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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
4/43

さとりくんは、冒険者

 気を取り直して。ギルドの受付嬢は、エルフな美人だった。

 エクレアって名前だって。お菓子みたいで、美味しそうで可愛い名前だね。


「まず、こちらの身分証に登録します。文字は大丈夫でしょうか?」

「あ、俺は里山優紀さとやま ゆうきです。文字は…ええと…。」


 文字か。文字を探して、周りを見回すが、横から肩を叩かれた。


「今更だけど、俺はフローライトだ。読めるか?」


 おお。フローライトが、身分証を見せてくれた。


__________

所有者:フローライト

名前:フローライト

職業:冒険者

ランク:D

備考:活動拠点フィフ

__________


 読める。日本語なのか?それとも、翻訳がかかっているのだろうか。

 ともかく、言葉も文字も通じるのは、ありがたい。


「ありがとうございます。文字は読めました。」

「それは良かったです。では、こちらの紙に記入してください。所有者欄がフルネームで、名前欄が呼ばれるときの名前になります。偽名でもいいですが、基本的に後から変えられないので注意してください。」

「わかりました。」


 エクレアから、紙とペンを受け取った。これに、記入するらしい。

 その間に、フローライトとエクレアで俺を拾った時の状況を話している。

 ……うんーと、この紙に名前を書くんだよな?

 説明された名前の他に年齢と、スキルを書く欄もあるんだけど、スキルはどうすればいいんだろう。

 それに、異世界人であるとか、冒険者になるとか…冒険者として活動するとか、登録した街で1年以上活動するとか…なんだか、契約書みたいな文言が入っているんだけど。これ、名前を書いて大丈夫なやつ?


 話に区切りがついたのか、俺の表情が困っていたのか、エクレアが声をかけてくれた。

「どうかしましたか?」

”大丈夫ですよ。保護者のフローライトさんを取ったりしませんから、そんな不安そうな顔しないでくださいね。”


 ああー!! 聞こえない!聞こえない! 聞き間違い!!

 フローライトさん顔はイケメンだから、エクレアさんも一押しとかって思ってるんだよな!押しキャラとかアイドルとかの扱いだから、誰かのものになったりしないという事だろう。

 もちろん、俺はフローライトなんか要らないから、安心して!


「ええと、あの、冒険者になるって書いてありますが、冒険者って何ですか?」

「魔物を狩ったり、ダンジョンで探索したりして、生計を立てる職業です。申告から1年後か、適性が無ければすぐに辞められるので安心してください。

 サトヤマユウキさんは、異世界人なので、一番初めの登録は保護者と同じ職業になるんです。数日、フローライトさんがこの街のことを教えてくれると思うので、一緒に活動してくださいね。

 もちろん、私も協力しますので、なんでも聞いてください!」

”右も左も分からない異世界で、手取り足取り教えてくれる保護者と深まる愛…!素敵!”


 つまり、異世界人と保護者は仲良くなる場合が多くて、保護者という事だから、家族愛のようなものが芽生えることがあるってことだよね?そうだよね?……そうだと言って!


「そうなんですね。でも、数日も拘束したら悪いじゃないですか?」

「そのために保護者の人には報奨金が出るんですよ。もちろん、異世界人の方にも補助金が出るので安心してください。」

「そうだ。2.3日くらい気にするな。」

”2.3日の子守で、金貨2枚だなんて、異世界人は儲かるな。”

「そ、そうですか。お世話になります。」


 報奨金は金貨2枚だったようです。儲かるって! 大丈夫なの?この人!

 フローライトは優し気な微笑みを浮かべているけど、お金のことしか考えて無いじゃん!心から優しい人とチェンジしてほしい……。


「フローライトさんもそう言ってますし、気にせず甘えてくださいね。」

”フローライトさんの笑顔!フローライトさんが誰かに優しくするなんて珍しい!…フローライトさんの手間をかけることのに恐縮するサトヤマユウキくん、可愛い。これが、健気受けね…!甘えて!フローライトさんに思いっきり甘える所を、私に見せてぇぇ!!”


 ……温度差!!この温度差、つらい!


「ありがとうございます。でも俺、本当によく分からないんですけど、なんで異世界人だとお金が出るんですか?あと、俺は元の世界に帰れるんですか?」

「補助金と報奨金ですか?異世界人の方には変わったスキルや、この世界にない知識があるので、それを歓迎しているんです。その書類にもあるように、1年はこの街で活動していただき、出来れば、街の発展に貢献していただくためです。ですので、もし、街を出る場合には必ず連絡をください。

 元の世界に帰れるかどうかは、その異世界人の方によるのでわかりませんが、帰れる人もいますし、帰れない人もいるようです。1年を前に元の世界に戻れるようなら、戻ってもらっていいですが、またこちらの世界にいらっしゃるようなら、累計で残りの期間をこの街で過ごしてもらうことになります。」


