渡る世間は魔王ばかり
「小説家になろう」で初めて投稿させてもらいますジャギィと言います
僕は思います。最近のラノベや漫画にはギャグが足りてないと!圧倒的に足りてないとッ!!ゆえにこの小説を読んでたくさん笑ってくれる人がいればいいなぁって思ってます
※この小説には実在する人物の名前が出てきますが、誹謗中傷や間違ったイメージを植え付けるために出したわけでは決してありません。予めご了承ください
母なる星、地球……
その星でははるか太古の時代に、神の座と力をかけた聖戦と言う名の大戦争が長い間繰り広げられていた
永遠に終わらないと思われた争い。その争いに終止符を打った男がいた。その男は神などとは反対の存在、悪魔族であった
男はその戦争で神の座と力を勝ち取り、神の力で地球を統一し、大魔王と呼ばれるようになった。大魔王の統治により、世界には平和が訪れた
しかし男が大魔王となってから100年後、突如男は大魔王を引退
そして大魔王が引退時に告げた一言が、全世界の強者たちを世界に駆り立てた
『大魔王の座?そんなのお前たちで勝手に決めろ』
世はまさに、大魔王時代を迎えたーーー
こんにゃく
そして時を経て30XX年地球、人類は数多くの魔王によって支配されていた
全ての魔王たちは力、魔力、軍事力が人間の国家を上回っており、その強大な力に人々は抗うことができず、全世界が魔王によって苦しめられていた
そんな中、魔王たちに立ち向かう1人の男がいた
〜〜〜渡る世間は魔王ばかり〜〜〜
「はぁ!はぁ!はぁ!」
木々の生い茂る森林の中で走る1つの影があった
赤いショルダーバッグを肩からかけている水色の短い髪の少女は息を切らしながらも全力で走っていた。後ろに纏めている短いポニーテールが大きく揺れる
ガッ!
「きゃあっ!!」
しかし途中で木の根に足を引っ掛けてしまった少女は、勢いよく走っていたこともあって前のめりに倒れる
ズザ…
そしてその間に少女が走っていた理由…オオカミをそのまま人の形にしたような獣人が森の奥から姿を現わす。そう、少女はこの獣人から逃げていたのだった
3匹のオオカミ男が回り込むように少女を囲む
「手間取らせやがってこのガキ…さあ、大人しく村へ戻れ。今ならまだ死なずに済むぞ!」
「ヤダね!誰がお前たちの言うことなんか聞くもんか!!」
強気にそう返すとオオカミ男は目を血走らせる
「デカい口叩きやがって!!オレたちが殺さねえと思ったら大間違いだぞ!!!」ジャキン!
「八つ裂きにして食ってやる!!!」ジャキン!
3匹は手の指の爪を立てると一斉に飛びかかる!
「きゃあああ!!!誰か助けてーーー!!!」
襲いかかってくるオオカミ男たちを前に少女はバッグで体を守りながら助けを求める……その時!
ドゴゴゴン!
「「「ぐわっ!!!」」」
鈍い音の後に襲いかかってくるハズの獣人の声が少女の耳に聞こえてきた
うっすらと目を開けると、少女の前に巨大な大剣を背負った1人の男が立っていた
(誰…?アタシを助けてくれたの…?)
「大丈夫か?」
男が少女の方は振り向く
助けてくれた男は葉っぱのように深い緑色の短髪で、旅人には見えない軽鎧を着ていた
「やりやがったなテメー!!」
「ぶっ殺してやる!!!」
「あ!危ない!!」
そこに攻撃を食らったオオカミ男たちが怒りながら背後から強襲する
「必殺……」
だが男は背中に目があるように回転し
『「ブレイブ斬り」!!!!』ドガ!
「ぐわあ!!!」
必殺技でオオカミ男の1匹を倒した
「スゴイ!モンスターをあんな簡単に倒しちゃうなんて!」
いったいどんな武器を使えばあんなに鮮やかにモンスターを倒せるんだろうと少女は思い、男の右手に握られた武器を目に写すと
「ぎ、ぎにゃあ……」ぴくぴく
(猫だーーーーーーー!!!!!)
