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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
8/43

さとりくんは、今後を考える

 索敵と魔物支配。2つのスキルがあることにしたけど、読心系能力の利用方法ってだけなんだよね。

 確かエクレアは、身分証でスキルを偽証できないようなことを言ってた気がする。まるっきり嘘でも無いこの2つのスキルは載せられるだろうか?身分証の裏の線がスキルがあることを示しているから、何かのスキルが無いと怪しまれると思うんだ。

 ……もし載せられなかったら、さとり能力がありますって報告しないとダメなのかな?

 今まで隠さないといけないと思ってきたし、この世界でもあまり好かれる能力じゃなさそうだ。出来れば隠したいな……。

 どうなるか分からないし、結果が分かってから考えようか。


”あった。けど、どうしようか。この階層でトラップという可能性は低いだろうが…”

 ん?フローライトが何か発見したようだ。毒毒スライムの出てきた横道に入って行ったので、付いて行く。

「ユウキ、この石は色が違うのが分かるか?」

「色?透明だね。」


 フローライトに指された石は、今までに落ちていたこのトンネルと同化する石と違い、小さくて透明だった。


「そうだ。このダンジョンが輝石のダンジョンと呼ばれているのは、こういった価値のある宝石類が落ちているからそう呼ばれている。この辺りだと、たぶんこれは水晶だと思うが、もっと下に降りればサイズや純度・種類も価値の高いものになっていく。」

「へぇ。なら、これを拾えばいいんだ?」

「そうなんだが、これにも転移の罠が仕掛けられていることがある。拾った者がその石と一緒にどこかに転移される場合があるんだ。他の石なら基本的に転移陣が刻んであって、パティーメンバーが罠にかかって転移しても同じ罠に触ることで同じ場所に行けるんだが、こういう石の罠は転移陣が刻まれていない一度きりの転移トラップになる。だから、このダンジョンでは、パーティーで攻略することは少ない。」

「そうなんだ。これ、拾わないの?」


 フローライトは黙っている。いや、考えている。


”もし、罠だった場合、分断されてしまう。保護者として報奨金をもらったのに、こいつを置いて行くわけには行かない。せっかく落ちているのに拾えないなんて…。こいつさえいなければ、気にしなくて済んだのに…いや、でも金貨2枚は2.3日の収入にしては十分多い。我慢だ。”


 なんか、必死に自分を納得させようとしてる……。フローライトってお金好きだよな…。

 心の声で魔物の行動を操れることが分かったし、もし罠にかかってもさっきの狼に案内してもらえれば帰れそうだから、置いて行かれてももう大丈夫だけど。


「えっと、これが罠かどうか見分ける方法は無いの?あとは、手を繋いでたら、同じところに転移するとかはない?」

「こういう石は、見た目で罠の判断できない。手を繋いでいたとしても、転移が発動するのは触ることで認識した魔力と同じ魔力を持つ者だけだ。一緒に転移することはあり得ない。

 罠を発動させずに拾うには、特別な魔力を遮断する布があれば大丈夫だが、そんな高価なものは持っていない。罠かどうか確認したいなら、魔石を当てることで罠の有無を確認するが…。」

”もし罠だった場合、せっかく集めた魔石が石と一緒に消えてしまう。もっと売価の高い石ならいいが、このレベルの水晶に魔石一個は、高いだろう。いや、これは、異世界人の指導か。なら、仕方ないな。”


 とうとう、お金大好きフローライトが覚悟を決めたようだ。金貨2枚の重みが勝ったようだ。

 未練がましく推定水晶を見つめていたフローライトは、俺に向き合った。な、なんだ?


「ユウキ、さっきスライムを倒した魔石があるだろう?それを、あの透明な石に当ててみろ。投げなくても、あの石に触れないように魔石をくっつければいいから。」

”別に俺が魔石を提供する必要は無いか。それに、このダンジョンで一度くらいは輝石を拾わせないと指導にならないだろう。それなら、あのクラスの水晶は惜しくない。早く終わったら、後でまたくればいいか。”

「…はーい。」

 俺に一度拾わせるなら低レベルな水晶は惜しくないし、確認のための魔石を俺に出させればフローライトの懐も痛まないと……。本当に、お金が好きだな!

 内心あきれながら、指示されたとおりに魔石を出し、透明な石にそっと当てた。

 変化なし。これは、罠が無いという事か?


「罠は無いようだ。拾っていいぞ。」

「わかった。」


 魔石を失うことなく、無事に水晶をゲットした。良かった。


「このダンジョンの注意点と、スライムの倒し方は教えたから、外に出るぞ。」

”通常トラップの位置は昨日説明したし、輝石のトラップも今説明したし拾わせた。スライム狩りも問題なさそうだった。後は、外での狩り方を説明すれば終わりだ。”

「終わり!?もしかして、注意点は他にないの?例えば、ボスモンスターが出るとか…。」

「このダンジョンにボスモンスターは出ない。北側の獣のダンジョンには、5階層ごとに出るようだが、Eランクで入るのはお勧めしない。D以上に上がったら、ギルドや他の冒険者に聞けばいいだろう。

 このダンジョンで一番強いのはウルフだ。会った時に囲んできたブルーウルフだが、あれ以上に色が薄かったり濃かったりすると強い個体になるくらいだ。スライムは、この辺りだと毒のスライムが多いが、もっと下に行くと麻痺をさせたり装備を溶かすようなのも混ざってくるから、気を付けろ。」

「分かった。」


 さっさと来た道を戻りだす鎧の背に、慌てて質問したが、面倒くさがりの性格のせいか、説明が適当だ!

