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2話
風だろうなんだろうと煽りはいけない。
順調に作業員達が各々の作業を進めていく中、ヒロシマは地上で作業の見廻りをしていた。
「あと10分程でトラックがでるので、通路近くに物を置かないようにお願いしますねー」
近くの作業員に指示を出しながら、鉄筋を吊っているクレーンの方に歩いていく。
あとクレーンまで50mまで来た時に、強い風が吹き砂埃を立てた。
思わず目を瞑り下を向く。
「うわっ!ホントに今日は風が強いな……」
服に着いた砂を叩いていた時、どこからか声が聞こえた。
『ヒロシマ!逃げろー!鉄筋が落ちるぞ!』
それは建築中の建物の上で、荷卸をする為にいた岩さんの声だった。
咄嗟に上を見上げると、風に煽られずり落ちそうな鉄筋の束が見えた。
落ちてくる鉄筋がスローモーションに見えつつも、強ばる身体を何とか動かそうとしたが、先程の砂埃で足を滑らせ体勢を崩してしまう。
『ヒロシマー!!!』
岩さんの声が聞こえる中、ヒロシマの上に鉄筋が降り注いだ。
ボチボチ頑張ります。