじゃんだ!」


 学園長の瞳に復讐の炎が宿る。


「絶対に殺してやる! むごたらしく殺してやる! 今は逃げるが必ず、貴様の寝首を搔いてやるからなぁ! 待っていろよユリウスぅ!」

「呼んだ?」

「うぇええええええええええええええええええええええええええええええ!?」


 ユリウスが水路の水の中から、よいしょと、と現れたのだ。

 ……これには、腰を抜かすしか無かった。


「ば、ばば、ば、馬鹿な馬鹿なそんなばかなぁ!!!!!!! なぜ!? なぜここがわかったぁ!?」

「え、わかるだろ、普通に?」


 ユリウスが優雅に水の上を歩いている。

 水の上を歩いてる?


「なぜ歩ける!?」

「え、水の上って普通あるけるよな? こう、右足が水の中に入る前に、左足を前に出して、で次に右足を……って、なあ?」

「できるかぁああああああああああああああああああああああ!」


 学園長は水路に尻餅をついて、みにくく逃げようとする。

 その足を、ユリウスがつかんだ。


「ああ、そうそう。なんでここがわかったかって? 魔力を辿ってきたからだよ」

「ま、まりょくうう?」

「そ。転移の魔法って、出発点とゴール地点を設定し、その間に魔力のトンネルを作って、術者がそこを通ることで転移するのよ。ならそのトンネルを辿っていけば、どこにゴールがあるのか、え、普通わかるよね? これくらい」


 ……ひとつわかることがある。

 ユリウス=フォン=カーライル……。


 こいつが、理解不能な化け物であるということが、わかる。それしかわからなかった。


「さて、おっさん。……よくも、俺の大事なダチや、弟に、めーわくかけてくれたな」


 ごごごご……! とユリウスから強烈なプレッシャーが発せられる。

 その怒気に当てられて学園長は、涙とション便を垂らしながら恐怖する。


「ご、ごめんなさい! ゆるして! おねがいだぁ! ゆるしてよぉおおお!」

「いーや、駄目だね」


 ユリウスは手をはなす。

 そして、右の拳を握りしめ……。


「おしおきたーいむ。せいっ!」


 ユリウスは渾身の力で、拳を繰り出した。


 ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!


 ユリウスの拳は、まず水路の水を全て消し飛ばした。

 さらに硬いレンガの壁を塗れた紙のように突き破り……。


 固い岩盤をぶちぬいて、地上に穴を開け……。

 さらにその余波は雲を突き破り……。


 さらにその上にあった月の、ど真ん中に穴を開け……。

 そしてさらに、その先にある、太陽を、ちょびっとだけ、えぐった。


「ふぅ……」

「あべ……あへへ……あへぇあ……」


 これだけの一撃を受けたながらも、学園長は生きていた。

 彼は、【寸止め】していたのだ。


 拳が当たる寸前で止めたのである。

 ……まあ、余波だろうと体は木っ端みじんに吹っ飛ぶだろうが。


 そこは、武の達人ユリウス。

 目の前のこいつだけを、殺さないように、寸止めパンチをくりだしたのだ。


「創世魔法。よっと」


 壊れた月と太陽をなおし、岩盤と壁をなおして、ユリウスは倒れてる学園長を見下ろす。


「これにこりたら、もう悪巧みはしないことだな。次は……あてる」


 学園長は今の寸止めパンチによって、完全に精神崩壊を起こしていた。


「俺は人間は殺さねえよ。元とは言え、勇者だかんよ。ま、ゆっくり精神病棟ででも、養生するこったな」


 ユリウスは学園長の足をつかんで、転移の魔法を発動し、その場を後にする。


 ……こうして、対校戦の裏で暗躍していた悪は、討伐されたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 月のど真ん中の先にえぐれる程度の太陽があるってことは日食だったのかな?
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