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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
11/43

さとりくんは、単独行動

 宿に行くと、宿屋のおかみさんが別料金のお昼を勧めてくれたので、お昼は宿で食べることにした。

 ハンバーガーとスープだった。とても美味しくいただいた。ハンバーガーは、テリヤキソースのような甘じょっぱい感じだった。異世界で普通にハンバーガーが出てくるとは思わなかった。付け合わせにフライドポテトも付いて来て、完璧だった。

 異世界人はそこそこいるようだし、日本とかから来た誰かが伝えたりしたのかな?前に佐倉から、異世界転移した時のためにマヨネーズの作り方を覚えておくように言われたけど、テリヤキバーガーの中に適量使われていたから無駄になったみたいだ。

 こうして快適な食生活を送れるようだし、ラッキーと思っておこうかな。





 美味しいものを食べて、エクレアに削られた精神力を回復させて部屋に戻った。

 荷物を下ろすことで、縁結御守を装備解除する。

 そして、首にかけていた御守と厄除御守も、鞄の上に置き装備解除する。

 

 ……ああ、これは。間違いなく、さとり能力が上昇している。

 今まで聞こえなかったような、遠くの人の声もイメージと共に伝わってくる。

 深く息を吐き出して、頭の痛くなるような膨大な情報量から、意識を外すようにする。

 御守りの効果が証明されたところで、帰り方は分からないけれど、やっぱり縁結びが怪しいと思うんだよな……。


 ”毒る?毒る?(これも、食べちゃダメ?(毒の盛られた兎肉))”


 くるから声がイメージと一緒に届いた。

 ギルドで売れない肉を戻してもらっていたのを、忘れてた。来には回収するように伝えたから、勝手に食べなかったらしい。


『食べていいよ。』

”毒る!毒る!毒る!(生き物!久しぶり!嬉しい!)”


 嬉々として攻撃モードに移行して、徐々に体積を減らしていく。

 魔石と毛皮を除いた兎でも喜んでいるようだ。土を食べるのと比べれば、栄養が有りそうだ。……土を食べるイメージを思い出し、可哀想になった。袋として活躍してくれたし、次は丸々一匹食べさせてあげることにする。

 まずは、来の体内でれて縦に螺旋状になってしまっているリボンが気になる。

 

「そのリボンって、自分で外せる?」

”毒る?毒る?(外していいの?外せるよ?)”


 見ていると、リボンが下に落ちて行き、来が前に移動することでその場にリボンのみが残された。赤いリボンが灰色に変わっていく。本当に、首輪リードとしての役目は果たせないようだ。


 そういえば、リボンは体内に入っていても見えたのに、仕舞っていた兎は見えなかった。食べている時には見えなかったから、いわゆる胃のような場所に入っていたのかもしれない。そうすると、仕舞ったものを出させるのは、吐き出させるということなのかな?……ちょっと可哀想な気もするから、あんまり多用するのはやめようか。


 来が落としたリボンを拾うと、色が赤くなった。驚いた。俺と来が赤いリボンで結ばれたかのようだった。

 ……彼女を探し中だけど、流石にスライムは無いかも。来から伝わるイメージだと、性別とか無さそうだし、人化するとしても違う気がする。もしスライムなら、一番最初にテイムしようとした【毒だー。】の方が怪しいと思う。転移した先のダンジョンに居たからね。フローライトに殺されたけど。

 ……うん?その理屈で行くと、転移してすぐに会ったフローライトが怪しいか?

