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おっさんは、戦闘狂たちについて話すようです。

　その後の会議は、大半はつつがなく終わった。

　基本的には、何かを決める会議というよりも報告会の側面があった話し合いだ。

　ーーー本当の秘匿事項に関する話し合いは、その本会議後に行われた。

「では、これにて首脳会議を閉会いたします」

　ホアンの閉会宣言を受けて、各国の首脳が各々の席を立つ。

「クトー・オロチ」

　リュウの後ろで立ったまま控えていたクトーに、話しかけてきたのは獣人総領のディナだった。

「会議はどうでしたか？」

「暇だった。我らにとってはどうでもいい話だ」

　感情の読めない爬虫類の目をした竜人の女性は、今日は獣人の服装の中で最高位に位置する、赤い民族衣装を身につけている。

　身に生えた鱗と調和して美しく際立つような、精緻な意匠のものだ。

「ディナ殿に、よくお似合いですね」

　可愛らしくはないが、非常に美しい。

　クトーの言葉に、ディナは興味がなさそうな様子でうなずいた。

「鎧がないと落ち着かん。明後日が楽しみだ」

「明後日？」

「覚えていないのか？」

　ディナは、クトーの言葉にニヤリと笑う。

「腕試しの大会があるだろう」

「なるほど。参加されるのですね」

　クトーは軽くうなずいた。

　聖結界強化の際に、異空間に作っていた闘技場。

　元々祭りを盛り上げるために作っていたそれを、祝勝祭に合わせてお披露目すると同時に開催される『魔王征伐記念闘技大会』のことだ。

「当然だろう。優勝者はケイン殿と手合わせする権利を得る、と言われてはな」

「……もし優勝しても、お手柔らかにお願いします」

「手を抜いていたら、こっちが殺される」

　殺し合うのをやめて欲しい、と言っているのだが。

　最初は闘技大会に予選から参加する、と言い出したケイン翁を一戦だけと収めるのも苦労したのである。

　リュウが現れる前に、今世最強と呼ばれていた剣聖である〝雷迅〟のケインは『老いてその実力未だ健在である』と、対魔王戦で再び世に知らしめた。

　最上位の悪魔達を、巨人王ムーガーンと共に苦もなく滅したあの老人は、全盛期であればリュウを片手で捻り潰せたのでは、と思うほどに規格外の存在である。

　『参加されたら大会がまるで盛り上がらんだろう！』とファフニールが悲鳴を上げていた。

　もっとも本心は、戦勝者賭博(ギャンブル)のオッズが偏り過ぎて、儲けが少なくなると困るからだろうが。

「レイドからは誰が参加する？」

「3バカだけ」

　バラウールは別の仕事があり、ジグは別のことに興味津々で、ルーはそもそも参加する気がなく、セイとフーは『ディナが参加するなら優勝は無理だ』と諦めた。

「お前やリュウ、あの少女は参加せんのか」

「元々戦うことに興味はない。レヴィはやめさせました」

「なぜだ？」

「少し用がありまして」

「俺も。残念だけどな。ケインの爺さまと手合わせしたかったが、ま、もっと楽しそうなことがあったからな」

「そうか」

　ディナは、牙を見せて笑う。

「では、優勝は貰ったな」

「あまりうちの連中を舐めていると足元を掬われますよ。それに、ムーガーン殿とフヴェルも参加します」

　ギドラ、ヴルム、ズメイはそれぞれに実力者であり、ムーガーンらも本性は禁止と告げているが、人間の姿のままでも十分に強い。

「なるほど、楽しみだ」

「本気になり過ぎて闘技場を潰さないようにお願いします」

　そこに、話を聞きつけたのかムーガーンとフヴェルが近づいてくる。

「俺は参加したくなかったんだ。オヤジに無理やり突っ込まれたんだ！　クソ忙しいのにな！」

「闘争の鍛錬を怠るなど、巨人族にあるまじき恥である。まして我が退いた後の後継がそのような泣き言を言うのであれば、この場で首をもいでやるのである」

「だから参加するでしょうが！　というか、巨人王！？　なる気はないぞ！？」

「強き者が立つのが巨人族の掟。我に次ぐのは現状、貴様である」

「冗談じゃねぇ！」

　割り込んできた割にギャンギャンと親子のじゃれ合いをしている二人から目線を外すと、小国連の王族と作り笑いで話していたホアンと目が合った。

　そのまま、チラリと、視線を会議室の脇にある侍従の立つドアに向けたので、クトーはうなずきを返す。

「そろそろ行きましょう。……会議は今からが本題ですから」