 変わったスキルね。さとり能力は変わったスキルなのだろうか。

 もし、俺のスキルが読心系の能力だけなら、どうやって帰ればいいのか分からない。

 縁結びの御守りに、家族に会いたいと願ったら帰れるだろうか?そうなると、御守もスキルの一部みたいな?よく分からない。


「そうですか…。あの、スキルっていうのがよく分からないんですが、役に立つ能力じゃなかったらどうなるんでしょうか。」

「街の役に立たなくても、大丈夫ですよ。異世界人の方にもパッとしない方もいるようですし、この1年の契約は利益の出す人を囲うための契約ということですので。

 だいたいの方は、保護者と居る数日の間に能力が分かってくるようなので、スキルが分かったら教えてくださいね。冒険者向きじゃない生産系などのスキルの場合もありますが、その時は能力に合ったギルドに転職できるようにします。」


 パッとしない能力の異世界人なら、拘束もされなさそうだな。目立たない異世界人を目指してみようかな?


「はい。何のスキルか、考えてみます。あの、いいスキルがあるなら、あんまりよくないスキルっていうのも有るんですか?」

「そうですね…良くないスキルというものは無いですが、嫌われやすいスキルは有ります。昔の異世界人の方に、触った物の過去を読み取るスキルが有ったようですが、嫌煙されたようですね。あと、珍しいスキルですが、ウソを見抜くスキルを持っている人を苦手とする人もいるようです。

 ですので、プライベートを覗くようなスキルだと、避けられやすいかもしれません。あとは、これも珍しいスキルですけど、魅了とかの精神系のスキルも避けられやすいですね。」


 ……心を読むって、プライベート覗きまくりじゃないか?心当たりが、ありまくり。


「そんなスキルがあるんですか?もし、俺にそんなスキルが発現したらどうすればいいんでしょうか?」

「本当に珍しいので大丈夫だと思いますが、その場合は私にこっそり教えていただければ、身分証に登録はしますが、表示されないように設定しますね。私達受付担当には、守秘義務があるので安心してください。」

”たとえば、魅了のスキルとか……それで、フローライトさんを魅了しちゃう?そんなことしなくても、きっとフローライトさんと深い仲になれると思うから、安心してね!むしろ、サポートするから!”


 守秘義務ね。そう言っている端から、サポートするとか思ってるけど、大丈夫?不要なサポートはお断りなんだけど。エクレアさん、分かってる?

 別方向にも不安過ぎて、どちらにしろ報告したくないな…。


「ありがとうございます。そう言ってもらえると、嬉しいです。でも、身分証に表示って…スキルも表示されるんですか?」

 フローライトの身分証には、スキルが見当たらなかったけど。


「はい。身分証の裏に、スキル欄があります。基本的には表面の確認だけですが、パーティーを組むときには裏面の確認をすることもあります。

 先ほど言ったように、虚偽のスキルは身分証に載せられませんが、理由によってはギルドなど施設以外では見られないように表示を隠すことも出来るので、何かあったら相談ください。」

「わかりました。」


 裏面ね。なんだ、フローライトにスキルが無いのかと思った。

 あの青い狼を、スパン と切り伏せていたから、剣技とか腕力とかのスキルがあったりするのかな?

 ともかく、とりあえず聞きたいことは聞けたので、書類に記入して提出した。もちろん、スキルは空欄だ。

 

 受け取ったエクレアが、何かの処理をして、身分証を返してくれた。


___________

所有者:サトヤマユウキ

名前:ユウキ

職業:冒険者

ランク:E

備考:異世界人

   活動拠点フィフ(1年固定)

___________


 漢字で書いたつもりの名前が、カタカナになってる。やっぱり、翻訳がされているんだろうか?不思議だ。

 スキルが入るという裏面を見るが、そちらは変わらず、意味のなさそうな線が模様になっている。


「登録できました。ユウキさんですね。あと補助金が、金貨1枚と銀貨9枚と銅貨10枚です。それと私から、この街の冒険者にお勧めの、宿屋や買い物出来る場所を書いた地図です。良ければ使ってください。」

「え、いいんですか?助かります!ありがとうございます。」


「説明する手間が省けるな。助かる。」

”その地図があるなら、説明を省ける。面倒だし、今日は宿屋に放り込んで良しにしようか?”

「いえいえ、お二人に喜んでいただけて良かったです。」

”少しでも、二人の時間を作った方がいいよね?説明する分の時間で仲を深めて、夜には…ぐふふ…。”


 温度差、つらい! そこの腐女子、生々しい妄想やめて!!この地図を素直に喜べなくなる!

 ……認めよう。異世界であるこの世界にも、腐女子がいることを。実際、今、目の前に居るんだから…。

 にこやかな笑顔の二人を前に、皮袋に入った補助金と地図を受け取った俺は、乾いた笑い声を漏らすばかりだった。


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