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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
5/43

さとりくんは、紛れる

 ギルドの外に出た。

 エクレアからもらった地図を確認する。


「今から、どこに行くんですか?」

「そうだな。その服だと目立つから、服を買いに行こうか。」

”服を買って、装備を用意して、宿に飯があって、それでいいな。”


 フローライトが、横目で地図を確認して答えた。

 そうだね。ここから行くと、服屋があって、武器屋があって、宿屋の順の道筋だね。効率的だ。…フローライトの面倒くさがりの性格が活きてるね!


「わかりました。ところで、その鎧の頭の部分はどこに行ったんですか?」


 性格にから想像できない、さわやかな顔が見えている。隠せばいいのに。

 ギルドでは、頭部を手で持っていたと思ったけど、いつの間にか手ぶらになっている。


「仕舞ったんだ。拡張鞄は、異世界には無いのか?」


 腰にある、魔石をしまった袋の横、ウエストポーチを指で示している。

 そのポーチには、どう見ても入りそうにないサイズだったんだが。

 もしかして、なんでも入る有名なポケット的な魔法の品なのかな?それ、欲しい。


「見た目よりも物が入るってことですよね?そんなの、無かったです!それって、普通に買えるんですか?」

「一般的なものだ。持ってないなら、買うべきだな。」

”そうすると、見た目通りに何も持っていないなのか。可哀想に。”


 今更ながら、同情された。

 突然の異世界にそこそこ混乱したけど、能力的に騙されたりしないだろうから、比較的楽観視してたんだよな。

 でも、今まで散々見捨てようとした挙句、報酬の事ばかり考えていたフローライトに同情されると、なんか悔しい。


「拡張鞄欲しいです。でも、何で仕舞ったんですか?元のように、被ればいいじゃないですか。」

「街中で顔を隠していたら、怪しまれるからな。外に出る時には、そのまま被っていることもあるが、買い物する時には外した方がいい。」

「そうですか。」


 そうなんだ。たしかに、装備で頭まで隠している人は見当たらない。頭部さえ外してしまえばフローライトも街に溶け込んでいる。この辺りでは、そういうマナーらしい。気を付けよう。


「そういえば、ランクは何だった?」

「ランク?身分証はEって書いてありました。」

「E?そうなのか?…なら、明日はダンジョンに行っても大丈夫だな。」

”15歳以上なのか?それにしては小さい気がするが、幼く見える異世界人だな。”


 小さいとか、これから成長期なんだよ!あと、東洋人は若く見られがちなんだ!仕方ないだろう!


「もしかして、Eより下もあるんですか?」

「Fがある。10歳から14歳が登録すると、冒険者見習いのFランクになる。15歳からは、ダンジョンにも入れるし、他の街にも行けるEランク以上に上がるんだ。」

「へえ。フローライトさんは、何歳ですか?」

「俺は16歳だ。」

「え!俺も、今年16歳になるけど?なんだ、年齢近いじゃん!」


 小さいとか言われたけど、フローライトと比べたら確かに…いや、フローライトが老け顔なんだよ。二十歳前後かと思った。

 学年としては、一つ上かもしれないけど、敬語とか要らないよね。報奨金も出てるようだし、気にせずいろいろ聞いちゃおうっと。


「そうなのか。」

”そうは見えないけど、なんか、懐かれたか? 2.3日の付き合いだろうから、我慢か。いや、異世界人ということだし、便利なスキルがあるようなら、活用させてもらおうか。”


 懐くとか、我慢とか、失礼だ。活用しようとか言っている人を、信じる気にはなれないな。こちらとしても、2.3日の付き合いで終わりにしたい。

 ついでに、エクレアの興味も俺にとばっちりが無いように、フローライトが独り占めしておいてほしい。一押しらしいし。関わりたくないなぁ。


 地図と見比べて確認する。

「ここが、服を売っているお店だね?」

「そうだ。何かこだわりが無いなら、任せた方が早いぞ。」

”早く終わらせてほしい。選んでいる間待つのは、退屈だ。”


 はいはい、分かってるよ。特に、服にこだわりは無い方だから、選んでもらえるならその方が楽だ。

「なら、そうしてもらうよ。」


 ほっとした様なフローライトに付いて、店の中に入る。

 フローライトは、奥に居る店員に声を掛けている。


「いいか?こっちの奴の服が欲しい。異世界人で、今日保護した。」

「異世界人!?珍しいね。その服も、珍しいね!売るかい?」


 店員のおばさんに、食い気味に声を掛けられた。威勢のいい感じに、ちょっと驚いた。


「え?えっと、売ってもいいですけど、替えの服とかも無いので、先に買いたいです。」

「そうだね!来たばっかなら、しょうがないね。一式揃えてあげるから、色とか雰囲気とか希望はあるかい?」

「え?いいえ、特にないです。あ、でも、普通の服がいいです。普通に、地味な感じでいいです。」

「普通に地味?もったいないけど、初めだからいいか。フローライトが保護したなら、冒険者をやるんだろう?外に出られるように、揃えるから、ちょっと待ってな。」

「あ、はい。」


 服を探してくれているのだろう。おばさんが、店の中を周っている。選んでもらえるのは、助かる。


「装備はどうする?俺みたいに、鎧にするか? 魔法とか武器が決まらないと難しいんだが、接近戦は出来そうか?」

「接近戦。それは、ちょっと難しいかも。」

「そうか。なら、防御力高めのローブを用意してもらった方がいいな。」

”だろうな。強そうには見えない。強い魔法が使えれば分からないけど、基本前衛は難しいだろう。ウルフで腰を抜かしていたし。”