そこにいたのは尻尾を握られて痙攣する瀕死の黒猫だった。まさかの虐待現場に少女は心の中で叫んだ
黒猫を手に男は戦いを始める!
『必殺「ブレイブ斬り」!!!』バキ!
「ぎにゃあー!!!」
「きゃあああああああ!!!!」
再び猫で勢いよく殴って2匹目のオオカミ男を撃破。そのあまりに残酷な光景に少女は悲鳴をあげる
そして男は最後の敵に狙いをつける
「トドメの「にゃんこアタック」!!!!」ベキ!
「ぎにゃあー!!!」
(猫って認めたーーー!!!)
とうとう技名で猫と認めて開き直る男に少女は全力で突っ込んだ
全ての敵を倒した男は手に持った黒猫に視線を移す。男は猫に対して慈しむ目で優しく微笑みながらオーバースローの構えを取り
「重てぇ!!!」
「べにゃ!!」ビタン!
「ええっ!!?」
思いっきり近くの木に投げつけた。唐突な暴挙に少女は激しく困惑する
猫にたっぷりダメージを与えた男は何事もなかったかのように少女に話しかける
「ケガはないか?」
「いやアタシよりもあの猫の方がケガしてるから!!」
「問題ない」
猫を指差しながらそう言う少女の指摘に男は自信マンマンに答える
「アイツは非常食だ」
「非常食!!!?」
非常食として連れてこられ、武器として酷使させる。かつてここまで酷い扱いの猫が存在しただろうか?黒猫の悲惨な現状に少女は涙が流れそうだった
そんな中、木に叩きつけられた黒猫はフワリと浮かび上がりながら男に怒鳴り始める
「シャーユ、テメー!!よくもワガハイをこんな目に遭わせやがったニャ!!」
「え、猫が飛んだ!?」
よく見てみると猫の背中には小さい悪魔みたいな羽が生えて、それをパタパタ動かして飛んでいた
「猫じゃねえよ!!!」
「落ち着けクロ助」
少女の猫発言にキレた黒猫ことクロ助を、シャーユと呼ばれた男がなだめる
「そうだ、助けてくれてありがとう!!アタシの名前はイヒロ」
「イヒロ、なんでお前はモンスターに追われていたんだ?」
シャーユのその言葉にイヒロは自分が森の外を目指していた理由を思い出す
「そうだった!!アタシたちの村がモンスターに襲われたんだよ!」
「モンスター?」
「うん!しかもモンスターを操ってるヤツ、自分のことを魔王って名乗っていて……」
「魔王」と言う単語を聞いたシャーユとクロ助は互いに顔を合わせる。そして頷くと、イヒロの方へ向き直る
「オイ、その魔王ってヤツのところに案内してくれ」
「ワガハイたちがその魔王をぶっ倒してニャるよ」
「ええ!!?」
2人の言葉を聞いたイヒロは信じられないといった風に驚く
「無理だよ!魔王は1体だけで国の軍隊を相手にできるほど強いんだよ!?いくらモンスターを簡単に倒せても2人だけじゃ勝てないよ!!」
イヒロは思いとどまってくれるように必死に説得する
「それに村を囲んでモンスターたちが見張ってるから絶対見つかっちゃうよ!!!」
そんなイヒロの言葉を、しかしシャーユは不敵に笑いながら返す
「安心しろ。ちゃんと作戦は考えてある」
〜〜〜ブレイブ斬り…大剣で大きく斬りつけるシャーユの必殺技の1つ。剣がない時はクロ助を代用する〜〜〜
森林に囲まれたとある小さな村・タイヨウ村…
そこでは多くの村人がロープで体を縛られ、自由を奪われていた。子供たちは泣きながら、大人たちは何もできない事実に歯噛みしながら恐怖に震えていた
「コッザ様!村にいる全ての人間を捕獲しました!」
「これで全てか?思いの外少ねえなぁ」
バイキ○マンみたいな小悪魔の1匹が膝をつきながら報告をする。その先には真っ赤な毛に包まれた2つ首の巨大な猟犬オルトロスの上で胡座をかく、山羊の角を生やした男がいた
タイヨウ村を支配した元凶、魔王コッザは残念そうに村人たちを見下ろす
「これじゃエネルギーが全然足りねえな」
「くっ、魔王め!!我々を一体どうする気だ!?」
白ヒゲを生やした村長が縛られながらもコッザに問いかけるが
「ウルセエよ」
鬱陶しく思ったコッザが魔弾を放つ
ドカ!
