13.勇者、使い魔召喚で魔王を呼ぶ
最初の授業は、グラウンドで執り行われることになった。
「本日は、【従魔召喚】の授業を行う」
魔法学の先生が、同級生たちを見渡して言う。
「サーヴァント?」
「使い魔のことだよ、ユリウス君」
エリーゼが笑顔で答えてくれる。
今朝助けて以降、彼女から積極的に会話してくれるようになった。
「1年生になると自分の使い魔となるモンスターを呼び寄せる儀式を執り行うの」
「へえ、エリーゼは物知りだな」
「えへへっ、そうかなっ♡」
髪を切ってから、彼女は性格だけでなく、見た目も180度変わった。
大きくぱっちりとした二重。
背筋を伸ばすようになり、彼女の大きな乳房が目立つようになった。
「従魔は己の素質や将来性に見合った生物が、古今東西より呼び出される。偉大な人物の従魔は、それにふさわしい威容をもった生物が召喚された」
なるほど、自分の強さや将来性を具現化したようなものなのだな。
「では儀式を行う。呼ばれたものは【従魔召喚陣】の前までくるように」
グラウンドには、魔法陣が敷かれてる。
2000年前にはなかった術式が使われているようだった。
生徒のひとりが、魔法陣の前に立ち、両手を前に出す。
「魔力をこの円に込めろ。従魔が召喚される」
生徒が魔力を流すと、魔法陣がカッ……! と発光する。
すると、そこに白い狼が出現した。
「【白狼】。レベルは……15か。平均的だな」
火蜥蜴のときもおもったけど、魔物のレベルもなんか落ちてないか?
「先生! 次はこのボクに! やらせてください!」
気合い十分で前に出たのは、我が弟だった。
「見てろよ出来損ないのクズ兄貴! ボクが……すごい従魔を召喚し、おまえを見返してやるッ!」
バッ……! とガイアスが魔法陣に手を伸ばし、魔力を流す。
カッ……!
「おおっ! これは素晴らしいッ! 鷲獅子じゃないか!」
上半身がワシ。
下半身がライオンの従魔だ。
「天空の覇者とも言える存在! レベル50!」
「どうだ兄さん! これが次期当主の真の実力だ!」
「え? この程度が?」
レベル50って、中堅冒険者がソロで余裕で倒せるくらいの強さだぞ?
「なら兄さん、ボクよりすごい従魔、もちろん召喚できるんだよねっ?」
「うーん、どうだろうな」
俺は魔法陣の前に立つ。
全集中を使って、魔力を流す。
ゴォオオオオオオオオオオ!
「なっ!? なんだこの光の柱はぁ……!」
グラウンド全体を覆い隠すほどの、強烈な光があたりを照らす。
ややあって、俺の従魔が召喚された。
「りゅ、竜だぁ!!!」
先生は尻餅をついて、そいつを見上げる。
この広い校庭と同じくらいの体格を持った、巨大な竜がいたのだ。
「そ、そんな……またボクは負けたのか……! くそっ! くそぉおおお!」
しかし誰も弟を見ていない。
彼らの注目は、俺の従魔に集まっている。
「れ、レベルの測定不能!? いったいなんなのだ、この従魔は!」
「え? おまえら【こいつ】知らないの?」
『無理もない。我の名を知ってはいても、実物を見たものは少ないだろうからな』
「「「しゃ、しゃべったぁ!?」」」
先生も生徒も、いっせいに愕然とした表情になる。
「そんな馬鹿な!? 知性のある従魔なんて聞いたことがないぞ!」
「というかレベルが計れない時点でおかしいって!」
「それを呼び出したユリウスは……いったい何者なんだ!?」
大げさに騒ぐ生徒達を見て、竜は笑う。
『これは驚いた。世界を救った人間を知らぬとは! のぅ、勇者よ?』
俺が従魔として召喚したのは、【魔王ヴェノムザード】だった。
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