表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
40/43

さとりくんは、支度をする

 俺が元の世界に帰るためには、オペラの作る石が必要で、その石にはオペラの持つ転移スキルを入れてもらう必要がある。それらは、ほとんど用意できている状態だ。

 残りは、その石に触るとすぐに転移することになるため、地球から此処に行く方の石を入れるための魔力を遮る布を用意するだけだ。


 どうにかして魔力を遮る布を入手したいのだが、どんな物なのかと言われると、門番が付けていた黒い手袋しか見たことが無い。

 もちろん、どこで売っているかも分からない。


 ならばどうするかと言えば、ここで便利な覚能力を使う……のではなく、普通に門番さんに聞いた。


 当たり前だ。

 確かに覚能力は便利だけど、思っている事しか分からないから、普通に聞くのが早いに決まっている。

 エクレアさんからもらった地図を出して教えてもらえば、アミュレットを売っている店で売られているらしい。




 さっそく店に行った。

 このお店には2度目の入店だ。この前と変わらず加工された石をあしらったアクセサリーが多く、雰囲気としては、ほぼ雑貨屋。

 ほぼ、とつくのはアミュレットも触れると発動するのか棚の前に柵が有ったり、ガラス張りの棚に入っていたり、直接触れないようになっているからだ。ジュエリーショップと雑貨屋を混ぜた感じかもしれない。


 そして、黒い布は見当たらない。

 頼みの店主は、他の客の応対中だ。

 手があくまで、商品を見ながら待つことにする。


 ……アクセサリー、オペラにあげたら喜ぶだろうか。

 ネックレス、ブレスレット、指輪、髪飾り。そういった装飾品の他に、ベルト、短剣、ぬいぐるみにストラップもある。

 効果としても、防御力上昇や攻撃力上昇というものから、恋愛運があがるかも、と書かれているものもある。

 どれが良いか迷うけど、アミュレットは持ってないから、どのくらいの効果があるのか分からない。


 真剣に商品を見ていた。真剣に見えるように見ていた。

 もっと言えば、声を掛けるなって表情をしていたつもりだった。


「何か探しているのか?」

”こんな所で合うとは。アミュレットについては説明してなかったか? 面倒だが、声を掛けた方がいいか。”


 面倒なら声を掛けなくていいのに!!

 ……そんな態度は表に出せないけど。


 ちょっと驚いたように振り返ると、そこに居たのは薄緑の髪と目をしたイケメン。もとい、フローライト。

 声を掛けるなって表情を作ってたつもりだったんだけどな……相性が悪すぎるよね。このタイミングで保護者という説明役の役割を思い出さなくてもいいのに。勧誘とかの面倒なのはそのまま流したくせに。


「何か探してるんじゃないのか?」

”なんで黙ってるんだ? 急に声を掛けたからか?”


 いけない。

 心の中で文句を言っていたら、つい無言になっていた。


「探してるよ。こんな時間にフローライトが居たから、驚いたんだ。」


「……そういう事もある。」

”あの鏡、ヤバすぎるだろ……。”


「そうなんだ。」


 俺は笑う。

 今日の獲物の中にフローライトが居た。いつもなら日の落ちるギリギリまで探索するのに、怖がらせられて心を折られたフローライトはそのまま帰っていたようだ。

 私怨だと言われても、見つけたからにはヤらないと気が済まなかった。後悔はしていない。


「アミュレットを探してるんじゃないのか? 説明した方が良いか?」

”アミュレットの精神力上昇で、鏡の効果を減らせるか? いくら位の物にしようか。”


 フローライトは精神力上昇のアミュレットを買いに来たらしい。

 このお金好きに散財の苦渋をなめさせるとは、いい仕事をする鏡だ。鏡っていうか、俺だけど。


「特に困ってないから、アミュレットは要らないかな。」


 俺が笑えば、フローライトの顔が引きつった。面白い。


”異世界人の体質か。うらやましい……。”

「なら、見に来ただけか?」


 フローライトの苦い表情に気が晴れたから、今日はここまでにしてあげようかな。

 店主はまだ手が空かないみたいだし、折角だからフローライトに聞くことにする。


「魔力を遮る布を見に来たんだ。値段が高いとか聞いたけど、とりえあず見てみて、買えそうなら買ってもいいかなぁって。」

「布を? ダンジョンで使うのか?」

”まさか、俺から帰還の石を買いたいのか? 石と布と金を用意すれば売っているが弱い奴には売れない。誰か教えたのか? ……教える訳が無いか。転移の罠にかかって従魔と離れるのを避けただけだろう。弱いから。”


