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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
12/43

さとりくんは、三度目の正直

 昨日の朝の様子から、二度寝をしてゆっくりめの時間に起床した。これなら、混雑する時間をさけつつ、フローライトを避けることでエクレアさん対策になる。

 人の少ない食堂で美味しい朝ご飯を食べた。トーストとハムエッグだった。なんとなく朝食の定番みたいなイメージがあるんだけど、異世界でもあるのかな?


 その後、一度部屋にくるを連れに戻った。

 昨日外出している時、来をつれて歩いたけど、スライムがいることにびっくりしても従魔のリボンを見れば皆気にしないようだった。テイマーというのは、知名度の高いスキルらしく、むしろ、リボンと一緒に浮くコードリール状の厄除御守を見て、何だろうと考え込む人の方が多いくらいだった。

 なので、リボンを取り出してもらって、厄除御守を内側に隠すようにして、蝶々結びを結び直した。それを来に戻せば完璧だった。


 装備を整えて、宿を出ようとすると、宿のおかみさんから声を掛けられた。


「今日から一人なのかい? 森とダンジョンのどっちに予定なんだ?」

”異世界人とはいっても、スライムを従魔にするようなテイマーなんて、急に一人で行動させるのは可哀想だよ。もう少し、様子を見てあげればいいのにね。”


 恰幅のいいおばさんで、外面だけでなく内面もいい人だ。フローライトと一緒に活動している所を見ても、フローライトに保護者なんか務まるのか心配してくれるような人だった。

 腐女子では無さそうだけど、この宿は夫婦で運営しているので、既婚者である。


「ダンジョンに行こうと思っています。」

「そうかい。遭難しないように、気を付けるんだよ。こんな時間だから、あまりをあげるけど、他の奴らには内緒だよ。」


 そう言って、朝食と同じトーストされたパンに具を挟んだサンドイッチをくれた。


「ありがとうございます! いつもご飯が美味しいので、嬉しいです!本当に、もらっていいんですか?」

「いいよ、いいよ。喜んでれれば、あたしも嬉しいよ。いっぱい食べて大きくなりな。」

”素直で可愛いね! 他の連中も、これくらい可愛げがあればいいのに。これで、15歳なんて異世界人は可愛いね。”


 ぐりぐりと頭を撫でられた。腐女子視点でなくても可愛く見えるの? 異世界人だから若く見えるだけだよね? 身長の話なら、成長期はこれからだよ!

 とりあえず、気に入られたようだし、サンドイッチを貰ったからいいか。


「いっぱい食べて、大きくなります!本当に、ありがとうございます!」

「ユウキだったね?怪我をしないように気を付けて行くんだよ。」

「はい!ええと……。」

「あたしはタルトだよ。」

「タルトさんですね。夕飯までには戻ります。行って来ます!」

「行ってらっしゃい。」


 タルトさんに見送ってもらって、ダンジョンに出発した。

 タルトか。美味しそうな名前だ。そういえば、宿の名前は【タルトの宿】とエクレアからの地図に書いてあった。おかみさんの名前だったんだね。

 ハンバーガーもあったし、今度街を散歩する時には菓子類を探してみようかな。





 ダンジョンまでの道中で、一番道の近くに居た兎を、昨日と同じく動きを止めて来に食べさせた。

 俺は有言実行の男なので、魔石を吐き出せとは言わず、一匹丸々食べさせた。来は非常に喜んだ。パティーメンバーとしての絆もバッチリだ。


「そういえば、来はスライムは食べられない? それとも、毒スライム以外は同族じゃないから平気?」

”毒る?毒る?(スライム?なんでも食べるよ?)”

「え、本当?」

”毒る。毒る?(仲間は、食べないかも?)”

「その仲間の基準を聞いてるんだけど。」

”毒る?毒る?(仲良くなれそうな?気の合う感じ?)”


 スライムでも、同族食いはしないらしい。仲間の基準は、俺のさとり能力でも判断が出来る気がしないけど。


「俺が仲間を殺すのは平気?」

”毒る。毒る。毒る。毒る。(平気。指示があれば、なんでも毒る。食べるよ。)


 毒のスライムに毒が効くかは分からないけど、俺の指示を仲間のスライムより優先してくれるという気持ちが嬉しい。


「仲間っぽいのがいたら、教えてよ。仲間に増やしてもいいし、そうでないとしても、来じゃなくて俺が殺すようにするから。」

”毒る。毒る。(わかった。ありがとう。)”


 スライムなら俺でも殺せる。大丈夫。

 パーティーメンバーとの相談を終えた所で、ダンジョンに入った。これで3度目か。

 早速前回と同じく、正面の赤い模様から、3階に行って声を掛けた。ちなみに来のジャンプ力では模様に届かなかったので、先に持ち上げて転移させている。


『狼、いるー?』


 声が繋がったのが分かった。届く範囲に居るらしい。声の向かった方向に集中する。


”来た!来た!面白いの!……どこ?……遠い?(今まで声が聞こえたのは、匂いで追える場所だったのに)”

『今、どこに居る?』

”下の方?(この場所って、なんて言えばいいんだろう)”


 驚いた。狼はちゃんと心の声でしゃべってるから、全部聞き取れてるかと思ってた。普通イメージで付いてくるのは映像とかが主なのに、狼も来と同じく心の声にすら出せない思いがあるらしい。

 魔物って、思考の仕方が今までに見た生物とは違うのかも。


『俺の居る場所分かる?出来れば、仲間になって欲しいんだけど。』

”仲間って?面白そう?行く!……マスターに聞いて行く!(マスター!この前来た変なのの場所教えて!)”