 ボスモンスターがいないらしく、出る魔物もずっと似たような感じだから、説明も少ないのかもしれないけど……もう片方のダンジョンの方が、ゲームのとかに近いのかも。

 狼は狼でも、このダンジョンにあの狼より強い狼の居るんだ。仲間にするなら、もっと強い狼の方がいいかな?でも、あの時4匹残っていたはずだけど、好意的だったのはさっき寄ってきた1匹だけだ。操るのは出来ても、自主的に仲間になってくれた方が楽だよね。魔物って、育てられるかな?


 次のスライムが寄ってくる前に、青く光る転移陣の前に戻り、外に出てほっとした。

 転移の罠に掛からないように足元に注意しながらスライムと戦ったりしたから、思ったより神経を使ったようだ。


「今から、この辺りで狩りをする。索敵は出来るか?」


 頷く。近くに、居る。

”うさ。うさ。うさ。うさ。うさ。…”

 魔物かどうか分からないけど、魔物っぽい。その方向を指さす。


 うさって何だろう。うさぎかな?兎ぽいけど、流石にうさって鳴き声は適当過ぎると思う。スライム以外の魔物も、こんな感じなのか?それにしては、狼はちゃんと喋ってたと思うけど……。

 フローライトと共に静かに草むらを覗き込むと、ペットショップで見たことがあるような兎の2倍くらいの大きさで、額に角の生えた紫の兎が居た。たぶん、魔物。


 紫の兎に衝撃を受けている間にフローライトが飛び出し、兎を剣で突き殺していた。

 辺りに飛び散った、赤い血痕。

「これは、角ウサギだ。この辺りによくいるスライムくらいの強さの魔物だ。持って帰ると食用の肉と毛皮が取れる。袋に空きがあればこのまま持っていけばいい。もし、空きが無いなら、魔石はだいたい体の中心にある。」


 そう言って、兎の死骸をひっくり返すと、お腹を剣で切り開いた。

 さらに広がる血の跡と、溢れ出す内臓。その中に手を突っ込み、血まみれの魔石を取り出して見せてくれた。

 ……ぐ、ぐろてすく。現代人には、ちょっときついんじゃないか?

 これ、俺もやらないとダメなのかな?手とか汚れそうだし、気持ち悪い。


「ダンジョンと違って、外の方が魔物との接触率が低い。さらに、こうして汚れる。

 ”ウォーターボール”」


 水の玉が現れて、汚れたフローライトの手と魔石を洗い流して地面に落ちた。

 ただ水が通っただけに見えたのに、血の汚れが綺麗になってる。すごい!洗濯とかが楽になりそう!

 俺もやって見よう!


「”ウォーターボール”」


 空中に静止する拳サイズの水の玉。指を入れてみたが、水っぽい。数秒で重力負けたように落下しだしたので、反射的にもう片手で受け止めようとして少し掬ったが、水っぽい。

 確かに、水を通した感じはするんだけど、流水の感じは無い。これでは、手を洗った気にならない。……なんか、違う。


「洗うのは、もう少し練習してからの方がいいだろう。とりあえずウォーターボールが使えれば、その水は飲めるから、遭難した時に便利だ。ただ、魔力を使い過ぎると体力も減るから、どのぐらいまで使えるか確認することを勧める。」

「…はーい。」


 洗濯機には、ぐるぐるっていう水の流れが必要だと思う。それをイメージすれば少しは変わるかな?


「遭難と言えば……輝石のダンジョンは15階層と言われている。3階以降の階段や転移陣と罠はたまに位置が変わるから転移迷路と呼ばれているが、必ず3階ごと帰還の転移陣があるから探せば見つかる。

 ただ罠で転移した場合、3階ごととは限らない。だから、別の場所に転移している可能性が有る。あのダンジョンは、公式の情報以上の迷路だから、遭難の対策は万全にした方がいい。」

「そうなんだ。」


 思わず、ダジャレのような返答になってしまった。

 そんな重要な情報、ついでのように言う?

 フローライトは帰還ができるから大して気にしてないのかもしれないけど、結構重要な情報だと思う。

 ダンジョン関係者(魔物)に聞けば何とかなるかもだけど、会話のできそうな魔物がいなかったり、魔物が知らなかったりしたら遭難しそう……。

 

 兎の死骸を拾い上げる様子を見て、ダンジョンの方が楽そうかと思ったけど、あのダンジョンも危険かもしれない。

 すでにダンジョンについての説明を終えた気になっているフローライトが、俺をダンジョンに連れて行くことは無いだろう。次の時は、あの狼にいろいろ聞いてみようか。

ヒロインの登場まで、思ったより時間がかかっています。

もう少し、かかりそうです。

エクレアさんと回想の塩原さんが、女の子成分を補給してくれていると信じたい…。

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