「ぎゃあ!!!」
「村長!!」
「オマエたちニンゲンは所詮オレ様のエサなんだよ。分かったら黙ってな」
痛みに転がる村長をコッザは嘲笑う
ガサゴソ!!
その時、近くの小屋から物音がする
「ム!!何者だ!!」
小屋の方に顔を向けながらコッザが叫ぶと、小屋の中から音の原因が姿を現す!
「アルパカです」
『『『………………』』』
魔王もモンスターも村人も、全員が真顔になった
「今だ!!!」ダッ!
その硬直のスキをついてアルパカは脱出を図る
「殺れ」
「イエッサー!!」ドス!
「ぎゃあああ!!!」
しかしコッザの無情な命令により、アルパカは小悪魔にフォークめいた武器で体を貫かれて命を落としたのだった…
パカ太郎……死亡
「コッザ様、ご報告が!!脱走者を追跡していたオオカミ男たちの連絡が途絶えました!」
「何!」
それを聞いたコッザは顔をしかめる
「王国にバレれば面倒なことになるな。早くコイツらからエネルギーを吸い取って…」
「コッザ様!!」
「今度はなんだ?」
再び小悪魔が前に出てくる。小悪魔はその口から衝撃の事実を告げる
「何者かがこの村の中に侵入しています!!!」
「何だと!!?本当か!!?」
その報告を聞いたコッザは驚きのあまり立ち上がる
「見張りどもは何をやっている!!!」
「それが、見張りたちからは異常なしの報告としか。敵はかなりの隠密能力を持つものだと…」
ガサガサ!
その時、木の近くの茂みから音がした
「!! 侵入者か!!?」
コッザはオルトロスに乗りながら、周囲に小悪魔を集めて警戒する
(いったいどんなヤツが出てくるんだ…?)
コッザが警戒を強める中、木の陰から出てきたのは…
バッ!
「メガシャーユ、発進!!」ガラガラ
「なんじゃあ!!!!?」
超豪華衣装を着た高さ8メートル50センチはある、掌に疲れた表情のイヒロとはしゃいでるクロ助を乗せた巨大なシャーユだった
インパクトのあり過ぎる姿にコッザは目を飛び出させて心の限り大声で叫ぶ。モンスターと村人も同じ反応である
誰もが思った。なぜ誰もこれに気づかなかったのだと
しかしすぐに正気に戻ったコッザは周囲の小悪魔たちに命令を下す
「えーい!オマエら、やっちまいな!!」
「「「ケケケー!!!」」」
村中に広がっていた全ての小悪魔たちがメガシャーユを囲んで一斉に攻撃を開始して
「幸子ビーーーム!!!!」ビビビッ!
「「「ぎゃあああ!!!!」」」
超豪華衣装の全身から弾幕のようなレーザービームが降り注ぎ、小悪魔たちを全員一掃した
「やっぱ小林幸子と言ったらビームだよな」
「夏と花火のように切り離せニャい!!」
「いや幸子とビーム全然関係ないから!!!!」
勝手に納得してる2人に向かってイヒロは突っ込まずにいられなかった
「オレの子分たちが全滅しただと!!?何者だキサマ!!!」
コッザが怒り心頭で問い質す。するとシャーユは無表情ながらも憤怒の感情を表しながら、魔王に宣言する
「オレの名前はシャーユ。世界の平和のために…魔王、お前を倒すぜ」
背中の大剣を抜くとシャーユの全身から凄まじいオーラがほとばしる。それを感じ取ったコッザは棚ぼたと言わんばかりに邪悪に笑う
「このオレを倒すだとォ?面白いことを言うな。オマエはエネルギーを全て吸い取って殺してやるよ」
コッザは力を解放する。その際にペットのオルトロスが遥か彼方に吹き飛ばされたが誰も気にしなかった
「シャァ!!!」
コッザはシャーユに向かって走り出し、鋭利な爪を突き立てる。シャーユは大剣を構えてそれをガードする
ギギギギギ!
