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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
7/43

さとりくんは、スキルを使う


”毒ろうか?毒ろうか?毒ろうか?…”


 いや、遠慮する。

 目の前のスライムは、落ちてきた状態のまま動きを止めて、声を飛ばし続けている。

 これなら、居場所が分かるし、何の状態異常かも分かる。

 ……ただ、鳴き声のように毒ろうか?を繰り返されると、微妙な気持ちにはなる。これ、生き物?スライムって、なんか変わってる…。


「よく避けられたな。スライムは、色の変わっている所を攻撃して破壊すると、倒すことが出来る。それ以外の物理攻撃は無効だ。ついでに魔法も見せようか。

 ”ファイヤーボール”」


 フローライトの指先に火が灯る。それを、毒ろうかと繰り返しているスライムに飛ばした。

 小さく見えた火だが、スライムに当たった瞬間に燃え上がった。数秒燃えて、鎮火した後には、核のような部分以外のゼリーが2周り程減っていた。

 

”毒ろうか!毒ろうか!毒ろうか!”


 うわっ! 先ほど落ちてきた時のように、鳴き声のような言葉のテンションを変えてこっちに迫ってきた!

 毒らない!毒らないから!毒、いらない!今攻撃したのはフローライトなのに、何で俺の方に来るんだ!

 慌てて鞄に仕舞った短剣ナイフを取り出そうとする。先に持っていれば良かった!

 もたついている内にスライムが近くなり、俺に触る前にフローライトが剣で核を壊して、スライムを倒した。


「こんな感じで、魔法を使うとスライムは小さくなるが、攻撃力の高い攻撃でもなければ致命傷にはならない。大きなスライムには、こうやって小さくして剣が届くようにしてとどめを刺すんだ。あと、街の外に出たら、武器はすぐに使える位置に置いておけ。」

”街の外では魔物が出るって伝えたよな?ダンジョンで魔物を倒すって言っただろ?馬鹿なのか?”

「…はーい。」


 おっしゃる通りです。スライムから変化した魔石を拾っているフローライトに、何も反論出来ない。

 やっと取り出したナイフを握り、次に備える。


「それで、何で上から落ちてきたスライムに気付いたんだ?」

”察知とか索敵とかのスキルなのか?”

 ええと、それでいっか。

「なんとなく、居るなーって思ったんだけど、これがスキル?」

「察知か索敵系だろうな。他に居るのが分かるか?」


 耳を澄ませるまでもなく、聞こえている。

”毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒毒…”

 さっきの毒ろうか?より、ずいぶん不気味な声だ。


「分かるけど。一番近いのは、そこの横道の所に、同じようなスライムが居ると思う。少し離れた所に、他にもいる感じがする。」

「そうか。やっぱり、索敵のスキルだな。ついでに、さっきの魔法を使ってみればいい。やれ。」

「え?…はーい。」


 やれ、とか言われちゃったよ。

 でも、さっきのスライムを見る限り、走れば逃げられそうだし、いいか。


 毒毒スライムの居る横道を覗き込み、すぐに後退する。

”毒! 毒!毒!毒!…”

 思った通りに、鳴き声のテンションを変えながら、飛びかかってきた。

 でも、先ほどと違い、避けられた後に静止することなく、そのまま俺に迫ってくる。毒、いらない!

 後ろに下がりながら、呪文を唱える。

「”ファイヤーボール”」

 フローライトと同じように、指先に火が出た!それをスライムに投げる!えいっ!

 見た目通りにしょぼい火は、スライムに当たるも、すぐに消火された。……なんか、思ってたのと違う。


 スライムは直進的に向かってくるだけだし、サイズにもそこまで大きいわけじゃない。慌ててナイフを色の濃い部分を刺すと、そのまま消滅して魔石に変化した。

 ……せっかくの魔法なのに、意味無かったな。


 意気消沈する俺に、フローライトは慰めるような声音で声を掛けてくれた。

「魔法がでるだけで、十分だ。スライムは倒すのが簡単だから、練習すればいい。」

”魔法しょぼい。剣は勢いがない。そもそも動きにキレがない。才能が無いな。”

 心の声が正直すぎる!そんなので、やる気が出るわけないだろ!初心者なんだから、ちゃんと指導しろよ!


「他の魔法は無いの!?なんか、すごいヤツとか!」

「俺が教える魔法は、初級魔法だけだ。範囲とか威力とかを追加して、自分で鍛えろ。もしくは、魔法を教えてる奴に弟子入りすればいい。」

「初級だけ?ファイヤーボール以外は無いの!?」

「あとは、ウォーターボールか。ファイヤーボールが使えれば、同じ威力のが出ると思う。次にエアカッターと、アースウォールがあるが、あの威力だと出ないかもしれないな。

 練習するなら、この4つからだ。魔法系の能力が無くても、索敵が出来れば十分だろう。」

”攻撃力に欠けるが、出る種類まで分かるなら、強い魔物を避けることが出来る。悪くないスキルだ。ただ、索敵が効かない敵に会ったら終わるな。”

 一言余計だ!でも、魔法のスキルも無いとすると、本格的に読心系のさとり能力しか持ってないかも。


「分かった。索敵能力を基本として、戦力を磨くようにするよ。」

「それがいいと思う。」

”他に有用なスキルが無いなら、俺はパーティーを組みたくないな。勝手に頑張ってくれ。”

 やっぱり、俺とパーティーを組むつもりは無いようだ。俺も、フローライトなんか御免だけどな!

