表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
6/43

さとりくんは、ダンジョンに行く

 服屋の後、武器屋で短剣を2本購入。

 魔石を回収するのに必要になるし、後で別の武器を使うにしても、予備として持っておいた方がいいという事だった。

 ダンジョンでは、そのまま死骸は消えて魔石だけ残ったけど、他では死骸が残るってことだよね?その死骸から魔石を取り出すとか……出来るかな?


 それから、宿屋で宿泊。朝夜食付きで、泊まった。

 帰り時間によっては宿に泊まれなくなることを防いだり、荷物置き場として使ったりするために、冒険者は素泊まりの料金を多めに払うようにしているらしい。置いてくのは服位だけど、とりあえず言われた通り、数日分払っておいた。

 ごはんは、パンと野菜のスープと何かのステーキだった。お米は見当たらなかったけど、味は美味しくて、これからの食の心配はしなくて良さそうだった。

 ちなみに、宿にはお風呂があった。服は変えたばっかりだからいいとして、下着類はお風呂で洗って部屋に干してある。


 ……これなら、異世界、やっていけそう…。

 とは思うけど、あとは収入源が無いといけないのか。

 借りた部屋は狭いけど、個室でベットがあって十分だ。そのベットに飛び乗って、体を休める。


 明日は、ダンジョンか…。魔物と戦うとか、体育の成績はいい方じゃないから、ちょっと心配だ。

 そういえば、中1の体育の100m走測定の時……。




「ちびっこだから、足が遅いのか?」

”足が短いから、コンパスの差があるんだな。”

 身長と足の速さを結びつけるなんて、ひどい!でも、僕はこれから成長期なんだ!

「なら、中3くらいには中里を抜かすつもりだから、その時にタイムも抜くよ!」

”無理だろ!”

 心の声だけで答えた爆笑する中里を、悔しく思いながら見た。

 ひどい。昔は、身長も足の速さもそんなに変わらなかったのに…。


 その時、塩原さんの声も届いた。

”聞こえたけど、無理でしょ!里山くんは、そのままでも可愛いからそれでいいのに!”

 成長期なんだ!どれくらい伸びるか分からないだろ!盗み聞きして、無理って決めつける方が酷い!


「まあ、あれだ。頑張れよ。」

”どんくさいところも、あるからな。潰されないように、見守ってやるよ。”

 現状の身長差を見せつけるように、中里に頭を軽く叩かれた。潰されないようにって!そんなに小さくないし!

”え!何今の!中里くんの優しい笑顔でのボディタッチ!!萌える!中里×里山イイ!その見守る表情!これからも、隣でずっと一緒に居て見守るよってこと!?なにそれ、美味しい!”

 ……え?ナニソレ。中里の見守るって、そういう意味?


 あの時の僕は、塩原さんの妄想にあてられて、しばらく中里を相手に挙動不審になったりしたな…。

 結局、中里は僕の…俺のことを、弟みたいな庇護対象としている見ていると分かった。同い年なんだから、それはそれで酷いよな。でも、塩原さんの妄想通りのことにならなくて安心したけど。

 思えば、塩原さんの監視は…妄想は……監視による妄想攻撃は、あの時から決定的になった気がするな……。




 ___頭を振って、思考を切り替える。

 ここには、塩原さんはいない。安心していい。

 でも、エクレアさんが居るんだよな…。腐女子は感染するみたいだし、この街で彼女を作るのは難しいかも……。縁結びの御守りで異世界トリップしたなら、腐女子じゃない彼女候補がいてもいいはずなのに。御守は関係ない、本気で偶然の異世界トリップなのかな?

 それとも、参拝の効果が分からないとか神も妖怪も大して変わらないとか言って愚痴ばっかり聞かせたから、神社の神様が怒って、あえて腐女子だらけの異世界にトリップさせられたとか?

 ……この想像に、ぞっとした。反省するので、許してください……。

 

 ひとしきりベットに転がりながら反省したが、気が付いたら朝だった。普通に宿のベットで目覚めて、帰れそうな気配は無かった。残念。

 




 朝起きて、パンとポタージュを食べ、フローライトと共に出発した。

 ゲームっぽい回復薬とか解毒薬とかの薬類の他、水とパンなどの食べ物を購入し、昨日購入した鞄と袋に分けて仕舞った。袋の1枚は、狩ってきたきたものを入れるために空けている。


 昨日買った拡張鞄には、重さ軽減とか時間停止はしないらしい。そういう機能が付いている物もあるようだが、それはお値段がすごく高いようだ。いつかは、手に入れてみたい。


 昨日来た道を戻り、門で身分証を見せて、街の外に出た。

 ここから先は、フローライトに見捨てられると危ない。でも、フローライトもランクDなんだよな。頼りになるかと言われると、少し不安。

 俺は、手先が器用だったりするわけでもないから、生産系のスキルがあるとは思えない。

 体力的なものも自信が無いから…やっぱり魔法かな?魔法が使えたら…楽しそうだ。

 

