表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/237

127.勇者、フェンシングに参加する



 俺たちは対校戦2日目、午後の部【五種競技】に参加している。


 闘技場のグラウンドにて。


『さぁ、白熱した試合が繰り広げられ来た五種競技ですがぁ、いよいよ最後の競技となりましたぁ』


 理事長の声とともに、グラウンド上空に映像が浮かび上がる。


『第2種目馬術では、王立のサクラ選手が見事な身のこなしをみせて1位。第3種目スキージャンプでは僅差でダンタリオン選手が1位に。第4種目フィギュアスケートではガイアス選手がとても美しい演技を披露して1位となりましたねぇ』


 5種のうち4つが、すでに終わっている。


 五種競技内での順位は、

1位王立、2位帝国、同列3位で東部連邦と神聖皇国となっている。


「あにうえー、帝国どうして2位ですー?」


 そばに立っていた義弟ミカエルが、首をかしげていう。


「あいつら実技点はそんなだけど、芸術点でほぼ全部満点たたき出しているんだよ」


 今回の五種競技には、力比べ以外の要素も加点対象になっている。


 アンチたち帝国は、実技点は完全に捨て、芸術点に心血を注いでいた。


「帝国以外がバトルしている間、アンチたちは丁寧に演技して、芸術点をかせいでいたんだよ。逆にバトルに集中していたそのほかの学園は、芸術点がおろそかになっていたわけだ」


「えー、それ卑怯です?」


「卑怯なものか。自分の実力をきちんと把握して、勝てない部分では戦わず、自分たちが勝てる土俵でのみ勝負している。見事な戦略だと思うぞ」


 アンチ達は確かに、戦う力という点においては、最も弱い。


 しかし弱いからこそできる戦い方というものもあるのだ。


「よくわからないですが、あにうえの分析力がすげーってことだけはわかったです! さっすがあにうえ!」


 そんなこんなあって、俺たちは最後の種目【フェンシング】に挑む。


『フェンシングはトーナメントでぇす。2-2に別れて戦ってもらいまぁす』


 グラウンドには王立が俺。

 神聖皇国がカズマ。

 そして……。


「はは……終わった……さすがに、これはごまかしできないよね……」


 しょぼくれた表情のアンチが、俺たちの元へ近づいてくる。


「どうしたアンチ?」

「元気がないぞ! 腹が減ったのか!」


 アンチは深々とため息をつく。


「君たち化け物達と、真正面から戦わないとイケナイ局面に来てしまって、気が重いのだよ……はぁああああ……」


 しかし、俺はこいつがすげえヤツだって思っている。


「よく逃げずに来たじゃんか。すげえよアンチ」

「うむ! その勇気、立派だぞ!」


 俺とカズマがほめると、アンチは口元を緩ませる。


「え? そ、そうかぁい……? ま、まぁね! 僕は誇り高き皇帝の息子だからねッ! 逃げるぅ? ハッ! そんな父上に泥を塗るようなマネをするわけがないじゃあないか!」


 バッ……! とアンチが長い髪を手で払って言う。


「「「「きゃー! アンチ様かっこいー!」」」」


 帝国のメンバーも、そして観客達も、おしみない拍手をアンチに送る。


「アーンーチ!「アーンーチ!」「アーンーチ!」「アーンーチ!」


 大歓声に包まれながら、アンチは観客に手を振る。


「ああでもすまない……みんな……フェンシングではさすがにごまかしが効かないよ……。1対1のバトルだからね……すまない……奇跡でも起きない限り僕じゃあこの化け物達に勝てないよ……」


 しょぼくれているアンチの頭を、俺とカズマがよしよしとなでる。


『それでは組み合わせを発表しまぁす。第1試合は王立VS神聖皇国!』


「ありゃ、初っぱなカズマとかー」

「うむ! すごい楽しみだぞ、ユリウスくん!」


 俺はわくわくしていた。

 カズマとは一度手合わせしているが、剣を使ってのバトルは初めてだからな。


「ということは僕は東部連邦とかね……あそこも勝てる気がしないよ……ああ、棄権してくれないだろうか……いや、無理だよね……うんわかってるよ……」


 アンチがブルーになっている。


『で第2試合なのですがぁ、帝国学園の不戦勝でぇす』


「はぁああああ!? ど、どういうことかね理事長!?」


 アンチは目を丸くして、解説席に座っている理事長を見やる。


『東部連邦はアスモデウス選手が今日試合に参加してませぇん。ひとり足りない状況なので、この試合、東部連邦は不参加。よって帝国は不戦勝ということでぇす』


 そう言えばヒストリア、午後の試合に顔出してなかったな。


「と、ということはだよ……つまり、2位以上は確定ってこと……かね?」


『そういうことになりますねぇ。王立と神聖皇国の勝った方と戦ってもらうことにはなりますが』


 アンチはポカンとした表情で突っ立っている。


「やるじゃんアンチ」

「うむ! さすがだな! まさかこれも計算通りとは! 見事な戦略だ!」


 俺とカズマが拍手する。


「え? え?」


 アンチは困惑したように、首をかしげている。


「も、もちろんだよ! すべてはこの、アンチ=フォン=マデューカスの! 手のひらの上だったのさ!」


「「「うぉおおおおおお!」」」


 客席から大歓声が上がる。


「さすがですアンチ様!」

「神算鬼謀っぷり、見事です!」

「さすが皇帝の息子! アンチ様かっこいー!」


 帝国のメンバー達も、アンチに惜しみない拍手を送る。


 アンチはそれに答えるように、かっこつけたポーズをとる。


「……セーフ! 助かったぁ! 首の皮一枚繋がった……! ありがとう神様……!」


 あいつも苦労しているみたいだな。


「さて……と。じゃあカズマ。やりますか」

「うむ!」


 俺たちはグラウンドの中央へと移動する。


「君たち! くれぐれも、わかってるよね!?」


 アンチが不安げな表情で言ってくる。


「わかってるって。手は抜かない、全力でだ」

「うむ! 死力を尽くして、君に挑ませてもらうよ、ユリウスくん!」


 俺たちは拳を打ち付け合う。


「いや違うよ!? 手加減しろってことだよ!」


「「え、なんで……?」」


「君たちが全力出したら会場が! いや帝国が! いや大陸まるごと吹っ飛んでしまうからじゃあないか!」


「「大げさだなー」」


「ああもう嫌だこの無自覚化け物たちぃいいいいいいい!」


 まあ、何はともあれだ。


 対校戦2日目、午後の部。

 五種競技、最後の競技、フェンシング。


 俺はカズマと、正々堂々と、一騎打ちに挑むのだった。


【※お知らせ】


新連載、始めました!


「騎士団長は最強に生まれ変わった~腑抜けたおっさんと蔑まれてきた俺、ダンジョン奥地で部下に裏切られ全てを失ったが、賢者の元で修業し最強となって自由に生きる」



【作品URL】


https://ncode.syosetu.com/n1466gm/


頑張って書いたので、よろしければぜひご覧ください!


また、広告の下に作品のリンクも貼ってあります!

タイトルを押せば飛べるようになってるので、ぜひ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そうか、アンチさんはどうあってもバトルを避けられないフェンシング代表を自ら買って出たのか…この仲間を思う気持ち、勝てない土俵では決して無理させず一番の危険を一身に背負う覚悟…帝国は良き後継…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