136.勇者、弟たちと作戦会議する
対校戦3日目、【宝探し】。
スタートまで1時間あるので、俺たちは控え室にて、作戦会議を行っていた。
「ルールをまとめよう」
ガイアスが俺たちを見渡していう。
「制限時間は3時間。場所は天空にそびえる神意鉄の城だ。この中で宝を多く取ったチームの勝ちとなる」
「お、オリハルコンって……たしか世界一固い鉱物じゃあ……?」
エリーゼの質問にガイアスがうなずく。
「城の壁や天上はそう易々とは壊れない。神意鉄でてきた回廊が人体の血管のように張り巡られている。部屋の数はめちゃくちゃ多い上に、城は100階層に別れてる」
「ひゃ、100って……やばいな。めっちゃ広大やん。そないでかい城だったっけ?」
「城に入るときにボクらの体は魔法で縮小されるらしいよ。で、入るときには城の中にランダムで転送される」
城の各地に各校バラバラで飛ばされるそうだ。
「一定間隔を開けて転移されるらしいから、転移後すぐにバトルって展開にはならないと思う。それにスタート時は誰も宝を持ってないからね。そこで戦っても不毛だ」
「じゃどこも最初は、お宝探すです?」
「序盤はね。中盤以降、それぞれが宝をある程度探しきったあたりから奪いあいが発生する、と思う。宝は限られているからね」
ガイアスが理事長からもらってきた地図を、部屋の机の上に広げる。
「うっわ細かいわぁ。これ覚えるのは無茶やな」
「え、そう? もう覚えたけど」
「あにうえすげー!」
「いや、みんなが兄さんみたいに化け物じゃないから……」
はぁ、とガイアスがため息をつく。
「地図は1枚だけなのか?」
「人数分渡されているよ。けど地図を見ながら、宝探ししながら、敵と戦わなきゃいけないとなると負担が大きい」
「ふむ……どうする、弟よ?」
ガイアスは少し考えていう。
「拠点を作ろう。結界で防御を固め、ひとりが司令塔になって、残りのメンバーに指示を出す」
「なるほど、バラバラに動くんじゃなくて、司令塔に従って動くわけか。誰がやる?」
「ボクがやるよ」
「あにうえがのほーがよくないです?」
弟は首を振って言う。
「いや、兄さんとミカには積極的に動いて宝を速やかに回収してきてくれ。エリーゼとサクラはボクと合流して拠点の作成と防衛」
「なるほど、前衛と後衛にわけるわけか」
前衛・俺、ミカエル。
後衛・ガイアス、サクラ、エリーゼ。
「兄さん達は宝を取って拠点に運んできて」
「なるほど、分散させるより一カ所にまとめることで、狙われるやつを1人絞った方が、後衛側は防衛も撃退もしやすい訳か。そして前衛は宝を探すことだけに集中すればいいと」
「そういうこと。さすが兄さん、すぐに作戦の意図を見抜くなんて」
「兄貴なんだから当然だろ?」
「兄さん……」
サクラが呆れたようにため息をつく。
「作戦会議中なんやから、いちゃラブせんでなーガイアス?」
「べ、別にいちゃラブなんてしてないし! 茶々を入れるな! ふんっ!」
「時折がいあすの性別わからなくなるときあるです? 女です?」
「ボクは! 男だ!」
さておき。
「スタート時はランダムで飛ばされる。まずは5人全員で合流を目指す。宝探しは二の次ね」
ガイアスの言葉に、俺たちはうなずく。
「城の中にはモンスターが徘徊している。宝のある部屋にはより強い敵が配備されている。そして、階層が上がるほど敵は強くなって……100階層のボスは、とんでもなく強いんだって」
「その分ポイントも高いんだろ?」
強い敵がいるってことは、それだけ希少価値の高いお宝があるってことだからな。
「だから兄さん、わかってるね?」
「おうよ、俺が誰よりも早くそいつを奪取すりゃいいんだろ?」
ガイアスがうれしそうに笑う。
「さすが兄さん、ボクの言いたいことよくわかってるじゃん」
「当たり前だろ。おまえと俺は双子、一心同体なんだからな」
「そーいやそーやったな。すっかり忘れ取ったわ、双子設定」
むー、とミカエルが頬を膨らませる。
「ずるいです……あにうえとがいあすばっかり、ずるいずるーい!」
ミカエルが俺に抱きついてくる。
「ぼくだってあにうえと双子が良かったー!」
「無茶言うなよミカ。そもそも血が繋がってないんだから……」
「がいあすなんです!? せーさいのよゆーですっ?」
「なんだよそれ……もう……ほら、離れろって」
べり、とガイアスが義弟を引き剥がす。
「がいあすはいつも、ぼくとあにうえが仲良くするのを邪魔するです。嫉妬はみにくいです?」
「別に邪魔してないけど?」
「うそつくなです! ぼくとあにうえが一緒にお風呂入っていると入ってくるし! ぼくがあにうえのベッドに忍び込むとがいあすが忍び込んでくるしー! 邪魔ー!」
「ば、ばかっ! 大声でそんなこと言うな!」
「へー……なかええやん」「腐腐腐……♡ 仲がよろしいことで♡」
にやにや、とサクラが笑い、そしてなぜかダンタリオンもいつのまにかいた。
「うわあっ! い、いつの間に!?」
「え、ミカエルが飛びついてきたあたりからだろ。なぁ?」
「ええ。濃密な腐のオーラを感じ取りまして……♡」
頬を染めて、ダンタリオンが体をくねらせる。
「3人兄弟仲がよろしくて大変よろしゅうございます……♡ ところでいつ3人でいたすのですか?」
「しない! でてよばかっ!」
「するときはいつでもカメラマン役はやりますからね……♡」
「いらん! かえれ!」
すぅ……とダンタリオンは音もなく、影の中に沈んでいった。
「神出鬼没すぎるだろあいつ……」
はぁ、とガイアスがため息をつく。
「作戦も決まったところで、そろそろ時間だし、行くか」
「そうだね……」
「え、おまえなに始まる前から疲れてるんだ?」
「だれのせいだよ、だれの!」
まあとにもかくにも、こうして俺たちは3日目の【宝探し】に挑むのだった。
【※お知らせ】
別で連載中の「不遇職【鑑定士】が実は最強だった」の書籍版が、10月2日に発売されます!
落ちこぼれの兄が好きな方ならご満足いただける内容となってますので、よろしければぜひお手に取ってくださると幸いです!
【作品URL】
https://ncode.syosetu.com/n5242fx/
「不遇職【鑑定士】が実は最強だった〜奈落で鍛えた最強の【神眼】で無双する〜」