さとりくんは、奮闘する
会話って、仲良くなる定番だよね。フローライトと仲良くなるために、何か話さないと。
この面倒くさがりが会話で攻略できるとも思えないけど、それ以外の方法はお金をあげるくらいしか考えられない。それは仲良しとは違うと思うから、やっぱり会話をするしかないよね。
会話の糸口を探してフローライトを見ると、しゃがみ込んで落ちていた透明な石を拾った。
……え、二人で調査するんだよね? 罠が有ったらハグレちゃうだろ? バカなの?
フローライトに心の声で”バカか?”と言われたのをやり返してやったけど、聞こえてないから意味がないね……。
しかも、口から出してバカって言うと険悪になりそうだから言えない。モヤモヤする。
立ち上がったフローライトは、無意識に石を拾っていたようだ。
ハッとしたように、心の声で言い訳を開始した。
”無意識で拾っていた……。いや、大丈夫だ。食料も渡してあるし、ハグレたらそこから別行動をする約束になっている。俺が拾わなくても、あいつがうっかり拾っていたかもしれない。そうなったら俺の儲けが減るじゃないか。大体にして、罠じゃなかったからセーフだ。
……やっぱり、アウトか? 次にあいつが拾って罠だったりすると面倒だから、謝って今回は気を付けるように言うしかなのか? 気が乗らないな”
素直に謝れよ! 気が乗らないってなんだそれ!?
___少し気まずそうに振り返ったフローライトに、俺はにっこりと笑いかける。
「迷わずに進んでるけど、下に降りる道って分かるんだ?」
話題を変えてあげる俺。
どうよ? 優しいよね? 俺のイラつきを隠したスマイルは完璧だよね? 仲良くなる気になった?
「いや……昨日下に降りる階段の有った場所に向かっている。時々場所が変わるが、変わっていない可能性も有るからな。」
”俺が石を拾ったことに何も思っていないのか? こいつ、本当にバカなのか?”
……ムカつくーー!! なんでこんなに裏目に出るんだろう! 相性が悪過ぎるんじゃないかな!?
「今、俺がうっかり石を拾ったが、罠が有ってハグレると大変だから次からは拾わないようにして行こう。いいな?」
”ちゃんと説明しないとマズいな。早く調査を終わらせて、別行動したい……”
俺もだよ!? ……ダメだ! 完全にバカ扱いされてる! この人との仲良くなるの無理!!
……無理じゃない。諦めたら終わりだ。
……あとは、そういえば、使えるスキルの持ち主なら利用したいとか言ってた気がする。そうだよね?
それなら、もし俺が威力の強い魔法が使えれば仲良くする気になるかもしれない。……そんな理由で仲良くされるのは不本意だけど。
とりあえず、オペラに進行方向について伝えておこうか。
『オペラー。今向かっている方向は、昨日階段の有った方向だって。その道に階段の設置をお願いできる?』
同時に、フローライトとも不自然にならないように会話を続ける。
魔法を使おうにも、先頭をゆくお金好きがスライムを狩っていくから、邪魔をするのは好感度は上がらないだろうな。それに、本当に魔法が強いかもわからないし……。
”今やってる。たぶんそうだと思って、そこから階段までに通る道に設置してるの。話しかけられると集中出来ないから、ちょっと待って。”
『え、ごめん。邪魔しちゃったね。』
”大丈夫。予想が有ってるのが分かって良かったの。ありがとう。”
オペラの返答に感動する。いい子だなぁ! 性格の良さがにじみ出ている! ……誰かと違って。
「そういえば、魔石は魔道具の電池みたいな感じで使ってるよね。その石はやっぱりアクセサリー? もしかして、アミュレットについてた石ってこれ?」
「そうだ。知らなかったのか? デンチは分からないが、魔石は魔力がこもったものだから魔道具に使える。輝石には、魔法やスキルが込めれられるが、石の質によって込められるものの威力が変わる。
さっき拾った水晶だと、低威力魔法1回くらいで、繰り返し使えるマッチ程度にしかならない。それ以上の質の物からアミュレットとして加工されることが多い。」
「そうなんだ。初めて聞いた。」
ということは、フローライトはここで拾った石にスキルと詰めて売ってるってことかな。
核心に迫ってきたので、続けてもう少し詳しく聞いてみる。
「それなら、俺の魔物支配のスキルを入れたてフローライトに渡したら、フローライトが来を操ったり、新しいスライムを支配できるってことだね?」
来の名前が出たからか、おとなしく俺に付いて来てた来も何事かと聞いてくる。
”毒る? 毒るる?(仲間? 仲間がふえるの?)”
