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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
27/43

さとりくんは、妖怪ごっこする

 思い出すそれは、母に父を選んだ理由を聞いた後の事だった。

 母が出掛けた隙を見て、父に聞いた。


____

「父さん、父さんはどうして母さんと結婚したんだ?」

「なんだ? 優紀も母さんと結婚したいのか? 母さんは父さんのだからダメだぞ?」


 見当はずれの回答に、冷めた視線を父に送る。

 まあ、この回答だけで父が母を好きなのは分かるけど。


「ははは。もうそう言う年齢じゃないよな? 母さんの良いところなんていっぱいあるだろう? 小さくて可愛いし、心を読んでるんじゃないかってくらい気が利いて優しい。いいだろう?」

「……そうだね。」


 本当に心を読んでるんだけど。

 それも気に入っているなら、二人の相性はいいんだろう。

 僕から聞いておいて言うのもあれだけど、両親の惚気を聞かされるのはつらい。


「優紀もあの神社に通っているんだったな。縁結びの御守は効果あるぞ? 御守りを買って神社を出たらすぐに母さんと出会ったんだ。これも縁だと思って声をかけたのが始まりなんだ。」

「父さんがナンパしたってこと?」

「そういう事だな。それからすぐに付き合うようになって、あれだけ可愛いから当たり前だが、かなりモテているのを知って、縁結びの効果を痛感したよ。アレが無ければ付き合えて無かったかもしれないな。」

「へぇー。」


 俺はやる気ない返事を返した。

 平凡を絵に描いたような見た目の父だ。本当に母がモテていたなら、選ばれた事に特別さを感じたのかもしれない。

 母の基準は、覚能力的に心の声のブレが少ない素直な人間性だから……縁結御守が無くても父と出会えば母は父を選んだんじゃないかな?


「疑っているだろ? 優紀もその時がくれば分かるさ。」

____



 その効果は、すごく実感している。

 何といっても異世界にまで飛ばされるほどだからね!

 俺と相性のいい腐女子じゃない彼女が地球に居ないってことにも驚くけどね!


 そんなことを考えながら石に入れるつもりで覚能力を使っているわけど……マズい気がする。

 砕けてはないんだけど。まだ、砕ける気配は無いんだけど。

 ……これって、マズいんじゃないかな?


 俺が触れている氷柱状の石は、淡い水色に光っていたはずだ。

 周りも白からピンクや水色やクリーム色といった可愛らしい色で光っている。

 ……それが、どうしたことか黒くなってるんだけど。

 ……やっぱり、俺のせいだよね?


「オペラ……ごめん。失敗したかも。なんか変になっちゃった。」

「変? どうしたの?」


 手元を覗き込むオペラの邪魔にならないように少し体を退ける。


「なんか黒いんだけど、手を離したら砕けたりしないかな? 大丈夫?」

「黒……大丈夫。ユウキの能力が黒ってことだと思う。こんなしっかりした色が出るなんてスゴイの。」


 黒。覚能力が黒いんだ。なんかイメージと違う。

 あえて色を付けるなら、もっと目立たないような埋没する色かと思った。色に意味なんて無いと思うけど。

 オペラの大丈夫という言葉を聞き、恐る恐る手を離す。

 黒く染まった水晶は、黒いまま。


「良かった。また砕けるのかと思ったよ。これでオペラも使える?」

「たぶん使えるはずなの。試してみてもいい?」

「いいよ。まず、聞こえるかの確認からでいいよね? そろそろ画面に冒険者が映るから、俺が昨日のようにやって見るよ。聞いててくれるかな?」

「分かったの。」


 画面のある周辺の声を聞くように、能力を詰めたからきっと聞こえるはず。

 同じ位置じゃなくて、同じ人間にしか反応しないなら困るけど。


 オペラが黒くなった石に手を置いていることを確認して、画面を見ると、先ほど心の声で近くに居る事に気付いた冒険者が映っていた。


”本当に鏡がある……なんか危ないらしいんだよな。その割に、あいつら怪我とかしてなかったけどな。ただの鏡じゃないのか?”


 危ないと知っていながら、好奇心から鏡を覗き込む。


”おーい。”

『 おーい。』

”うわ! 本当に声が聞こえるじゃないか! これが鏡の魔物か!?”

『 うわ! 本当に声が聞こえるじゃないか! これが鏡の魔物か!?』


 酷い。

 おーい、って声をかけてきたのはそっちなのに、返事をしたら魔物扱いとか……酷い奴だ。


”体も動かない! 聞いてた通り……。これ、どうやって帰ればいいんだ?”

『 体も動かない! 聞いてた通り……。これ、どうやって帰ればいいんだ?』

”まさか死ぬまで……? でも、あいつらは帰ってきたから……どうされるんだ…?”

『 まさか死ぬまで……? でも、あいつらは帰ってきたから……どうされるんだ…?』

”魔物に、何かを食われる…? この状態で…? まさか、今…?”

『 魔物に、何かを食われる…? この状態で…? まさか、今…?』


 生きながら正体不明の魔物に何かを食われる妄想をしたようだ。

 俺は魔物じゃないし、何も食わないけど。

 あ、ドーナッツ持ってきてたんだった。忘れないうちに出しておかないと。


”ここから離れたい…! 逃げられない…!”

『 ここから離れたい…! 逃げられない…!』

”俺は、今…食われて、る…!? 食われる…? なにを…!?”

