怪談
ファ○コン時代に書いたものをプレ○テ2時代に書き直したもの。ゲーム機のある限り(ゲーム機名を変えれば)、内容的に古びることはないと思っていましたが、最近のゲーム機はもう「隙間」はないかもしれません。
みなさんは、TVゲームとか好きでしょうか。僕はパソコンのゲームはやるのですが、ゲーム専用機はやりませんでした。「ゲームしか出来ないなんて」と、昔からのコンピュータオタクである僕はちょっと馬鹿にしていたのかもしれません。ゲームはやるより作るもの、なんてね。
だから、ゲーム専用機は好きじゃないっていうか、はっきり言って嫌いです。
職場の向かい側の席には、S君という若い奴が座っています。こいつは、パソコンとかは使えないのですが、ゲームオタクで、プレ○テ2とかなんとか64とかいろいろ持っているみたいです。僕の隣のN先輩は、僕以上にゲームとかに興味はなかったのですが、なんか雑誌で面白いぞ、というような記事を見たらしくてS君に言ってプレ○テ2とソフトを会社で借りていました。3Dの女の子がくるくる回るゲームとか何とか。
にこにこしながらゲームを借りていったN先輩なのですが、何故か次の日にはひどく怒っているのです。僕はびっくりしました。何故って、N先輩は温厚で有名な人で、怒ったところなんて見たことがなかったからです。しかも、前の日に大事そうに抱えていったプレ○テ2とゲームディスクをビニール袋に入れて、乱暴にS君に突っ返したのです。
「いったいどうしたんですか?」唖然としているS君に代わって僕が聞きました。するとN先輩は、
「ゴキブリが入っていたんだよ」とはき捨てるように言いました。
「はあ?」
N先輩の話によるとこうです。家に持って帰ってゲームを始めて、楽しみにしていた女の子がくるくる回るシーンに来たときに、画像が乱れたんだそうです。そこで、なんかおかしいな、と思ってトレイを開けてみたら、ゲームディスクの下あたりから小さなゴキブリがぞろぞろと出てきたのだと。…しかも、列を成して。
この話はすぐに職場の皆に面白おかしく伝えられて、ちょっとした話題になりました。でもいろいろな意見があって、必ずしもN先輩の話を信じた人ばかりではありませんでした。
「そもそも、あの新型の小型のプレ○テ2にゴキブリの入る隙間なんてないだろ。」
「うーん、某社の技術の粋を極めて小型化しているからねえ。」
「いやいや、ゴキブリの小さな奴はどんな隙間にも入り込むからな。」
「確かに、内部は暖かくて、ゴキブリにはいい環境かもしれん。」
「いや、Nの奴の机の乱雑さを見ろよ。家でもあんな感じだろ?そのゴキブリはもともとNの部屋にいたんだよ。」
等々。
自慢じゃないですが、僕はゴキブリとか、ムカデとか、ああいう何ていうか這いずり回るようなモノは大嫌いです。それなのに、特に皆が顔をそろえる昼休みに食事をしながらこんな話題が連日繰り返されるものですから、ただでさえ暑くて食欲のなかった僕はもう、へろへろでした。
当のN先輩は、ゴキブリはともかくプレ○テ2のゲームは気に入ったらしく、自分でもプレ○テ2の本体を買いました。そして、迷った挙句、ソフトはまたS君に借りました。なんてったって、S君はものすごい数のゲームソフトを持っているのです。「あんなことがあったのに、よく借りるな」なんて人もいましたが、まあゲームディスクにゴキブリが付いてるってことは考えにくいですからね。
数日前の昼休み、N先輩は「このゲームのケースの中にゴキブリが入っていたりしてな。」と笑いながら冗談を言いました。最近流行の話題の続きというわけです。皆は笑いましたが、僕の笑いは引きつっていました。何度も言いますが、僕はゴキブリとかは大嫌いなんです。
それでも、ケースを振ってみせるN先輩の手の下に、僕は冗談に合わせて手を差し出しました。もちろん、何かが落ちてくるはずなんてないと信じて。
…次の瞬間、N先輩は驚いてケースを落としました。そして僕は、情けない声を出して座り込んでしまいました。
僕の、ゴキブリの大嫌いな僕の手の上に、小さなゴキブリが落ちてきたんです。半透明の小さなゴキブリが、ゴキブリの大嫌いな僕の手の上に落ちてきたんです…。
立ち直るのに3日掛かりました。まだちょっとへろへろ状態です。
最初に言いましたが、僕はゲーム機が嫌いです。…ゴキブリはもっと嫌いです。ええ、本当に。
今ちょっと気になっていることがあるんです。もちろん僕は、S君からゲームディスクは借りていません。でも、でも映画のDVDを何度か借りなかったでしょうか。そして、それを今この日記を書いているパソコンで見なかったでしょうか。
…最近、パソコンの調子が良くないんです。今もほら、画面が乱れました。
ひょっとして、今、ディスクのトレイを開けてみたら…!