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さとりくんは、腐女子じゃない彼女が欲しい  作者: siki
中学3年生、春休み
10/43

さとりくんは、従魔を連れる

 門に辿り着き身分証を見せた後、早速門番にスライムのくるを紹介する。


「スライムを使役したのか。テイマーの異世界人だったんだな。登録してあれば、街にも連れ込めるが、従魔が起こした損害は、主人テイマーが払うことになるが大丈夫か?」

「大丈夫です!」

「魔物支配のスキルは、親密度が上がらないと短時間しか操れないらしいが、本当に大丈夫か?」

「はい。パンをあげて、仲良くなりました。」

「そうか。ちょっと待ってろ。」

”スライムくらいの魔物だと、使役も簡単らしいし大丈夫か。”


 門番は、昨日の身分証をもらった詰め所に入って行った。

 この世界の魔物支配のスキルも、さとり能力と似た所があるらしい。好都合だ。


 戻ってきた門番は、両手に黒い手袋をはめ、黒い首輪のようなものと、太めのリボンのような紐を持ってきた。


「スライムだと、首輪より紐の方がいいか?値段は、どっちも銀貨2枚だ。登録した魔物しか使えなくなる。」


 スライムに首輪とかリボンか。なんか変な感じ。


「では、紐でお願いします。」

「紐だな。今から渡すが、一番最初にこれを触るのが主人だ。次に触るものを従魔として登録される。そうすると、この紐は主人以外では解けなくなる。スライムだから解く解かないは関係ないかもしれないが、違う相手がこれに触ると色が変わるから本人かどうか判断できるんだ。

 取ってきた魔石とかに当てないように気を付けろよ。」

「分かりました。」


 渡されリボンを、念のため魔石を入れた皮袋に当てないように、慎重に受け取る。色が灰色になった。

 そして、来にリボンを食べないように伝えてから、巻いた。色が赤く変化した。

 色が変化するとか、スゴイ。色で判別させるとは、身分証の文字が浮き出る現象と近いものがあるのかもしれない。


「それでいいな。赤いのが正常だ。銀貨2枚。」


 差し出された手に、銀貨2枚を乗せる。


「ところで、一番が主人になるなら、門番さんは登録されないんですか?」

「俺が?ああ、この手袋は魔力を遮断する手袋なんだ。だから、正真正銘、このスライムの主は君だよ。」

”異世界人だから、知らないのか。なら、身分証についても一応説明するか。”


 そうなんだーと、相槌を打つ。

 身分証?身分証なら、魔力で文字が出るとか、スキルの偽造は出来ないけど非表示は出来るとか、聞いたけど?


「ついでに、身分証だけどな。門を通る時には素手で持ってもらうんだ。そうすることで持ち主の魔力が通り、更新される。犯罪の被疑者や、街で重要な招集がある場合は、備考欄にそれが追記されるんだ。

 だから、身分証が無いと門が通れないで再発行になるから、無くさないようにしろよ。」

「気を付けます!」


 そういうのが、自動更新されるんだ。ハイテク!そして、無くさないように気を付けようっと。


 親切な門番さんにお礼を言って、街に入った。

 来は赤いリボンが巻かれているが、中には兎が入ってるんだよな。パンと同じく、体積は増えているが半透明なのに兎は見えていない。兎を出しても、リボンはこのままでいいんだよな?ちゃんと来の部分に巻いたし、兎の魔力は登録されていないと信じるしかない。





 一番にギルドに向かい、エクレアの窓口に立った。


「今日は早いですね。買取ですか?」

”フローライトさんとユウキくんが来た!昨日は同じ宿だったんですよね!私の気遣いはどうでしたか!?こんなに早く帰って来て、今から体のお付き合いですか! 最高です!!”


 地図はありがたかったけど、そうやって俺とフローライトでエロい妄想するのやめて!い、今から体の付き合い!?ひどい妄想だな!

 ……エルフの美人さんは、輝く笑顔の下で、やっぱり腐っていた。

 いや、腐女子を全面的に否定する気はないんだけど、なんで俺で妄想するかな?でも、もう大丈夫か。フローライトの保護者は終了だから。


「そうだ。ユウキの分の買取とスキルの登録を頼みたい。」

「スキルの判別が出来たんですね。良かったです。

「なかなか覚えがいいから、これで指導を終了する。」

”買い物も、ダンジョンと狩りの説明は終わったからな。楽な仕事だ。後でまた狩りに行こう。”


 フローライトは、いつの間にか鎧の頭部を外していて、エクレアにさわやかな笑顔を見せていた。

 覚えがいいとか、全然思ってないだろ!楽な仕事って、割と説明も適当だったしな!


「そうなんですね。ユウキさんには期待しちゃいます。この紙にスキルを書いて、身分証と一緒にくださいね。」

”フローライトさんが褒めてる!ユウキくん、すごく気に入られてる!?やっと、フローライトさんに、公私をともにするパートナーが!!”


 別に、気に入られてないよ!?ダンジョンに一緒に行く気もないし、もちろんBL的な付き合いなんてあり得ない!

 聞かれないのに答えるのは変だから、この勘違いのままかな……。でも、塩原さんと同じなら、否定しても無理にでも妄想でくっつけようとするから同じか。放置、一番。

 エクレアから紙を受け取って、スキルの欄に「索敵」と「魔物支配」を記入して、身分証と一緒にエクレアに渡す。

 エクレアはなぜか、紙をフローライトに見せた。


「これで、大丈夫ですか?」

「あとは、初級魔法も入れた方がいいな。」

”しょぼい魔法だったけど、火と水が出れば載せて問題ないだろう。”


 またもや、魔法をけなされた! 絶対に、俺の事を気に入るとかありえない!