そして密着状態になったのを利用してそのまま攻撃に転じる
「「ブレイブ斬り」!!」
「おっと!」
しかしコッザは弾かれるようにブレイブ斬りを回避する
「死ね!!「カオスファイア」!!!」
「早い!こんなの躱せないよ!!」
次に手に火の魔力を圧縮させてシャーユに発射する。それを見たシャーユが腕を伸ばして構える
「魔法か!!ならばこちらも…」
(もしかして魔法を使って打ち消すつもり!?)
躱すことが不可能と言われる上位魔法を、魔法を唱えて相殺…
「「ブレイブ打ち」!!!!」カキーン!
(違ったーーー!!!思いっきり物理だ!)
ーーーせずに、大剣をバットのように振って火の魔法を打ち返した
「ナニィ!!?」
まさか強力な魔法を打ち返してくるとは思わなかったらしく、一瞬思考がフリーズしたコッザに向かって火の玉は直撃
ドゴーーーン!!!
コッザを中心に火の玉は大きく爆発。中から現れたコッザは山羊の角が片方折れるなど、それなりにダメージを受けていた
「ぐぐぐっ…クソ、ニンゲン風情がぁ…!!」
「スライディーーーング!!!」ズザザァ!
「ぐはぁ!!!」
さらに追い打ちをかけるようにサッカーユニフォームを着たシャーユはサッカーボールと一緒にコッザの脚をスライディングキックで蹴りつけた
ピッピー!
「レッドカード!退場!!」
「ええー?今のはイエローカードだろ〜?」
「そんなことやってる場合じゃないでしょ!!!」
そこにクロ助審判がやってきてシャーユにレッドカードを突きつける。ぶーたれながら抗議するシャーユに対してイヒロは正論を言う
「仕方ニャい。じゃあレッドカードとイエローカードの間を取って…」
「遊戯王の魔法カードで」
「なんで!!?」
「死者蘇生」を掲げるシャーユを見てイヒロは頭を抱えた
「おのれー!こんな訳の分からんニンゲンに、このオレが負けるものかーーーーー!!!!」
立ち上がったコッザは、屈辱に顔を激しく歪める。そして渾身の一撃を大剣に向かって突きつける
バキィィィン!
コッザの攻撃はシャーユの大剣を半分に砕き割った
「ああ!」
「剣のないキサマなど敵ではないわ!!!」
勝利を確信した魔王はシャーユの頭を砕くべく腕を空に向かって伸ばし
「死ねーーーーー!!!!!」
勢いよくシャーユめがけて振り下ろす!
『「ブレイブ斬り」!!!!』ドガン!
そしてその直後…クロ助を手に持ったシャーユの一撃が、無防備なコッザの腹部に命中した
「(ね、猫………!!?)ガハァ…!!!」
吐血しながら倒れる魔王は、そんな疑問を抱きながら気絶した
「(シャーユ、いつかぶっ殺す…!!)ゴフッ!」
(だろうね……)
そして血を吐きながら復讐を誓うクロ助と、そんなクロ助に同情するイヒロだった
最後にシャーユは気絶しているクロ助を肩にかけながら魔王に向かって伝える
「どんな武器だって使いこなせるのが、勇者ってもんだぜ」
イヒロは思った
猫は武器ではありません、と……
〜〜〜勇者…魔王が蔓延る世界を救うために現れた人類の救世主。ただし魔王が今も増え続けているため、現在は時給930円で勇者募集中〜〜〜
勇者の活躍により、タイヨウ村に平和が戻った
そして後日…
「今回は助けてくれてありがとね」
イヒロは魔王討伐の旅を続けるシャーユとクロ助を見送るために村の門まで来ていた
「頑張ってね、勇者さん」
「おう」
「オマエも元気でニャ!」
クロ助を肩に乗せ、シャーユは村を背に歩き始める
シャーユの冒険はこれからだ!!