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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
16/43

さとりくんは、聞く


ダンジョンから出たところで、来から魔石類を回収した。

 半透明なスライムボディに魔石が浮いてるのが見えるからね。来が襲われないように、金目のものは見えないようにちゃんと仕舞っておかないと!

 ついでに、転移の時に拾った赤い石も袋に入れる。来と大上が転移した石は、たぶんコアのあるあの場所に落ちているはずだ。探してもらってくれば良かったかも。


 魔石5個と、昨日と同じような水晶が2個だった。

 俺が悲しい回想をしている内に、来と大上が頑張ってくれたようだ。これだとフローライトの収入を抜くのはムリそうだけど、ダンジョンに協力してオペラの好感度を上げてあわよくば彼女にする方が優先かな。

 腐女子かどうかの確認ってどうすればいいんだろうか……。

 そういえば、塩原さんが何か言ってたような……?



____

”え!? 佐倉くんってオタクだったの!?……美少年のオタク……これは、これでアリ! 腐男子なんてジャンルもあるし、佐倉くんが腐ってないか確認したい~! 攻めの反対は何ですかって聞きたい!”


 別に佐倉はオタクなの隠して無いけどね。外面が綺麗だからちょっとオタクなイメージは持ち難いけど、

立派に重度のオタクだよ。でも、腐るってBL好きだよね? GLは好きだけど、男同士を喜ぶ思考は無いと思う。

 それにしても、男が腐ると腐男子なのか。初めて聞いた。腐ってる人の見分け方が「攻めの反対は何ですか?」ってことかな? 普通に国語の問題だよね?


 ___攻めの反対は、「受け」だ。

 

 だって、不本意ながら塩原さんが受け攻め連発しているのを聞いてるし、今の体育で柔道をやってるけど攻めと受けだもんね。間違いない。

 

”もし、「受け」って答えてくれたら反応に困っちゃうかも! 不審者にならずに、「え、守りでしょ?」なんて返せるか不安! 聞きたいけど、聞けない~!!”


 ……え? ……攻めの反対って、守りなんだ?

 そうか、野球か。野球の方だったのか! そうだよね、国語的にも攻めの反対は「守り」だ! うっかりしてた!

 ……僕に聞かれなくて良かった! セーフ! もし「受け」って答えてたら、塩原さんがもっとうるさいことになるところだった。

 柔道的には合ってるけど、確かに塩原さんが受け攻め言ってるんだから、腐女子的なワードだったのか! 今度から、気を付ける!

____




 結局塩原さんは、俺にも佐倉にも聞かなかったけどね。

 これって、異世界の腐女子を見分けるのにも使えるのかな?

 ……エクレアさんの声を思い出せば、受けとか萌えとか言ってた気がする。翻訳された影響かな? それとも、異世界でも同じように流行った言葉なのか……日本から来た異世界人に持ち込まれた言葉なのか。

 

 どうせギルドに行くんだから、まとめてエクレアに確認しようか。どうやって言ったら、不自然じゃないかな……。

 ダンジョンを出たからか、緊張が途切れたようで急にお腹が空いてきた。すっかりお昼のタイミングを逃してしまっていた。考えながら、もらったサンドイッチを来と分けて食べた。美味しかった。






 聞き出し方を考えた俺は、ギルドについてさっそくエクレアの待つ受付についた。

 にっこり笑って挨拶をしながら、魔石の入った袋を渡す。笑顔、大事。


「こんにちは、エクレアさん。買取お願いできますか?」


 笑顔の先制が効いたように、エクレアも笑顔になる。笑顔、大事。


「はい、こんにちは。買取ですね? 袋を預からせてもらいます。」

”ユウキくん来たぁぁ! 笑顔だけど、フローライトさんが居ない! 何とかせねば!!!

 無理に笑わなくっていいんだよ! 一人で寂しいユウキくんに、保護者を! フローライトんさんを届けたいぃぃ!!!”


 ……笑顔、ひきつる。

 やっぱり諦めてくれないよね。分かっていたけど、想像以上に生の音声の公害感が半端ない。

 受け取った袋をカウンターの奥に持っていき、しばらくすると戻ってくる。


「魔石5個が鉄貨3枚ずつと、水晶2個が鉄貨5枚ずつと、高純度のルビーが銀貨5枚です。合わせて銀貨5枚と銅貨2枚と鉄貨5枚ですね。

 小さいですが、こんなきれいなルビーなんて、ずいぶん下まで行ったんですか?」


 え? あの赤い石、ルビーだったの? 目安のフローライトは、確か銀貨2枚くらいって言ってたよね? 赤い石一つで超えちゃったよ! そんなすごい石、もらってきて大丈夫だったんだろうか……。


「そう、だと思います。転移でどこかまで行ってしまったので、帰れるところですぐに帰って来ました。」

「そうでしたか。遭難しなくて良かったです。」

”罠の先で、こんなスゴイ拾い物するなんて、運がいい! せっかくならフローライトさんと出会って欲しかったけど!”


 ……ぶれないね。

 今日は聞きたいことがたくさんあるから、サクサク行こう。


「はい。あの、その時に誰も会わなかったのですが、あのダンジョンって人気がないんですか?」

「最近はそうですね。少し前までは、低ランクのパーティーを組まない冒険者には比較的稼ぎのいいダンジョンとして昔は人気だったんです。

 ですが、攻略方法が確立されたのか一部の輝石のダンジョンに行く冒険者の稼ぎが上がりまして、稼ぎに格差が出たことで引き時を見誤って遭難する冒険者が続出しました。そのため最近の新しい冒険者は、森で経験を積んでランクがDになったところで獣のダンジョンを攻略を始める方が増えているんです。」

”でも、ユウキくんはフローライトさんと一緒のダンジョンを攻略するんだよね! きっと、攻略方法とかコツを教えてもらったから、初日からの高収入なんだよね! 一緒に行動してなくても、心はいつも一緒なんて……素敵!!”