「そうですか。魔法も使えるなんてスゴイです。ユウキさん、ここに初級魔法と書いてくださいね。」


 返された紙に「初級魔法」記入して、渡す。

 手元で、その書類と身分証で何かの処理をすると、身分証を返された。

 裏面は、意味のなさそうな線が消え、先ほど記入した3つのスキルが刻まれるのみになった。

 もしかして、異世界人の身分証は適当なスキルでも登録できるのかな?それとも、やっぱり技能的には合っているスキルだから登録できたのかもしれない。

 どちらにしても、登録できて良かった。


「後は買取ですね。買取は、収納の袋ごと出してもらえればいいです。袋はきちんとお返ししますので、安心してください。」

「分かりました。」

 

 袋ごとね。このカウンターに、魔石はともかく、いろんな死骸を並べるのはどうかと思うし、省スペースで確かに便利か。

 そういえば、兎。そろそろ死んだ? と来に確認すれば、死んだそうだ。袋に移すとか嫌なんだけど、どうしようか。

 魔石と水晶が一つづつの袋をカウンターに置き、さらに、足元の来も抱き上げて隣に置いてみた。


「…あの、この中に角ウサギが一羽入ってるんですけど、このままでいいですか?毒が回っているので、買い取れない部分はこのスライムに持たせてほしいです。」

「ええと……攻撃しないんですよね?それなら、大丈夫だと思います。どうしたら、中身を出しますか?」

”スライムを袋替わりに従魔にするとか!普通に見えたけど、異世界人って、ちょっと感覚が違うようね。でも、そんなところがフローライトさんの心を打ち抜いたに違いない!天然受け!萌える!”


 そんなに萌えるというなら、エクレアさんと絡ませてほしい。

 違った。女子なら誰でも言いのではなく、俺でBL妄想しない腐女子じゃない彼女がいいんだった。エクレアさんは、美人なんだけど、やっぱり無しで!

 来に、他の人に出すように言われたら、兎を出すように伝えた。もし兎肉を体の上に置かれたら回収してくるようにも伝える。


「出すように言ってもらえれば、出します。要らない部分は、上に乗せれば仕舞うのでお願いします。

 あと、あんまり強く握ったり直接中に手を入れたりはしないようにお願いします。」

「分かりました。」

”スライム触るの初めて! ぷにぷよっ!”


 エクレアは営業スマイルで、来と収納の袋を持って奥に行った。スライムを袋替わりしても、対応してくれ良かった。今後も、袋に入れたくないのは来に頼もうかな…?

 来と言えば、持ち上げた時に気付いたがリボンが沈んでいた。沈むというのも変かもしれないが、外側に巻いたリボンは、輪の形状のまま来の半透明な体内に入っていた。

 食べている時と違って外から見えるが、そうなるなんて思わなかった。

 門番がスライムなら、解く解かないは関係ないといっていたが、こういう風に沈んでしまうなら、確かに関係なさそうだ。色が重要らしいし、いっそのこと、蝶々結びにしたリボンを中に浮かばせてみようか? 可愛い気がする。


 少し待つと、エクレアが来持って戻ってきた。


「お返ししますね。支払いは、魔石2つが鉄貨3枚づつと無傷の毛皮と水晶が鉄貨5枚づつになります。合わせて、銅貨1枚と鉄貨6枚ですね。確認してください。」


 3×2+5×2=16枚の鉄貨が、銅貨1枚と鉄貨6枚になるという事は、鉄貨10枚で銅貨1枚か。

 まとめ買いばかりで鉄貨はあんまり使わなかったけど、鉄貨一枚が100円位かも。という事は、今の稼ぎは1600円。少ない!

 来を下ろして、袋をとお金をしまう。


「ちなみに、冒険者ってどれくらい稼げるものなんですか?」

「EランクDランクくらいだと、一日に銀貨1枚から2枚くらいですね。ダンジョンで運がいいともっと多い日もあります。フローライトさんは、Dランクにしては稼ぎが多いんですよ。」

「そうだな。薬類の消耗を差し引いて、銀貨2枚以上の利益が出るようにしている。」

「フローライトさんは、Cランク位の実力派なんです。」

”強くて稼ぎのいい一匹狼!将来有望だし、ユウキくん、お得だよ!”


 お得って……テイマーになったけど、エクレアさんの勧めてくれる狼は、要らないよ?

 とりあえず、普通の冒険者くらいの稼ぎを目指そうと思う!明日から頑張る!


「今からお昼ですよね?お二人で、どこに行くんですか?」

「いや、指導はこれで終わったから、俺は一人でダンジョンに行くよ。」

「えぇ!?…でも、ユウキさんはまだ慣れていないんですよ?お昼ぐらい……。」


 フローライトが、せっかく妄想攻撃してくるエクレアさんを止めてくれたんだ。ここはとどめを刺すつもりで、そのエクレアさんの言葉にかぶせるように、俺も重ねる。


「エクレアさんにもらった地図もありますし、宿に戻るつもりなので大丈夫です。来もいるので、明日からも平気です!」

「……そうですか。頑張ってくださいね。」

”地図!失敗した!二人を引き裂いてしまうなんて…!!クルって、スライムでしょ?スライムが居るから平気って、ユウキくんはなんて健気なの!寂しさをぷにぷよで誤魔化すのね!……だてに一匹狼なわけじゃないわ。私、ユウキくんがフローライトさんとお付き合いできるように、全力でお手伝いします!”


 あ、失敗した。エクレアさんの何かのスイッチを、連打してしまったようだ。

 保護者終了とともに、フェードアウトするつもりだったのに、やらかした! すっごい嫌な予感がする!!

 別れの挨拶もそこそこに、フローライトとエクレアさんから逃げるように宿に戻った。

 ……ギルドの受付の担当って、変えられないのかな?

 

 

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