『 俺は、今…食われて、る…!? 食われる…? なにを…!?』


 だから何も食べてないってば。

 この人、面白いね。

 食べられる! とか、怖い! とかを繰り返し続ける今回の冒険者は、逃がさないよ。


 好奇心は猫をも殺す。

 あえて何を食べたかと言うなら、意識、かな?


 ブツ切れになる思考は、やがて単語しか発しなくなり、最後には沈黙した。

 画面には虚ろな視線を鏡に向けたまま立ち尽くす姿が有った。


「処理落ちしたみたいだね。」

「処理落ち?」

「そう。処理しきれなくなって完全停止。続けるとこうなるみたいだね。」


 うちのパソコンもこうなる。次ページをクリックして処理中に再度クリックすると処理が遅れる。

 そしてさらに連打でクリックすると完全に動かくなる。さらに何かしようとすると、ブラウザが落ちたり突然再起動が掛かったりする。……うちのパソコンだけじゃないよね?

 やっぱり、人間もパソコンとおんなじようになるんだね。面白い。

 再起動にはどれくらいかかるんだろうか。この人はこのまま様子見しよう。


「そうなんだ。本当に繰り返してるだけでこうなるなんて、不思議なの。」

「聞こえた?」

「聞こえたの。難しくなさそう。」


 ……うん、難しくないけど……俺の利用価値が無くなってもフラれないよね?


「次は私が声をかけてみるの。」


 楽しそうに笑うオペラに、駄目だなんて言えない。

 その内、一緒に居なくてもいいって言われたらどうしようか。


「あ……薄くなってるの。消費が多いの?」


 ふとオペラの手元を見れば、真っ黒だった石が灰色になっていた。

 この感じなら、まだまだ必要とされそう。

 その間に、好感度上げを頑張る。


「……どうして嬉しいの? 私が次の冒険者で試せそうにないから?」

「え! そ、そんなことないよ?」

「ずるいの。昨日からすごく楽しそうなの。私もやりたい!」


 ぷくっと頬を膨らませて、唇を尖らせている。


 ……可愛い……! そのほっぺをつつきたい……。


 実際に楽しいけど、その感情を横で感じながら見ていたオペラは羨ましかったのだろう。

 ダンジョンのためになるというだけでなく、便利な能力を楽しく使える機会だ。


 彼女と一緒に、冒険者()遊ぶのも楽しいかも。


 全力で不機嫌をアピールしている彼女の目前に、揚げドーナッツの入った袋を振る。

 そちらに意識が向かい、膨らんだ頬がもとに戻る。


「また石に入れるよ。これはさっき買って来たんだ。一緒に食べながらやろう?」

「コレ、何? 甘い匂いがするの。」

「ドーナッツだよ。口を開けて?」


 一瞬きょとん、としたオペラに焦る。


 ……口を開けては無かったか。失敗した。

 と、思ったけど、オペラは疑いなく口を開いた。

 ……このコ、大丈夫なのかな……?


 ともかく、口を開けてくれたので、中にドーナッツを放り込んだ。


「ん、甘い。美味しいの。」


 甘味は女子受けがいいようだ。機嫌も治ったようだし、好感度も上がったかな?

 こういうスキンシップって、好感度上がったりしないかな?


 食べ終わったオペラは、俺を見つめて再度口を開く。

 え、コレ、ずっと俺が食べさせてあげるってこと?

 好感度上げにはいいかもしれないど……やっぱ無理。

 ……ずっと続けるのは、恥ずかしすぎる……。


 一つをオペラの口に放り込み、残りは袋ごと手元に押し付ける。


「ん、美味しい。これ、私にくれるの?」

「いいよ、好きにして。ほら、今から石に入れないといけないから手もふさがるし。俺は要らないよ。」


 横から物欲しそうな犬の鳴き声がするけど。

 ぷにぷよな生物もドーナッツが移ると同時にオペラに突進してるけど。


「わかったの。ありがとう。」


 ドーナッツと一緒にペットの面倒も押し付けたようになったけど、別にいいよね?

 理由にしたくらいだし、石に能力を詰めるのを頑張ろう。

 片手じゃなくて、両手にしたらもっと色が変わるのが早くなるのかな?

 

 手がふさがっているアピールで、両手で石に能力を詰めていく。

 ……あーんって……いいんだけど、結構照れる……。指が唇に当たりそうで、ドキドキした。


「ユウキ、口を開けて。」

「え?」


 その声の方向を向くと、え? の形に開いた口に何かを入れられた。

 何かっていうか、ドーナッツ。


「美味しい?」

「う、うん。ありがとう。」


 その返事には、笑い声が返ってきた。

 オペラは楽しそうに来や大上に一つづつ与えながら、自分も食べ、俺にも食べさせてきた。

 

 ……俺、ペットの扱いじゃないよね? 大丈夫だよね?

 手がふさがってるから、親切なのかな?

 俺に食べさせるもの楽しいというのは伝わって来るけど、緊張してるドキドキは感じないんだよね……。

 気に入られたのは分かるけど、ちゃんと恋愛的に彼氏だと思ってくれてるのか、謎。


 ドーナッツが無くなるまで、それは続いた。

 合間にやってきた冒険者は、石に入れた覚能力を使ってオペラが処理した。

 フォローも必要無いくらい、問題なかった。……ただ同じことを繰り返すだけだから当たり前だけど。


 オペラも、冒険者を混乱させていくこの遊びを楽しめたようで良かった。

 簡単な作業なんだけど、これがなかなか面白いんだよね。



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