 心の声は無視しよう。決して、フローライトから高収入になるためのアドバイスなんかもらってないよ!!なんて、突っ込みは入れない。疲れるから。

 ええと……つまり、オペラの言っていた転移で脱出する方法を最近取るようになった冒険者の収入が上がったことで、新参者が入りにくい空気になってるってこと?


「それって、頑張れば稼げるってことですよね? 遭難の可能性なんて、昔から一緒ですよね? なんで諦める方向になってしまうんですか?」


 俺の質問に、エクレア苦笑した。


「それはそうなんですけど……獣のダンジョンと違って、階層ごとに魔物が強くなるわけでもないので修行という面では、あまり効果が得られないじゃないですか。それなのに、強いと収入が多いと言うのが一致しないという面が高収入組によって押し出されてしまいまして、高ランクの冒険者になる夢を持つ若者は避けてしまうようです。

 それに、その高収入組にフローライトさんが居るので……若くない方には、強さ以外の原因で若手に収入を大きく離される状況に、嫌煙されてきているのです。」


 なるほど……。やっぱり、フローライトが原因なんじゃない? フローライトが居なくなれば若手じゃない低ランク冒険者が来るようになるかな。でも、若者が入れるには修行性が必要ってこと……?

 そもそも、修行性って何。その獣のダンジョンと同じことをしても、冒険者を取り合うだけになるだろうから……難しいね。


「そうですか。獣のダンジョンって、ゲームみたいに階層ごとで魔物が強くなるんですか?」

「そうですよ。」

「あ、ゲームって通じます? そういえば、前にクラスの女子から聞かれたんですけど、攻めの反対が何かってわかりますか?」


 ここで、質問をぶっこむ。流れがおかしいとか言わないで。もう、適当にぶっこむ以外に方法が見つからなかったんだよ……。


「う……攻めの反対は、守りですよ? どうかしましたか?」

”受け! 攻めの反対は受け! どうしてそんな事聞くの!? ユウキくんは、腐男子だったの!? それはそれで美味しい!”


 受けだと思っているのに、守りと答えるとは……塩原さんから聞こえた声通りだ。この判断方法は使えそう。採用という事で。


「そうですよね。言葉として反対はそうなんですけど、柔道と言う俺の居た国の競技では、技をかける相手を「攻め」で掛けられる相手を「受け」と呼ぶんです。そして野球と言う、「攻め」と「守り」に分かれて交互に攻守を入れ替えて戦う競技があるんです。とっさに出てくる言葉で、どっち派か分かるそうですよ。

 この世界にも、柔道とか野球とかってあるんですか?」


 嘘でごまかす。日本文化の普及具合を確認するのにもちょうどいいしね。


「この世界にはありません。でも私は、昔異世界人の女の子と仲が良くて、ゲームとか柔道とか野球についても聞きました。慣れない異世界で大変だと思いますけど、ユウキさんは私と仲の良かった子と同郷みたいなので、上手くサポートできそうです。なんでも聞いてください!」

”ユウキくん騙されてる! そのクラスの女の子は腐男子チェックをしたかったんだよ! とっさにそんな嘘が出て来るとは……私も使おうかな? それにしても、ユウキくんはどっちで答えたんだろう。

 授業と言う必ず通る道で合法的に少年たちを組んず解れずさせる素敵な柔道。部活という放課後に先輩後輩多数の少年達を集めて9つの椅子を取り合う愛憎劇を繰り広げる野球……どっちも、イイ!!”


 ちょっと待って!……柔道と野球ってそんないかがわしい感じなの!? エクレアさんのイメージが真っピンクなんですけど!?!? 

 エクレアさんに日本知識を教えた女の子って、腐女子!? そんな間違った知識と、腐った思考を異世界で広めないでくれ!! 後発の日本人が苦労するじゃないか!!……まさか、塩原さんか……?


「そうですかー。た、頼らせて、もらいますね。その異世界人の女の子って、会えたりします?」

「残念ながら、ずいぶん昔の事なので、もうこの街にはいません。」

「ずいぶん昔?」

「そうなんです……15年くらい前かもしれないですね。あ、エルフや獣人は、人間より少し長命なんです。でも、女性に年齢と聞くのはダメですよ?」

「……はい。分かりました。」


 心の声が聞こえるので、エクレアさんの年齢も聞こえちゃたな……。女性の年齢はナイショだもんね。内緒だよ? 勝手に教えたりしないけど……この若い外見でこの年齢って、少しどころじゃない長命だと思うんだ。エルフ的にはまだ若いって言ってるから……うーん。え、えるふ的には若いんだよね? エクレアさんは若いよ!


 エクレアの思考が、年齢に対する言い訳で埋め尽くされているのに、若干引く。

 営業スマイルのエクレアに、塩原さんの妄想攻撃でレベルを上げた何も気づいていない表情で帰宅の挨拶をして、ギルドを後にした。

 ……つ、疲れた……。

 15年前なら、塩原さんってことは無いね。でも、その15年以上でどれくらいの腐女子感染者が居るのか……恐ろしい。やっぱり、人間と直接会わないオペラくらいしか彼女候補は居ないんじゃないかな!?


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