1話
なかなか書きだめは出来ませんね。
「おい!ヒロシマー!」
ガヤガヤした音の中でもうるさいくらいに聞こえる声に男は振り向く。
「岩さんですか。おはようございます。」
そこには50代半ばには見えないガタイのいい無精髭の作業着を着た男が笑顔で立っていた。
岩さんはヒロシマと呼ばれた男に肩を組みながら楽しそうに話した。
「おいヒロシマ。昨日また電気屋とやったらしいじゃねぇか。」
「別にやり合ったって、工程のことで話をしてただけですよ。あと、僕は横路 雄太ですから!」
「にしては、上の階で仕上げしてた奴らがデカい声で『広島弁』を聞いたって言ってたぞ?」
『広島弁』と聞いて『グッ』っと顔を引いて嫌な顔をしたヒロシマを見て、岩さんはしたり顔で話を続けた。
「お前、普段は大人しそうで標準語なのに、カッとなると素の広島弁がでるよな?その事を知らないのはワンポイントで入った奴か、新人くらいだぞ?だからお前はヒロシマなんだよ!ガハハハ!」
岩さんに背中をバシバシ叩かれながら、顔を伏せるヒロシマであった……
「はぁ……まぁ別に隠そうとはしてませんよ?ただ、仕事とプライベートを分けているだけです。あと、岩さんの方の鉄筋班は工程どうなんですか?気温上がってるからコンクリが乾くのが早くて生コン屋にせっつかれてないですか?」
「おっ!流石建築士持ってるだけあって知識はあるな。まぁ工程はボチボチだ。今日10トントラックが追加の鉄筋持ってくるから作業はそれからだ。っと、お?もう来やがったか。またなヒロシマ。」
そういって岩さんは自分の持ち場へ去っていった。
「はぁ…………よし!今日も頑張るか!」
まだ日本におるんかーい!