130.深夜のガールズトーク
転生勇者ユリウスが、同室の男子生徒達と廊下で正座している、一方その頃。
深夜、女子部屋にて。
パジャマを着込んだ女性達が、布団の上で車座に座っていた。
「へぇ……! ノットちゃんたちってみんなアンチくんの婚約者なんだ!」
王立の女子メンバー・エリーゼが言う。
帝国は男子1女子4というチーム編成だ。
「「「「はい! そうです!」」」」
「うぉ……見事にはもっとる。さすが【四つ子】やな」
帝国の女子は4人がみんな同じ顔をしていた。
彼女たちはみな同じ母から生まれた4つの命なのだ。
「でも4人もおるとアンチはんも混乱するんとちゃう?」
「そんなことありません! アンチ様は私たちをちゃんと見分けてくださっています!」
そう答えるのは、長女の【ノット】。
「四つ子なんて世間から気味悪がられるのに、アンチ様は嫌な顔一つせずわたしたちに接してくれるんです!」
次女の【マイナス】が目をキラキラさせながら言う。
「お互い離れたくないというワタシたちのワガママを聞き入れてくださったアンチ様が大好きなんです!」
三女の【ネヴァ】が言うと、四女【リヴァース】がうんうんとうなずく。
「しかもみんな平等に愛してくださって……はぁん♡ アンチ様~♡」
「四つ子を養うとか、アンチはんなかなか甲斐性のある男やなぁ~」
サクラが感心したようにつぶやく。
「ラブラブなんだね! いいなぁ~……」
「そういう王立の皆さんだって、ユリウス様とラブラブではないですかっ!」
ノットが言うと、エリーゼは顔を赤くしてもじもじする。
「ラブラブちゃうで、まあうちらユリウスはんラブなんやけど、正妻がうるさくてなぁ」
「「「「正妻?」」」」
はて、と四つ子が首をかしげる。
「腐腐腐……♡ ガイアス様のことでございますね……♡」
体をくねらせるのは、東部連邦の主将ダンタリオンだ。
真っ白な肌に、紫がかった闇色の長い髪。
以前は顔を髪で隠していたが、ユリウスとの試合後は髪を切った。
結果、超絶美少女が誕生した次第だ。
「ガイアス様って……男の子じゃないですかっ!」
「ノット様……この世には、男性同士の愛というものもあるのです」
「「「「へぇ! 知らなかった……!」」」」
「ちょ、ダンタリオン、純粋な子ぉら黒く染めるのやめーや」
ダンタリオンが男子同士の愛がいかに素晴らしいかを、切々と解く。
「つまり、一見気の強そうなガイアスさまと、一見穏やかなユリウスさま。ベッドでは立場が逆転する。この王道なカップリングの素晴らしさを、ぜひ皆さんにも知って欲しいのでございます……!」
「「「「なるほど……!」」」」
「アンチはん明日たいへんそー、うち知ーらないっと」
くすくす、とエリーゼが笑う。
「あんたたち楽しそーねぇ」
エリーゼの隣に座るのは、髪の短い、気の強そうなお姉さんだ。
「【ツカサ】さんと【ヒビキ】さんは、皇国の男子とお付き合いとかしてないんですか?」
神聖皇国は男子3、女子2のチーム編成。
それぞれツカサとヒビキという。
「ないない、あーんな変人どもと付き合うとかありえないっつーの。なあヒビキ」
「ええ、そうねツカサ。男子なんて野蛮だもの」
皇国の女子チームを、サクラが見ていう。
「なぁ、ツカサはんにヒビキはん。なんであんたら、ずっと手ぇ握ってるん?」
「そ、そこツッコむんだ……サクラちゃん……」
ツカサたちは不思議そうに首をかしげる。
恋人のように指を絡ませ、かたときもそばを離れないのだ。
「なんで言っても、あたいはヒビキと付き合ってっからだけど?」
「「「「キャ~~~~♡ 素敵っ!」」」」
「つ、つきあってるって……女の子同士、だよね?」
エリーゼの問いに、皇国の女子達は首をかしげる。
「何かオカシイかしら?」
「いいえ……なにもおかしくはございませんわ、ツカサさんたち♡」
ダンタリオンが微笑んで言う。
「愛の形は人それぞれ……女の子同士の愛もまたある、ということでございます」
「「「「な、なるほど……!」」」」
「おっ、よくわかってんじゃん東部連邦のキャプテンさんよ。なんだ結構あんたいいやつじゃんか」
「そうねツカサ。こっちの世界じゃ百合は受け入れられなくって困ってたのよね」
「同性愛……最高じゃあありませんか♡」
皇国カップルののろけ話を、女子全員で聞く。
帝国の女子達は新しい扉をふたつも開けてしまったのだが……キャプテンの彼は知るよしもない。
夜が更けても、女子達の会話は続いた。
小腹が空いたとのことで、ダンタリオンの作ったクッキーをみんなでつまむ。
「おいしいよ! ダンタリオンさん!」
「このクッキー手作りなん? めっちゃうまいわ」
王立女子が、ダンタリオンに尊敬のまなざしを向ける。
「お恥ずかしい限りです。人に出すレベルではないのですが……」
「そんなことないよ! すっごくおいしい! 料理どこで勉強したの?」
エリーゼの問いに、ダンタリオンがさみしそうに笑う。
「独学でございます。……いつか素敵な旦那様に食べて貰えるようにって、こんな悪魔が、おかしいでしょう?」
エリーゼは一瞬、悲しそうな顔になる。
だがぶんぶん! と首を強く振って、手を掴んで言う。
「そんなことないよ! 女の子が素敵な旦那様との結婚を夢見ることなんて普通だよ!」
「エリーゼ様……」
「悪魔だからって自分を卑下しないで! ダンタリオンさんとってもキレイだし、料理も上手だし……優しいし! きっと素敵なお嫁さんになれるよ!」
じわ……とダンタリオンの目に涙が浮かぶ。
「エリーゼ様……わたくし……うれしいです。普通の女の子のように接してくださることが……」
「なにゆーてん? あんた普通の女の子やん」
苦笑しながら、サクラがポンポン、とダンタリオンの肩を叩く。
「でも……悪魔だし……」
「だからなんや。恋する乙女は万国共通、種族を越えるんやで?」
「そうだよ! ダンタリオンさんもわたしたちと同じ! ユリウス君大好きな気持ちは一緒! つまり友達だよ!」
友達……とダンタリオンがつぶやく。
ぽたぽた……と大粒の涙を流す。
「わたくし……人間の……女の子の……友達……はじめて……」
「私たちも友達ですよ! ね!」
「「「「はいっ!」」」」
帝国の四つ子も、皇国の百合カップルも、ダンタリオンに温かな目を向ける。
「あんた、ちょっとユリウスはんと似てるなぁ」
「そうでございますの……?」
「あんひともどっかいつも一歩引いたところあってな。あんたも悪魔ってことでうちらにきぃつかっとったんやろ?」
「ええ……」
「おにあいやで、おふたりさん♡ ま、ゆずらんけどなぁ~」
ダンタリオンはみんなをみわたし、うれしそうに言う。
「わたくし、とてもうれしいです。皆さんとで会えて、本当に良かった!」
その後女子達は、ダンタリオンにユリウスをデートに誘おうとかそういう恋バナで盛り上がった。
そこへ理事長が入ってきて近所迷惑だと叱った。
結局、参加校の男子も女子も、廊下に正座させられたのだったが……ともに良い思い出だったと思うのだった。
……ただし、その場にいなかった、ヒストリアを除くのだが。
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