表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
42/43

さとりくんは、帰る

 食べ終わった後の食器をタルトさんにお礼と共に返し、戸締りをしたらダンジョンに転移だ。


「転移するけど、クルとオオカミは留守番なの。」


 オペラの言葉に、一緒に行く気だった来と大上がショックを受けている。


 俺も驚いたけど、その後の大上が「きゅーん」と可愛い声を出しながらオペラにすり寄っているのは、あざとすぎると思うんだ……。このフワモフわんこめ、撫でまわしてやりたい。


 それを見た来も真似をしようとしているので、そっちを捕まえてぷにぷよしまくる。

 いい弾力だけど、出会った時の従魔の証であるリボンが体内に沈んだような不安感はない。もしかすると、この気持ちのいい触り心地がスライムの進化という事かもしれない。もっと強くなると、さらに触り心地が良くなったり? スライム、侮れないね……!


「節約なの。だから、ここに居て欲しいの。」


 厳しい表情を作って大上に伝えるオペラだけど、存分に大上をもふっている姿からは厳しさは感じない。


「ダメなの。そう、オオカミとクルはここでユウキの拠点の見張りをお願い。見張り、大事でしょ?」


 大事かな?

 もう夕飯の後だから誰も来ないと思うし、タルトさんとかが来たとしても寝ていて気付かなかったことにすればいい。

 もし危害を加えようとする人間なら、俺がスライムとウルフを従魔にしていて魔法もそこそこ使えるのを知っていて侵入する可能性が高い。その場合は、来と大上の方が危険な気がする。


”見張り? 大事! まかせてー!”

”麻痺毒!(まかせてー!)”


 ワンと一声鳴いた大上も、自信有り気に体を揺らした来も、留守番じゃなくて見張り任務ならいいらしい。むしろ、頼られたことが嬉しそうだ。

 逆に心配になるけど、侵入者なんてそうそう居ないだろうし、危険になったら覚能力で察知してオペラに頼んで戻ってくればいいね。

 

「何かあったら知らせてくれればいいの。よろしくね。」


 来と大上の反応に反応に対し、満足そうに笑ってオペラは言った。

 

 これでやっと移動かと思ったら、さっとオペラに手を握られて、瞬きした時にはダンジョンだった。




 ……瞬きしたら、ダンジョンだった!

 

 てっきり、石で転移するのかと思ったら手を繋いですぐの転移だったららしい。

 そして、抱き上げてぷにぷよしていた来が居ない。……きっと床に落ちていると思うけど、多少の打撃は効かないみたいだから、気にしなくていいんだよね……?


 位置的な状況の急変に少し戸惑っていると、手を引かれた。


 転移のために繋がれた手を強く握り直される。

 離れる、指を絡めて繋ぎ直される。

 また、強く握られる。


 ……そういえば、今って完全に二人きり……?


 思えば、来と大上抜きでオペラと二人きりになったことは無い。


 ドキドキしながら、恐る恐る繋いだ手を握り返した。

 

 俺を見つめていたオペラが、少し微笑んだ。


「ねぇ、聞いて。」

「なに?」


 オペラは聞いてと言ったのに、”こういう事って口に出すものじゃないと思うけど、言った方がいいよね……”と、言いずらそうに口を閉じてしまった。

 照れているようで、頬が赤くなっている。

 突然やってきた甘い雰囲気にドキドキする。


 これは、期待していいのかな……?


 正直なところ、今までの流れからして恋愛要素的な期待は半々だ。

 だって、実はエネルギー不足が深刻だからずごく頑張って……とか、言い出しそうだよね?

 今までの俺のドキドキを嘲笑うかのような反応の数々……そう身構えてしまうのも仕方ないよね?


 俺の方が緊張しながら、オペラの言葉を待つ。



「…………ユウキの準備が出来たら、ちゃんと、混ざろう……?」


 まさか。

 まさか、こんな風に言ってくれるなんて。


「私は、いつでもいいし、いつになってもいいから……焦らないでいいから……。」


 言い終わったようで、恥ずかし気にミルクチョコレートの瞳を伏せてしまった。

 それでも、ダークチョコレート色の髪の間から見えた耳も真っ赤になっているのが分かる。


 オペラが顔を伏せてくれて良かった。

 今、俺の顔もすごいことになってるよ。気休めのように片手で口元を覆ったけど、隠せている気がしない。


 だって、ま、まざろう……って!!!