 ……………鳥肌がたった。フローライトは嫌だ。せめて、もっと可愛い系なら……カワイイ系でも違うな。俺の嗜好としては、男は恋愛対象外という事で。

 ……カワイイ系として思い浮かぶ顔が佐倉だったのは、やっぱり塩原さん達に毒られてるかもしれない。毒るのは、来だけでいいよ……。


 あれは、授業後の風景だったか。



_____

 授業が終わると佐倉が俺の席まで無駄話をしにやってくる。


「……やっぱりさぁ、塩原さん達って俺らのどっちかに気があるんじゃない?すっごい見られてる。」

”俺?それとも、里? どっちにも視線を向けるって何。”


 佐倉が見る方向に、視線を向ける。

 僕の隣の席の塩原さんは、後ろの席の友達の所に行っている。そして、ちらちらとこちらを見ている。

 僕には、分かりたく無い理由が分かるけどね。


「どうだろうね。何か噂をされてる感じかもよ?」

「噂ね。でも、あんな風に頬を染めて、友達同士で話してるんだから、恋愛の話っぽいと思う。」


 意外と鋭い佐倉に、後ろからの声と合わせてげんなりする。


「でも、佐倉って三次元女子は駄目なんでしょ?気にしない方がいいよ。」

「確かに、三次元女子にはたないけど。」

「なっ……ちょ!佐倉、おい!」


 こんな教室の真ん中で、さらっと下ネタをぶっこむな!

 あわあわと突っ込みながら、口元に人差し指を立てて当て、黙るように伝える。

 そうすると、返ってくる意味深な笑み。声が聞こえなくたって、表情で”俺、何も悪くない”と伝えたいのが分かる。自重して!!


”え!なになに? 今なんか起きたよね! 佐倉くんがこっちを見た後でなんか言って、優紀ちゃんがシーって慌てながらやったら、佐倉くんが笑った! これは、「俺は女なんか興味なくてお前だけだよ」的な!?「ちょ、黙れよ!」 「にこっ黙らないよ?」 みたいな!? なにソレ、イイ!!!ヒャーーー!!!!”

”え、なに!シオが激しく萌えてる!? 見損ねた!時間巻き戻したーーい!!”


 後ろから聞こえる大音量に振り返ると、塩原さんが口元を押さえて震えながら、机に顔を伏せていた。妄想の内容が、微妙に合っているのが怖い。

 それを見る友達は、にんまり笑いながら塩原さんを撫でている。


”あのねあのね、今の出来事を伝えるよ! 萌えの共有大事!”

”そんなの事があったの、羨ましい!佐倉君、かわカッコいい!”

”佐倉くんが、可愛いのにイケメンすぎる!優紀ちゃんが可愛すぎる!”

”分かる~。あの二人って百合カプだよね!最強!!”

”分かるけど! あえてそこに、中里くんも投入したい! 総受け!!”


 塩原さん達の可愛いはいつもだけど、百合カプって何? 僕たち、二人とも男なんだけど。最近、すごく百合カプって連呼するんだよな。深く考えると精神的に被害を負いそうだから、これも無視で。


「俺さ、三次元女子でも百合ならイケる。塩原さん達って可愛いし、かなり仲が良さそうでイイよな。」

”あの二人でくっつけばいいのに。妙に接触多いし、百合カプ眼福。”

「佐倉……塩原さんに、告ったら?付き合ったら、意外とイケるかもよ?」

「まだ妥協できないな。異世界に行ったら、エルフとか獣耳の嫁が出来るかもしれないし。諦めが付くまで、召喚待ちしてるから。」


 こっちも、重度のオタク過ぎるんだよ!

 異世界に行ったら、そのエルフ達も三次元女子になるわけだけど大丈夫?っていうのは何度も聞いた。別の世界ならOKとか言うなら、もう塩原さんで良いじゃん……。

 GL好きとBL好きだけど、百合がいいって連呼してるのは同じだし、相性も悪くないと思うんだ!どうだろう!?佐倉と塩原さんが付き合ったら、妄想攻撃はかなり減ると思うんだ!

_____




 過去の、佐倉に塩原さんを勧める日々を思い出した。結局、嫁は二次元か異世界にしかいないと豪語する佐倉に、塩原さんを恋愛的に意識させるのは無理だった。

 俺、異世界に来たけど、出会ったエルフは塩原さんと同じような三次元(腐)女子だったよ。エクレアが良いなら、塩原さんでも良かったのにね。


 ___頭を振って、過ぎ去った過去を振り払う。

 拾ったリボンのかた結びを解き、二重にしてから蝶々結びを作って、来の上に乗せた。


”毒る?毒る?(これを付けるの?さっきより、絡まらないかも?)”