 毒毒スライムの魔石を拾って仕舞う。これは俺が倒したんだから、もらっていいよな?


 それにしても、今後も冒険者としてやっていくには火力不足かも。

 他のスキルって言うと…どうだろう?

 昨日の、()()は使えるのかな?


”毒だー。毒だー。毒だー。…”

 天井伝いに、スライムが近づいて来たのが分かった。

 今度のスライムの鳴き声は、さっきのよりも可愛いかも。

”毒だー!”

 テンションの上がった声がして、落ちてくる。それを迎え撃つように、半歩下がってその方向にナイフを突き出した。

 核の部分に当たらなかったようで、にゅるんとナイフを抜けて、落下した。

”毒だー!毒だー!毒だー!”

 今度のスライムも、落下した後、静止することなく迫ってきた。

 後退しながら、心の声で命令する。

『動くな!』

 結果、スライムは前進を止めて、停止した。

”毒だー?毒だー?毒だー?”

 ちょっと不安そうな声に聞こえる。可愛いかも。

 うん。昨日の狼の時も思ったけど、()()使えるかも。

 家で母さんと内緒話する時に使ってたけど、魔物の行動も操作出来るなんて。




 そういえば、前に学校に居る時に、母さんから連絡があったな。

『帰ったら、頼みたいことがあるんだけど。』

 今言うのかと思って返事をしようとしたら、厄除け御守りの効力で能力を抑制していたから、返事できなかったんだよな。

『たぶん、まだあんたの力じゃ返事できないだろうから、拒否は認めない。帰ったらお米を2合炊いといて。お願いね。』

 別に、メールを入れてくれればいいとは思うけど。

 出勤する時にお米を炊くの忘れたのに気付いて、通勤で学校の前を通るから、その時についでで声を掛けたんだと思う。メールより、声を掛けるだけの方が楽だもんね。


 そうだった。この時は、御守を付けた状態だと、心の声を出せなかった。

 思えば昨日から、御守を付けていない時のように、いろいろ聞こえる気がする。

 ちゃんと御守りを付けているのに聞こえるし話せるなんて…もしかして、俺の覚能力が上がっているかも。小学校卒業とかのタイミングで能力の急上昇があったから、中学卒業のタイミングでの急上昇もあり得るかも。

 ……そうじゃないなら、この世界に、あの神社の神様の影響がないから、御守の効力が無いとか?

 そうしたら、本格的に、彼女も帰還も絶望的じゃないか?御守りを外して、どうなってるか確かめないと!




「何やってるんだ?」

”魔物が止まったなら、とどめを刺せ!”

「あ!」

 ざっくりと、フローライトが毒だー。を切り殺していた。

 ちょっと物思いに耽っている内に、あの少し可愛いスライムを!酷いよ、フローライト!

 

「なんだ?倒したらダメだったか?」

”不自然に、動きを止めていたかもしれない。何かしていたのか?”

「ええと…なんか、さっきのスライムは、なんか出来そうだったんだけど。」

「なんかって、なんだ?」

”何かの攻撃スキルか?そうじゃないなら、テイマー系か?”

 テイマー系!ちょうどいいスキルがあるんだね!


「なんか、仲良くなれそうな感じ?」

「仲良くっていうのはどうかと思うが、魔物支配系のスキルかもしれないな。」

「そうかも。上手く行ったら、あのスライムを連れ出せたかな?」

「無理だろう。ダンジョンの魔物は、基本的に外に出ない。魔物を操ってダンジョンの外に出そうとしたら、支配が解けて襲ってきたとか聞いたことがある。

 外で、使えるか試して見ればいい。そこで上手く行ったら、門で申請すれば連れて歩けるようになるはずだ。」

”テイマー系か。さっきの反応は面倒だな。有用そうだが、テイムされているのか、ただの魔物が判断つかないから、無しだな。”


 この能力は、フローライト的に面倒なようだ。俺としても、フローライトと組む気はないから好都合。


「じゃあ、後で外で試すよ。」


 それにしても、ダンジョンの魔物は外に出そうとしても、出せないのか。

 ただ出せないんじゃなくて、襲ってくるのは怖いな……。


”この前の、弱そうなの!また、来てる!”


 スライムなら俺の運動神経でも何とかなりそうだけど、こっちは駄目だ。


『また来るから、今はこっちに寄って来るな!』

”あー!声、聞こえた!面白い!近付けない?…面白い!”


 面白がられてる。青い狼か。攻撃力としてどうなんだろう。

 スライムとは、意思の疎通が難しそうなんだよな。狼の方が会話が成り立つし、強いのかもしれない。

 なんか、気に入られたみたいだし、寄ってくるなら攻撃力として使ってもいいかもな。

 大型犬みたいで、可愛かったし。


 フローライトに、うっかり殺されないようにしないと。

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