少女は、竜の勇者を始末したようです。
閃光が治まった後。
目の前にクトーの姿はなく、周りには全てを吹き飛ばした後のクレーターが広がっていた。
山を抉り、盆地のように変化した後の中空で、レヴィは両翼を広げ、手にしたニンジャ刀を頭上に掲げた姿勢でチラリと上を見る。
そこに、リュウがいた。
レヴィが受けた、彼が振り下ろした大剣に力は篭っていない。
人竜形態の全身から煙を上げながら、彼が悪態をつく。
「ーーーやり過ぎだろ」
「やらなきゃ勝てなさそうでしたから」
チェックメイト。
それは、レヴィが詰め切られた状態を示す言葉だが、これは殺し合いではなかった。
リュウが振り下ろしたのは剣の腹。
レヴィを叩いて気絶させようとしたのだろうし、殺さないように力を加減したのだろう。
だから、届かなかった。
「せめて鞘を被せて、本気で振り下ろすべきでしたね。リュウさんの優しさに感謝します」
「クソ……お前は殺す気だったってのか?」
グラリ、と傾いだリュウを軽く避けて、緩やかに落下し始める彼にレヴィは声を掛ける。
「いいえ。信じたんです。リュウさん達なら、全力をぶつけても死なないって」
「モノは言い様だな……だが、アイツはまだ潰れてねーぜ?」
切り札を切っちまって、勝てるのか?
すれ違いざまに牙を見せて笑みを浮かべた彼に、レヴィはうなずく。
「分かってます。でも、リュウさんを先に潰せたのは収穫です」
レヴィは、厳しい顔で下を見下ろす。
ーーーそこに、無傷のクトーが立っていた。
クレーターの縁で、手にした【死竜の杖】を【真竜の偃月刀】に変化させて、メガネのチェーンとファー付きインバネスコートの裾を風にはためかせている。
手にしているのは【転移の札】である。
ミズチの力が借りれないので〝絆転移〟が使えず、せいぜい防御結界を展開するくらいしか出来ない、と思っていたのだが。
ーーーあっちはあっちで、切り札を隠してたわけね。
あの状況でそのとっさの判断が出来るのは、最早流石を通り越して化け物だ。
リュウですら反応出来なかったのに。
あの男は、本当に、どの口をもって自分をただの雑用係だなどと言っているのだろう。
レヴィは、クトーから放たれた光の貫通魔法を避けて、クレーターの真ん中に向けて降下する。
形態変化からのギガフレアは、こちらも無茶をし過ぎた。
むーちゃんが明らかに消耗しているのが感じ取れたので、人竜形態を維持したまま、クトーと決着をつけるのは無理である。
地面に足をついた瞬間に、むーちゃんが分離してぐったりと肩の上に乗る。
「ありがとう、むーちゃん。付き合ってくれて」
「ぷにぃ……」
そっと地面にむーちゃんを横たえたレヴィは、再び自身の形態を変化させる。
「―――〝双刀炎舞〟」
レヴィがニンジャ姿の次に発現させ、ぷにおに一撃を加えた……踏み込みと単体戦闘での攻撃力なら最強の、〈火〉の舞闘士。
両腕に浮かぶ白いヘナタトゥーと、炎の双刀を構えて、レヴィはクレーターの中にふわりと降り立ったクトーと対峙する。
「逃げ回るのは、終わりか?」
「ええ。もう打てる手は全部打ったし、余力もそんなに残ってないもの。……でもそれは、貴方も同じでしょ?」
レヴィは首を傾げ、前後に両腕を広げて半身の前傾姿勢を取る。
クトーもまた、それに応じるように低く、偃月刀の先端を地面につける刺突の構えを見せた。
勝っても負けても、これが最後の真っ向勝負。
ーーー私は、必ず勝つわ。クトー。
貴方に、一人前と認められる為に。