 そんな風に言われて、嬉しくないはずが無い。


 普通にエッチなことをしようと言われるより、破壊力がスゴイ。

 混ざるという響きのイメージは、そんなものよりも俺とオペラの今後期待させるもので……俺の血を沸騰させるのには十分すぎた。


 まざるんだよね……!!


 溶けあって、混ざって、一つになる。

 快感を、愉悦を、こんなにも感じさせる声に、昨日からの寝不足だった眠気はどこかに行った。


「……ありがとう。すごく嬉しい。」


 やっと答えられた返事は、声がかすれてしまって恥ずかしい。

 もうこれ以上顔を赤くなんて出来ないよ……?

 照れ隠しに、声を張り上げる。


「えっと……そう、力を入れるの頑張るよ! すごく頑張る!」


 いつでもいいなら、すぐにでも。……なんて、出来ないんだよね。


「だから、待ってて。」


 目を伏せていたオペラは頷いた後、上目遣いで俺を見ながらはにかんだ。

 ”分かってる。いつまででも待つの。”という声に安心した。


 俺って、まだ15歳なんだよね。中学卒業で、次は高校生。

 律儀にR18解禁まで待ちたいとは思わないけど、まだ早いよね。……そうだよね?




 初めてなんだ。人を好きになったのが。

 他人ひとに嫌われないように思ってきたけど、好かれたいと思ったのは初めてだ。

 普通にしていたかったのに、ここまで誰かの関心を欲したのは初めてだ。

 相手も、同じように想ってくれているのが嬉しい。

 

 好みだなんだと言っても、実際に好きになったのがオペラで良かった。

 だって、こんな()()はどこにも居ない。







 繋いだ手を離して、輝石に覚能力を詰める作業をした。

 手は離れたけど、近くに感じる彼女の気配に俺の心臓はずっと早鐘を打っていた。


 コア周辺の群生する輝石の7割ほどが黒くなるころには日付が変わってしばらく経っていた。一度部屋に戻って仮眠してから、いつものように来と大上を連れてダンジョンに行き、石の全ての色が黒く変わったのは夕方だった。


「ありがとう。これでしばらく大丈夫なの。」


 すでに既に魔力を遮る布を使った袋はオペラに渡していて、オペラの方も俺を元の世界に戻すための準備を整えてくれていた。


「大丈夫ならいいんだけどね。」


 入れた覚能力がどれだけの期間持つのか、元の世界との時差がどれくらいか。

 そんな不安を置いておいても、なかなか不安な眺めだ。


 なんという事でしょう。

 あの、パステカラーに輝く輝石と、その中心で鮮やかな赤い立方体の輝石が浮遊する神秘的な空間。

 それが、周囲の輝石を黒に塗りつぶされ、その光景は一変。

 周囲の色変えただけで中心のコアすら血の赤を想像させるような、ダンジョンマスターの居るダンジョン最終層として想像できる不気味な雰囲気を放つ空間になったのです!!!


 ……土下座したい。これは、酷すぎる。


「大丈夫なの。」


 それでも、オペラが気にしてない様子なのが救いかな?


「来と大上の面倒も頼むね。」


 もちろん。というように、彼女は頷く。


「来も大上も、ちゃんとオペラのいう事聞いて……オペラを守って。」


 可愛い従魔達も、やる気を見せている。


”マスター、守る!”

”麻痺毒!(がんばる!)”


 ギルドには一応いつか帰る事を言ったし、不本意ながらフローライトにも言った。タルトさんには今朝出る時に今日帰れるか試すことを伝えてある。


 他にすることと言えば……行って来ますのキスとか?


 ……なんてね。昨日から浮かれている俺は、そんな些細な接触の有無に左右されないほどの上機嫌だ。

 彼女との大事な話は、昨日の内に終えている。

 

 簡単な挨拶を済ませて笑えば、オペラも俺を見つめて表情を緩めて両手の物を差し出す。

 ピンク色の玉と、帰り用の玉を黒い布袋に入れた物。


「行って来ます。」


 そう言って、先に布に入った玉を受け取って無くさないようにしっかり持つ。


「行ってらっしゃい。」


 俺がオペラの手の下に差し出した片手。

 手の上に乗せられるピンクの玉。




 ―――その重さを感じた時、目の前あった姿は無くなり、代わりに見覚えのある参道に居た。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