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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
15/43

さとりくんは、調べるつもり

 結論として、俺にはこのダンジョンが困っている原因は分からず、今この場で協力できることは無かった。

 人間の冒険者であることを生かして、ギルドで聞くことにする。

 

 オペラは変わらず、唇を突き出し、睨むようにこちらを見ている。

 ……しゃがんでいるので、目は上目使いだ。さらに左右の手も、ぷにぷよ・もふもふと撫でる動作を続けている。

 その二匹、いい感触だよね。そんな状態のまま睨まれても、怖くないけど。

 それでも、一応ちゃんと謝る俺って、常識的な人間だよね。


「転移で脱出できそうな人に心当たりがあったから、聞き逃してたみたいだ。ごめんね?」

「いいよ。……初めも前回も一緒にいた人間でしょ。前から、追いつめても逃げられるから覚えてるの。逃げられるから、殺すことも出来なくて、残念なの。」


 すでに、ブラックリスト入りしてたんだね。

 追いつめられても逃げられる転移能力とか、便利そうでいいな。

 俺の覚能力なんて、異世界感無いからね。妖怪由来の能力とか、新しさを感じない。まあ、便利な面もあるけどさ。どう考えても、今の俺に必要なのは、家に帰れる転移スキルだと思う。転移、いいな。

 

「……もしかして、人間を仲間にするなら、人間を殺すのは駄目? そうなるの?」


 ……そうか。オペラはフローライトを殺そうとしていて、俺はオペラの仲間なのか。

 ……オペラがフローライトを殺すことを想像する………別に、いいんじゃないかな?


 いや、オペラも人間っぽいし、人間同士の刃傷沙汰とかも普通にあるよね? ほら、フローライトさんってイケメンだから、女の子に刺されるとかありそうじゃん?

 そうすると、フローライトの罪状を言うなら、窃盗とかかな? 窃盗罪で死刑だとちょっと重い気もするけど、ダンジョンって命がけのトレジャーハントって感じだよね? そういう迷宮でお宝を盗り過ぎると帰れなくなるのはお約束だから、別にいいんじゃないかな?


「実際オペラは困ってるんだから、その解決策としてやむを得ずに殺しちゃうのは、問題ないと思うよ。」


 このままだと、飢えちゃうらしいし。


「……分かった。出来るだけ、人間を殺さないようにするよ。元々、出来るだけ殺さずに長く絞る方針だったから、大丈夫。……今は、人間側の情報の方が大事なの。」


 出来るだけ殺さない方針で行くようだ。常識的で婉曲な表現が、人間有利な方針に固めさせたようだ。

 別にどっちでもいいけど、同族殺しはあんまり好かれないから、ダンジョンに協力したのをばれた時のことを思うと、人間を積極的に殺さない方針なのはありがたいかも。


「俺はあんまり知らないけど、聞いて調べてくるからね。何か分かるといいけど。」

「期待してるの。」

「頑張ります。」


 頼りになるはずのギルドの受付嬢は、腐女子な精神攻撃をしてくるからな……会話、逃げないで頑張らないと。


「そういえば、オペラが人間をあんまり殺さないなら、俺も魔物を殺さない方がいい?」


 くる大上おおかみでこのダンジョンを攻略するつもりだったけど、駄目かな?


「このダンジョンの魔物は、私の管理下なの。スライムは割とすぐに増えるからいいけど、出来ればウルフは狩らないで欲しいの。石も、拾っていいけど取り過ぎないで。」

「分かった。大上を戦力として使うのは、問題ないよね?」

「大丈夫。」


 名前を呼んだからか、おなかを上にしてオペラに撫でられている大上がこちらを見た。戦力としてちょっと不安になる、だらけた表情だった。


”呼んだ? ユウキも撫でる?”


 リラックスって、大事だよね。俺も、オペラに近づいて、一緒に大上のお腹をもふもふした。背中もなかなかだったけど、おなか側はもっと柔らかい。うん、もふもふだ。


「じゃあ、俺、そろそろスライム狩りをしようかな。拾っていい石って、あれは駄目だよね?」


 初めから気になっていた、ダンジョンコアとその周辺の光る石を指してみた。聞いてみるだけはタダだ。


「まさかコアは、指してないでしょ?…コアはコアだから、駄目。でも、その他のは大丈……やっぱり駄目。ちゃんと協力してくれたら、協力内容に応じてあげるの。」


 今、大丈夫って言いかけたのに、支給制になってしまった。聞いてみただけだから、別にいいんだけどね。せっかくだし、いっぱい貰えるようにエクレアとの会話を頑張ろうかな。


「了解です。じゃあ、来、大上、行くよ。」


 来と大上に声を掛けると、オペラに撫でてもらうのは満足したのか、2匹はすぐに反応した。大上は立ち上がり、来は俺の傍まで寄ってくる。


”毒る?毒る。”(行く?行こう。)

”殺すの、任せて!(弱そうだから、代わりに戦うよ!任せて!)”


 ……パティーメンバー解散にならなくて良かった。でも、やっぱり大上には俺は弱そうに見えてるんだろうな……。

 ちなみに、オペラからは寂しさと残念さの混ざった感情のイメージを感じ取った。ずっと触ってたから、気に入ったのは気付いていた。表情も偽ることなく、悲哀を浮かべている。

 あげないけどね! どうしてもというなら……そうだな、彼女になるなら共有してもいいかな! なんてね。これじゃあ、釣れないか。


「あ、俺ってどうやって戻ればいいんだ?」


 ふと見れば、扉も通路も無かった。密室? 密室というと殺人を付けたくなるけど、この場合殺されそうなのは俺だよね。いや皆仲間になったし、エロ的な展開は……うん、ぷにぷよ・もふもふしている光景しか想像できなかった。……オペラとお付き合いできるのかな?