 置いたリボンがゆっくりと来の体内に埋没していく。

 来の反応も悪くなさそうだ。すでに結んであるので、さっきのように縒れて絡まって、よくわからない模様を作ることにはならないと思う。


 一仕事終えて満足した。

 まだ昼間だし、街を見に行こうと思う。昨日も買い物で見たけど、案内してくれてた人は、地図通りの寄り道なしの効率主義だったからね。見た範囲より、地図の情報の方が多いくらいだ。少しぶらぶら見たいと思っていた。

 あとは、この御守り解除状態に慣れるようにしたい。今までなら抑制だとか徐々に慣れようとかで済んだが、異世界である以上、戦闘力(索敵と魔物支配)の要である能力は万全にしておきたい。


 ___縁結御守と御守を装備する。

 抑制効果は、縁結御守はほとんど無く、御守に少し防音機能があるくらいだ。今日はここから慣れよう。

 でも、厄除御守を手放して歩くのは少し怖い。

 厄除御守の効果はほとんどが抑制効果であるものの、厄除けというので悪いことを防いでいる可能性が有る。縁結御守によって異世界トリップした可能性が高いと信じているのに、同じシリーズの力ある御守りを装備せずに悪いことが起きたら怖い。異世界だし、準備だけはしておきたい。


 という事で、厄除御守を来の上に置いた。


『それ、持ってて。無くさず、溶かさず、毒らないようにお願いね。』

”毒る?毒る?(持ってる。分かった。)”


 紫色の布地に刺繍入りの御守りは、コードリールのように首から掛けられる長さになった上部の紐が巻かれていて厄除御守の文字がほとんど隠れている。

 蝶々結びの赤いリボンと同じようにスライムの体内を漂うそれは、日本人が見てもすぐに御守りと判断するのは難しいかもしれない。

 ……違うか。判断できないのではなく、なんでそこに入っているのか理解に苦しむ見た目だという事だ。ただ自分が装備せずに持ち運ぶための手段として最適だっただけなんだけど……ちょっと散歩してくるだけだし、まあいいか。


「そういえば、来は能力とに何か変化はない?動きにくいとか、毒りにくいとか?」

”毒る?毒る?(なんのこと?平気だよ?)”


 うーん?平気なんだ……?

 厄を除ける御守りで、覚能力は抑制されるのに、スライムの能力は抑制されないとか、納得いかない。来の能力が下がらないのはいいんだけど…何なんだろうね?

 まあいいか。この状態での活動が大丈夫そうなら、このままでしばらく居ようかな。そうしたら、パーティーメンバーである来との意思疎通も楽だしね。




 

 街の様子は昨日見たのと同じ感じ。エルフや獣耳なんかの男女を見かけたけど、奴隷の存在は不明。

 商品類は、魔石を電池のように利用して、コンロや洗濯機や冷蔵庫のようなものも売っていた。値段も高いので、使う予定が来るまで、家電のような物の購入は見送る。

 他には、アミュレットを見に行った。攻撃力や防御力を上げる魔法のアクセサリーで、エクレアの地図でもお勧めされていた。でも、アミュレットって御守って意味もあるんだよね?御守りはすでに持ってるし、厄除御守の効果が来と俺で違うのは能力との相性の問題だと思うことにしたから、さらに別の力を持つものを身に着けるのは混ぜ過ぎ危険な気がした。だから、安全性が確認できるまで、購入は見送った。

 

 つまり、散歩の収穫はゼロだった。

 夕飯までに宿に戻り、美味しい夕飯を食べてからお風呂に入った。その後、寝るにはうるさかったので、厄除御守を来に返してもらってから就寝した。


 

 

 

今後の更新頻度が落ちます。すみません。

週2か3くらいを目標に頑張るので、宜しくお願いします。

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