 ……マスターって、何!?

 この前見た狼は同族なかんじで、主のようなのは居なかったと思う。ってことは、それ以外? 狼より強いのは居ないって、言ってたのに!いや、色が白とか黒に近づくと強くなるって言ってたかも?なら、白か黒の狼かな!?

 狼は群れるのを知ってたのに、前回一匹で行動してたから油断した!

 マスターとやらが一緒に来ても、覚能力で操れればいいんだけど、魔物は普通の生物とちょっと違うと認識したばかりだから、不安だ。

 ……よく考えると、あの青い狼、心の声でそのマスターと話してないか?だって、狼の近くに狼の呼び声に答える声は聞こえない。それなのに狼の声は、”そっち?行くよ!”なんて、返答があったかのように続いている。


 心の声やイメージは、このダンジョンに居る魔物と冒険者達の雑多な声に混ざり、狼に返答する声を探し出せない。俺の使う『声』なら回線が少し違うから判別できるんだけど……どちらにしても、心の声が聞こえるような同系統能力者だろう。血族以外では初めて存在を確認した。同系統能力なら、『声』が通じない可能性も高い。あの狼と同じように、そのマスターも俺の仲間になってくれるつもりならいいんだけど。


 とりあえず、来を抱き上げて、青い模様の傍で待機。いつでも逃げれる。

 

 しばらくして、見たことのあるような大きな青い狼が目の前にやってきた。先制で保険を掛ける。


『俺と来に攻撃しないで。』

”しないよ?(仲間になるんだよね?)”


 仲間になって欲しいと頼んだら来てくれたんだ。敵意が無くて良かった。

 周りの声を伺うが、マスターらしき声は聞こえず、もちろん姿も見えない。なんだ。マスターは居ないんだ。ほっとした様な、残念なような?


「さっき違うところに居たんだよね? ここまで転移とかで来たの?」

”そうだよ。(一番近い転移個所に転移してから、走ったよ!)”

「その転移って、罠とか壁の模様とか?ある場所と、行き先が分かるってこと?」

”そうだよ。(忘れたら、マスターに聞けば教えてくれるよ。)”


 やったね。この狼が仲間になるなら、遭難知らずにこのダンジョンで宝石探しが出来る!


「俺達と一緒に戦ったり、転移とかの罠の場所を教えたりして欲しいんだけど、仲間になってくれる?」

”なるー!(一緒に居たら、面白そう!)”

「じゃあ、よろしくね!撫でていい?」

”いいよー。”


 尻尾を振る大型の犬のような狼が、仲間になった!

 俺から近づき、撫でてみた。見た目より毛が柔らかくて、もふもふしてる。気持ちいかも。

 名前はどうしようかな。確かブルーウルフとかって言ってたけど、やっぱり狼でいいよね。狼だけど、後ろだけ取ってかみになるのは微妙だから……大上おおかみでいっか!


「君の名前は、大上でいいよね?」

”名前?分かったー!”

「あと、マスターって何?」

”マスターは、マスターだよ。(このダンジョンを作ってるよ。)”


 狼のマスターも仲間になるなら、おおかみ以外の名前をちゃんと考えた方がいいよね。……っていうか、ダンジョンを作る?それって、狼とかのダンジョンの一魔物に出来ることじゃ無いような?


「ダンジョンマスターってこと!? どんな魔物? もしかして、人?」

”マスターは、マスターだけど。(声しか聴いたことない…。でも、マスターはマスター。)”

「気になるんだけどな。見たことないなら、仕方ないか。」


 残念だが仕方ない。もしかすると、ダンジョンの魔物を操作する声だけのような存在かもしれないし。

 俺はただ、残念に思っただけなんだ。本当だ。ただ、大上が気を使ってくれてたようだ。


”え!が、頑張る!(マスター、マスター!会えない?会いたいってー!)


 いやいや!どんな存在か知りたいだけで、会いたいと言ってないし! 会ってみたいとも思ったけど、別に呼び出してまで会いたいわけじゃない!


”((気になるから、来ていいよ。))”


 狼の内心に、どこかから返答が有ったのが分かった。やっぱりイメージでの返答なんだ。

 ……呼び出すつもりはなかったけど、呼ばれるつもりも無かったかな……この脱出の青い模様から離れないと駄目?


”分かったー!連れてくー!(マスターに会えるって!やったね!)”


 ……ダメなようだ。

 尻尾をぶん回して喜びを伝える大上のまっすぐな視線に、行かないとは言えない雰囲気だった。

 その後すぐに大上に送られてきたのは、ダンジョンの地図のようなイメージと、マスターの場所までの転移石を設置するという意思だった。

 仕事、早いね。本当に、行かないとは言えない雰囲気。行くしかないよね?


 イメージは俺も見れたけど、案内する大上がいうので、激しく尻尾を振る大上について行った。……楽しそうで、何よりだ。

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