『例えばの話だよ。フローライトが仲間とか……ないね。』
仲良くなろうと今は努力してるけど、終始一緒に居たらイラついてしょうがないよ。
「スキルを入れるにはかなり純度の高い石が必要だが、確かにそうしたら俺がそのスライムを操ることは出来る。新しく支配するのは出来ないだろうが。」
「え、なんで?」
ちょっと来と話してて、聞き間違えたかもしれない。
二重に会話するって大変だね。
俺のスキルを入れた石なのに、新しく支配出来ないとか……そこは百歩譲っても、出来ないだろうが? だろうがって、なんだよ。出来るのか、出来ないのか、はっきりしてよ。
「何でって、ユウキのスキルだろう? ユウキが対象を指定して操るスキルを石に込めれば、それを持つ他の人間もその対象を操ることを出来る。ただ、その対象は固定されているだろう? 他人が見つけたユウキの見知らぬスライムを支配出来ないはずだ。
……ただ、それは俺が知っている範囲の輝石の事だから、最上位の輝石ならそれが可能かもしれない。最上位の輝石というのはダンジョンコアだが、コアを傷つけるとダンジョンは死んでしまう。定期的な発掘場として使われているこのダンジョンのコアは、傷つけることは禁止されているから、ここで試すなよ? もっとも、ここのダンジョンコアは一度も発見されたことは無いらしいが。」
___温和な笑みを浮かべた俺の表情が凍った。
え、マジで? ほんとに? そんな感じなんだ?
……つまり、フローライトが行ったことのない場所に行くことができないから、フローライトがスキルを詰めた石を使っても、俺の元の世界には帰れない。仲良くなって買えても、意味がない。
……そして、意味があるようにするには、どこかのダンジョンを潰してダンジョンコアを取ってこないといけなくて……それでも本当にできるかどうかは分からないと。
嘘だ。帰宅が遠のいた……。
”設置終わったの。ユウキ聞いてる? ……悲しい? なんで? 大丈夫?”
心配そうな声が聞こえた。
姿は見えないけれど、優しいミルクチョコレートの目が見えるようだった。
『大丈夫。 ちょっと、帰宅が遠のいちゃったんだよね。』
”そうなの。…(あの人間の力では帰れないって事?)…私が力を貸すの。試してみよう?”
試す? 最上位の輝石って、ダンジョンコアだよね? それってオペラの……?
それはダメだ! そこまで急いでないし、そんなことさせられない!!
……っていうか、試そうって言うからには、そんな身を削る方法じゃないハズ。
『た、試すってどういうことかな?』
”私は、輝石を作るスキルと転移のスキルがあるでしょ。出来るだけ最上の石を作って、それに込めたスキルをユウキが使えるかどうかなの。”
『な、なるほど……。』
すっかり忘れていたけど、オペラも転移スキルあるじゃん!
しかも、輝石を作れるとか……オペラだけで十分だった……。俺の努力、無駄だったみたい。
それもこれも、紛らわしいスキルを持っていて、タイミングよく俺がここに来た時に居たあいつが悪い。
しかも、オペラの作った石に転移スキルを詰めるだけの物を売っていたという、オペラの劣化版な売り物の実態が分かれば、こんな心労は無かった。
……別にもう、仲良くする必要ないよね? そうだよね?
「おい、どうかしたか?」
”突然動きを止めたが、どうかしたのか? どこかに鏡があるのか?”
両方の声が心配そうな色を帯びていた。
今更その程度で俺の好感度は上がらないよ?
俺は、困ったような曖昧な笑みを浮かべて返事をする。
「大丈夫。ちょっと混乱したんだ。」
「そうか。」
”混乱? 今の話のどこに混乱するんだ? 異世界人だから何か通じない単語が入ったのかもしれないな。聞き返されないからそのままでいいか”
怪しまれずに、自己解決してくれたようだ。
俺は人間の振りをしないといけないから、人並みの愛想は振りまくさ。
『オペラ、鏡の位置はそろそろ? 俺の帰る役に立たないみたいだし、別に殺しちゃってもいいけど、どうしようか?』
なんかダンジョンの害になるようだし、別に要らないよね? 居ない方が、いい方向に収まるんじゃないかな?
”どうして? 今は殺す必要はないでしょ? ユウキが解決策を出してくれたから、これからもその人間からエネルギーの回収が出来なくて石の回収ばかりされるなら殺すことも考えるけど、それまでは殺さないの。約束でしょ?”
出来るだけ人を殺さない約束。
そうだった。
もう十分人間を害してるから、別に関係ないとか思ったけど、約束は大事だ。
フローライトの事をあまり良くは思っていないけど、殺したいほどの悪感情が有るわけじゃない。
……殺してもいいなんて言い方は、おかしいよね?
……突然黒歴史な俺が顔を出した事のあまりの恥ずかしさに、頭を地面に打ち付てあわよくば埋まりたい気分だ。
俺は普通の人間だから、そう簡単に人間をを殺そうとなんかしないよ? …そうだよね?