 まさかのフローライトからスキル入りの石を買う方法が分かった。今更だし、オペラが居るから必要無かったけど。

 それにしても、どうしてこう俺を弱いって連呼するんだろう。イラッとするから、鏡から抜け出したような自分そっくりなドッペルゲンガーと居合わせて恐怖すればいいと思う。

 そのための布も必要だったね。


「そうなんだ。ここで売ってるって聞いたんだけど、見当たらなくて。」

「見える所には置いて無いからな。」


 納得したように頷いたフローライトは、柵が前に置かれている棚に、柵の間から入って辿り着く。そして引き出しになっている所を開けて、俺に声を掛ける。


「どうした? ここにあるんだが。」

「ちょっ……え!? 勝手に入って空けていいんだ!?」


 驚愕する。

 いくら腰元くらいまでの高さしか無い簡易の衝立のような柵だとしても、そんなことしていいのだろうか。


 ……いいのか。


 フローライトには俺の驚きが分からないようだし、店主もこちらをチラリとこちらを見たものの、商品を見る客以外の感情を向けてこなかった。ここでは常識だったらしい。


「問題ない。ここに布が有るから、それで越しで製品を確認して選ぶことが出来る。ただ、直接触るとアミュレットの魔法が発動するからそのまま買う必要がある。」

「そうなんだ。」

「アミュレットをその場にいない誰かに贈る場合には、布が必要になるから合わせてここでサイズを選ぶことも出来る。物によっては、アミュレットより布の方が高くなるから本人を連れてくる場合が多い。」


 そういう事らしい。

 大丈夫らしいので、柵と柵の間を抜けてフローライトの開けた引き出しを覗く。


 普通の布と見分けはつかないけど、とりあえず黒い布。

 種類はそれほどない。枚数も1枚ずつだ。


 5㎝角の指輪なんかが入りそうな小サイズ袋。銀貨1枚。

 10cm角の中サイズの袋。銀貨5枚。

 15cm角の大サイズの袋。銀貨10枚。

 手袋(片手)。銀貨18枚。


 ……高いっ!!!


 鉄貨が100円だとすると、銅貨が千円で、銀貨が一万円。手袋(片手)が18万!?

 一見安く見える銀貨1枚の袋だけど、アミュレットの値段は物にもよるけど、一番安ければ銅貨2枚~だかから……この布、高い!


「先に言っておくが、転移の罠が入った魔石を売りに出すと、1個に付き銅貨5枚分の手数料が引かれる。だから拾った石は、先に低品質の魔石で確認した方が良い。」


 スライムの魔石は買取価格が鉄貨3枚だから、その方が安いってことだね。節約の知恵だ。流石、お金好き。

 

「そうなんだ。」


 返事がおざなりになる。

 オペラが作ってくれた手のひらサイズの玉はどれくらいだっただろうか。片手に乗る手のひらサイズ……15cm角で入るか?

 どうだろう。ギリギリ入る気がする。大丈夫だと思いたい。


 大サイズと小サイズの袋を手に取る。小サイズの袋はオペラに渡して、ダンジョンで活用してもらおうと思う。


「2枚も買うのか?」

「出来れば、小さいのはもう少し欲しいかも? 大は小を兼ねるって言うから1枚持っておいて……小さいのは、従魔達に持たせて何か出来ないかと思って。」

「……そうか。」

”従魔に持たせるのか? 何をさせるつもりだ? ……何か出来ないかってことは何も考えてないか。この前の報酬の金貨と補助金も残っているだろうから、懐が緩んだな? その辺りは、経験で学ぶだろうし放置でいいか。口出しするのも面倒だ。”


 何をさせるつもりだ? って言ったのにはヒヤッとしたけど、結局俺が懐の緩みで買い物に失敗したことで納得したようだ。

 そして、失敗してると思ったのに面倒だから教えない保護者という説明役……口出しされても言い訳が面倒だし、今回はちょうど良かったと思うことにする。


 店主の手もやっと空いたようなので、その2枚を持ってお会計だ。

 小さい袋は言ったら追加で出してくれた。従魔の分って言っちゃったから、枚数は2枚。用途が決まっていないことになっているのに、いっぱい買うと怪しまれそうでこれ以上買えなかった。残念。


 金貨1枚と銀貨2枚で支払って、店を出る前に自分用のアミュレットを選んでいるフローライトに声を掛ける。


「フローライト、教えてくれてありがとう。」

「気にするな。」


 一応保護者なので、思い出したかのように言っておく。


「たぶん、俺は近いうちに元の世界に帰ると思うから、居なくなっても気にしないでね。」

「……は?」


 ポカンとした顔が面白かった。

 固まったフローライトをそのままに、片手を上げてそのまま店を出た。


”……帰る? 異世界人だから、異世界に帰るのか? 居なくなる? ダンジョンから戻ってこない? ………………急に居なくなるヤツと組まずに済んで良かった。”


 急に声を掛けた直後の混乱による静止は、俺が店を出た後に溶けたようだ。


 疑問、理解、不安、恐怖、そして自己肯定。

 一瞬で吹き荒れた感情は、あまり心地いいものではなかった。自己肯定で塗り固められたような意識の内側が見えた気がした。


 ダンジョンの情報を持ってくるだけで金貨1枚(約10万円)が出る世界だ。いろいろあるんだろう。


 少しだけ、ついでのように別れを告げたことに後悔しかけたけど、相手はフローライトなので気にしないことにする。

 その代り、タルトさんにはしっかり挨拶していくことを決めた。

 お世話になってる度が全然違うからね。



玉のサイズは、直径8~9cmを想定しています。

15cm角で入るつもりですが、計算の仕方に自信が無いのと、口の縛り方で入らないかもしれません。

頑張って計算しようとしましたが、よく分からないので、玉のサイズはふんわりと手のひらサイズのままで行きます。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