「そういえば、出口作ってなかったの。出口は今から作るけど、ここに来る時は、またオオカミ経由で連絡して。」


 オペラは立ち上がり、壁に片手を載せた。すぐにその位置が赤く光り出し、手を離せば見たことのある赤く光る模様が残っていた。こうやって作ってるんだね。


「連絡は俺から直接入れてもいいよね?」

「魔物支配のスキルでそんなに話が出来るの? 異世界人スキルだからなの?……連絡できるなら、いいよ。」

「出来たらするから、よろしく。また、明日くるね。」

「うん。」


 笑って別れの挨拶をした後は、ささっと赤い模様に手を置いて転移した。

 ……魔物支配のスキルだと、ちゃんと話せないのか遠くと話せないのか分からないけど、覚能力とはやっぱり違うようだった。異世界人スキルだからと、自己完結してくれて良かった。

 あれ、オペラは厳密には人間じゃないから、覚能力を隠す必要ない?……なんだ。隠す必要ないんじゃん?……そうだよね?




 あ、来と大上を置いてきちゃった。

 少し待つと、来も大上も来たけど、大上は大きいからいいとして、来はどうやって転移したんだろう。ジャンプでは届かない高さだったんだけど……よく考えれば、スライムは天井から落ちて来るんだっけ? 壁を登れるのかな? スライムの生体って、謎。


「大上、ここって、どこ?」

”転移した場所だよ。(あの部屋に行くための石を拾った場所だよ。)”


 律儀に元の場所に戻してくれたらしい。出口の青模様に行くには、少し離れていて入り組んでいる場所なんだよね。まあ、スライム狩りしながら行けばちょうどいいか。罠は、大上に聞いてよければいいし。


 ……いや、聞かないまま不安を感じて探索した方が、ダンジョンのエネルギーになるのかな?

 そう思ったけど、罠にかかると大変そうなので、大上に罠の位置は教えてもらうように頼んだ。

 その代りの負の感情という事で、怒りと悲しみと不安と動揺を簡単に与えてくれる、塩原さんの”可愛い”を含む悲しいことを思い起してみた。



____

「あ、僕、佐倉より身長高くない? やった! 抜いた!」


 それは、ずっと同じくらいの身長だった佐倉の身長を抜いた、中2の身長測定だった。

 思わず叫んだ声は、少し離れた女子の列の塩原さんにも聞こえたらしい……いや、遠目からずっと見られていた。


”優紀ちゃんおめでとう! ちっちゃくても可愛いからいいんだよ! でも、優紀ちゃんなら大きくなっても筋肉が付いても可愛いかも!”


 大きくてマッチョでも可愛いから逃げられないだと……!? 腐女子、怖い!


「よかったな。おめでとう。」

”身長位で浮かれている方が、子供っぽい。”


 ひどいな! でも確かに、身長を抜かれても余裕ぶった笑みを浮かべる佐倉を見れば、そんな気もする。大人っぽさは身長だけじゃないのか……難しい。

 僕は、少し難しい顔を作った。たぶん、失敗した表情になったらしい。


”あああああ! 大きくなって喜ぶ優紀ちゃんに、佐倉くんが笑顔で何か言ったら、優紀ちゃんがしょんぼりしたああーー!! 佐倉くんより大きくなったから、可愛いって思ってもらえるか不安なんだよね!? 佐倉くんは笑顔だけど、優紀ちゃんには何か感じたんだよね!? 嫁!佐倉くんの嫁!!!

 大丈夫! 佐倉くんより大きくなりすぎないように、今度神社でお参りしておくね! 任せて!”


 ……なんでそうなった!? 神社ってどこの神社!? それは、ありがた迷惑どころか、かなりの呪いだよ!! やめて! 本当に効くから、やめて!!

____




 俺の身長は、この後も佐倉と似たり寄ったりの伸びになった。塩原さんの呪いは関係ないと思いたい。……成長期、来てるよね?


 つらいことを思い出してしまった。これで、オペラの空腹が少しはましになるといいんだけど。そうじゃないなら、思い出し損だ。


 ちなみにこの間も、スライム狩りと道中の罠の無い石は回収している。来と大上が。

 魔物同士での意思の疎通は仲間じゃないと難しいらしいので、俺の仕事は、狼が近付いて来たら離れるように命令するくらいだった。後は、本当に後ろから付いて行くだけ。

 スライムが居たら、大上が爪で倒す。魔石や石は、来が拾う。役割分担はバッチリだ。パーティーメンバーが居ると、分担が出来るから楽で便利だね!

 

 青く光る模様の前で、大上と別れた。攻撃する時はちゃんと狼なのに、こうして尻尾を振る姿を見ればやっぱり大型犬だった。明日また、もふろう。


 もふろうって言い方、変じゃないよね? さっきから、スライムのおかしな鳴き声を聞いていたからよくわからなくなりそう。

 圧倒的に、”毒毒毒…”と言う不気味な声のスライムが多かった。他はいろいろだったけど、一番面白かったのは、”毒っぽい?毒っぽい?…”と言うスライムだった。

 毒っぽい?っていうか、毒るんだろ!って思った。あれ、毒るっていうのも変なのかな? でも、来は”毒る?”って言うからいいんだよね? 毒らない、毒ります、毒る、毒れば、毒ろう! ちゃんと五段活用してるね。……あってるよね?

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