「魔法って、使える人は多い?」

「そうだな。魔力を持たない人は見たことが無い。身分証も魔力登録で文字が浮き出るから、ユウキにも魔力はあるはずだ。攻撃として有効な魔法が使えるかは、その人の魔力量と素質だけどな。」

「フローライトは魔法使える?」

「基本的なものは。」

「すごい!教えてよ!」

「…後でな。」

”こんなところで、魔力の無駄使いをさせるつもりか?金になる的が来るまで、おとなしくしてろ。”

 あ、はい。そうだった。フローライトって、こんなんだった。

 魔物が来たら、魔法を教えてくれるってことだよね。前向きに考えよう。


「分かったよ。魔法使えるといいなー。そういえば、スキルってみんな持ってるもの?フローライトもある?」

「身分証のスキル欄には、特技とか技能を載せているな。剣技とか、魔法とか、料理が出来るとか。だから、10歳以上の身分証を更新した人には、ほとんど何かしらのスキルが記載されている。

 ただ、生まれつき持つような特殊なスキル持ちは少ないな。切り札にもなるから、物によっては身分証には非表示にする場合がある。冒険者なんかの戦闘職には特にそういう場合が多いから、パーティーを組むなら身分証の裏を見せてもらうように聞くのもいいが、それ以上には聞かない方がいい。」

”秘匿しているスキルを話す奴なんていないだろ。警戒されると面倒になるぞ。”


「そうなんだ。気を付けるよ。」

 なるほど。そういうマナーらしい。

 そして、フローライトにも、秘匿するスキルがあると。

 伝わってくるイメージは、帰還?自分だけ? だから、こんな転移トラップの多いダンジョンに平気で入っていくわけだ。危なくなったら、一人で逃げられるのか。

 ……つまり、危機になったら、見捨てられるということだ。…危ない。こんな人と、パーティー組めない。

 っていうか、今組んでる状態なのか。怖っ!!ピンチになったら見捨てられるなんて、最悪!

 ピンチになる前に、魔法を習って、戦えるようにならないと!!




 決意を新たにしたところで、ダンジョンに着いたようだ。

 洞窟のような入口。入ってすぐの壁に、両手サイズの魔法陣のような模様が赤く光っていた。


「入口の近くだと、魔物も少ない。ここから、3階下に繋がっている。転移トラップを踏まなければ、3階ごとに青い転移陣があるから、それで帰れる。付いて来い。」

「え?」

 一階層から、順に攻略するんじゃないの?

 俺の疑問を置き去りに、フローライトはあっさりと赤い模様に片手を乗せてしまい、目の前から鎧姿は見えなくなった。

 え?3階スタート?フローライトは危なくなったら帰れるかもしれないけど、魔法は未修得だし、俺のさとり能力は転移なんて出来ないんだよ?分かってる?


 迷った。どうするか、迷った。

 でもこの場所で立ち止まっていても、魔法が未修得なのは変わりないし、3階には帰れる青模様があるらしいし、頑張ろう。

 ___片手を、赤い模様に乗せた。

 視界が変わった。目の前には、青い模様が光る壁があった。

 ……こんなすぐにあるの?俺の決意何だったわけ?


「早くいくぞ。」

”もたもたするな。時間が無くなる。”

「…はーい。」

 何かあったら、ここまで戻る!道を覚えるように脳裏に刻み、転移の罠に引っかからないように足元に注意して、鎧について歩き出した。


 それにしても、薄暗いトンネルだ。うっかり、足元の石を蹴飛ばしてしまいそうだ。

 前を見れば、天井部分が一定間隔で灯りがあった。もう少し、感覚が詰まっていれば、もっと見やすいのに。いや、転移トラップに引っ掛けたいから、この間隔なのか?作為的なものを感じる。


「ここって、どんな魔物が居るんだ?」

「この辺は、スライムが多い。このダンジョン自体、スライムとウルフが主だな。両方ともそれほど強くないが、スライムによる状態異常とウルフ系の素早い攻撃は、嵌ると危ないから気を付けろ。」

「スライムで状態異常…それで、毒消しが必要なんだ。あとさ、そのスライムってどんな風に出てくる?」

「通路に居ることもあるし、横の道から飛び出して来たり、後は天井から落ちてくることもある。」


 ……だよね!

 一定速度で歩いていたのを、タイミングを見て後ろに跳んで後退した。

 ぽちゃん、と俺のいた位置に、天井からゼリー状の物体が落ちてきた。


 念のため、もう一歩下がって、落ちてきたものを観察する。

 半透明なゼリー状のボディに、一部核のような色の濃い部分が見える。

 これがスライム。…弱そうだけど、これに触ると、毒になるのかな?


 このスライムが狙ったのは、俺だったよな?俺の方が弱そうに見えたのかな。目のような部分は見当たらないけど。

 ……フローライトを狙えばいいのに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