 接近戦は自信ないよ。でも、異世界に来たばっかで、あんな大きな狼を見たらへたり込むのも普通だって!失礼な奴だ!

 フローライトが、おばさんに追加で要望を言いに行ってくれた。

 なんだか、15歳には見えない!とかっていうおばさんの聞こえたけど、東洋人は若く見えるんだから仕方ないじゃん…。


 しばらく待つと、街中を歩いている人たちのような服の上下と下着類を3セットと、濃い緑の厚手のロープと、皮のブーツ1足、肩掛けの濃い茶の鞄と、皮袋が3枚用意された。

「この鞄は5倍拡張で、この袋は3倍拡張だよ。今着ている服を売ってくれるなら、銀貨4枚に負けるよ!」

”こんな小さい子が異世界から来たんだし、まとめ買いしてくれるんだから、少しは負けてあげないとだね。でも、その服を売るならうちで売ってもらわないと困るよ!”


 エクレアが紹介してくれただけあって、いい人そうだ。ただ、この服は絶対に欲しいそうだ。

 どうせ卒業したし、無くなって困るものでもないから、別にいいか。


「わかりました。売ります。今着替えますか?」

「いいのかい!奥の試着室を使っていいから、頼むよ。」

「はい。」


 用意してもらった、上下セットを持って、奥の試着室に入った。

 下着は売らなくていいよね?下着以外を着替えた。ベルトも用意されていたのでそれに変える。

 おばさんの見立て通り、サイズもバッチリあっていた。

 ポケットに入れていたハンカチと御守を、お金の入った袋に移し替えた。

 ハンカチとかタオルとかも、持ってた方がいいのかな?

 試着室から出て、おばさんに話しかける。


「あの、洗ってないんですが、このままでいいんですか?」

「大丈夫だよ。任せておいて!」


 洗ってないのが気になるが、そのままでいいというので、そのまま脱いだ制服を渡す。

 靴が用意されているから、たぶん、靴も欲しいんだろう。ローファーでは、戦ったりするのは難しいだろうから、これも売ってしまっていいか。3年間履き潰したボロだけど、いいんだよね?

 靴も履き替えて渡し、先ほど持って行き損ねたローブを羽織った。

 よし。これで俺も、この街の住人のようだ。大多数に紛れると安心するよね。

 

「あと、ハンカチとかタオルとか用意しなくて大丈夫ですか?」

「そうだね。それも、用意するね。鑑定するから、ちょっと待っておくれ。」

「あ、はい。」


 真剣な表情で、脱いだ制服をひっくり返したりしながら確認されると、少し恥ずかしい。大丈夫だよな?いくらくらいになるんだろう。


”ちょっと変わった材質だけど、こんなデザインは他にあったかもしれない。金貨1枚くらい?それくらいが妥当だね。” 

「これを金貨1枚分で買い取らせてもらうよ。その服と差し引きして、銀貨6枚払えばいいかい?」


 金貨1枚-銀貨4枚=銀貨6枚という事は、銀貨10枚が金貨1枚の価値のようだ。銅貨も同じかな?


「それでお願いします。」

「はいよ。布はおまけするよ。」


 おばさんからお金を受け取り、用意してくれた服の上に手ぬぐいのような布が数枚足された。


「え、ありがとうございます!」

「これからも、ご贔屓に!」


 今持っているハンカチはタオルハンカチなんだが、もしかすると、これも高く売れたりして?とりあえず、それはお金に困った時でいいか。

 豪快に笑うおばさんに笑顔を返し、鞄を肩に掛けて服類を仕舞った。

 5倍拡張だったか。全部入った。すごく便利だ。


「次に行くぞ。」

”やっぱり、金貨1枚分だったか。見立て通りだ。それだけ金を持ってれば、多少放置しても問題ないな。”

「お願いします!」


 フローライトに付いて、店を出る。

 また見捨てようとする!でも裏を返せば、この位のお金があれば、しばらくは何とかやっていけるってことだろう。服の見立てが出来たように、フローライトの金銭感覚は、信用していいかもしれない。

 しばらくあれば、親切な人を見つれられるかもしれない。

 街中だし地図もあるし、もう見捨てられても、怖くないからな!

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