いちまい、足らない
どうしてそうなってしまったのか
ただ 繰り返すしかなくて
「一枚、二枚、三枚、四枚……」
まるで独り言のように ぶつぶつと
何度も 何度も
ある程度行ったにも拘わらず
また 振り出しへと戻ってしまい
「一枚、二枚、三枚、四枚……」
仄かに突き刺さる月明かりだけを頼りに
じめじめとした井戸のなかで
ひび割れた唇は
そのなかを真っ赤に満たしてゆく
純白だった着衣は どろどろになり
もう 乾くのも許さないほどに
ようやく辿り着いたのか
こびりついた前髪を開き
これでもかといわんばかりに
眼をカッ開いて そして叫んだ
「……1枚、足らないいいいいいッ!!!!」
ただ窮まる
一年の最後に咲き乱れて
ほんのり注がれてくる
情けを苛立ちに替えて
ぴちょん
ぴちょん
滴る水滴は
産声をあげた
蝸牛は その足並みを止めない