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おっさんは、グレート・ロックに派手な一発をぶっ放すようです。

 

「時間だ」


 夜明けを待ったクトーは、懐中時計に目を向けながら告げた。


 目を向けたリュウにうなずきかけると、竜化の魔法を行使して赤い翼竜へと姿を変える。

 それを見届けてから、今度はクトーが黒い布を顔に巻いた自分と仲間たちに魔法を使用した。


「〝変われ〟」


 全員の姿が、魔族……中でも特に、ツノと尾を生やした悪魔と呼ばれる種族そっくりになる。


 外見だけ変化させる幻影の魔法で、特別な効果は他にないが、看破の魔法でも使われなければ解けることもない。 

 体格が変わるわけではないので悪魔族にしては小柄だが。


『顔を隠した上に、魔族に変わる必要あるのか? 亜人でいいんじゃね?』


 相手がさらに容赦なく攻撃してくることを危惧したのか、リュウがそんなことを言い出したが、クトーは首を横に振る。


「元の姿のままで【ドラゴンズ・レイド】だとバレる危険を犯すよりはマシだろう」


 特にリュウは知名度とともに容姿も広く知られているので、念を入れて翼竜にならせているのだ。


「それに亜人姿で黒色人種領を襲えば、戦争の火種になる」


 この領地はそもそも大森林の南、要塞の東に位置する亜人の支配地域への備えとして置かれているのである。

 

『それこそ陽動の意味があるんじゃねーのか? お優しいこった』

「昨晩帝国民に手を出さないと言っていた口で、あまりふざけたことを抜かすな」


 せせら笑うようなその口調は、彼が冗談を言っている時のものだ。

 眉根を寄せたクトーに、リュウは翼竜の体で器用に肩を竦めた。


「それにこの姿であれば、帝国領を落とした後、攻めたのを魔族の仕業にできるからな」


 帝都が魔族に支配されているのは真実なので、ここの領主が取り込まれていようといまいと、世間的な言い訳が立ち自分たちの名前は表に出ない。


『前言は撤回だ。考えることがズル賢い』

「ちなみに言っておくが、今回、お前は大剣を使うのも人の姿に戻るのも禁止だ」

『……このタイミングでそれ言うか?』

「もし仮に人に戻って小国連の仕業だとバレる、その責任をお前が取るのなら、好きにしろ」


 そうバッサリと切り捨ててから、クトーは改めて仲間たちに説明する。


「もう一度今回の作戦を確認する。目的は二つ、メインは陽動だ。もう一つはマナスヴィンの顔を見て、魔族に支配されていないかの確認をすること。帝国側に被害は出さないように留意しろ」


 何か質問は? と問うと、ギドラが口を開いた。


「もし相手が強かったらどうすんすか?」

「無理せずに撤退していい」


 相手に過度な混乱を与えないよう、人数の少ない側が日が昇った時間に攻める、という、そもそもからして不利な状況なのである。

 

「魔族に攻められた、という事実だけ示せれば、後は相手が勝手に警戒する」


 相手の意識を、帝都と逆側に向けることだけが目的だが、そちら側にいる亜人との間に禍根を残すのは問題である。


 しかし黒色人種領主が何も知らない場合、魔族が襲ってきたとなれば、真っ先に疑うのは亜人帯の向こうにある魔の大陸から来た可能性だろう。 


 そこまで計算に含んでの魔族姿なのだ。


「他に質問はあるか? なければ、始めるぞ。……ジク」

「ヌフン。ルーがいないとやる気が出ないなぁ。もう一週間以上殴られてないし……」


 変態人形術師がニヤニヤと愚痴を言いながら腕を上げると、その袖口からしゅるり、と蛇ゴーレム型の杖が顔を出した。


「〝宿れ〟」


 そのままパチン、とジクが指を鳴らすと、周りの地面に魔力が走る。

 ボコボコと地面が盛り上がり、巨大な個体を含む数百体のゴーレムが出現した。

 

 ジクの操作する数が多すぎるため『進んで殴る』以外の命令を受け付けない単純なゴーレムだが、攻城用として有用な布陣だ。


「俺の魔法が合図だ。気を引き締めておけ」


 リュウの背中に飛び乗りながらクトーが口にすると、仲間たちが各々に手を上げる。


『行くぜ』


 軽く羽ばたいた後に上空へ向けて急上昇したリュウは、そのまま縦に弧を描き、グレート・ロックの上に位置する。


 見下ろすと岩の上には巨大な湖があり、橋で岸と繋がっている中央の島に城があった。


 あれが領主の住まいなのだろう。


 湖の周りにあるのは、街と巨大な翼竜の降着場だ。


 無数に寝そべる翼竜たちの中には、旗に囲まれた一団がいる。

 恐らくはあれが黒色人種領の誇る翼竜大部隊《豪雷》だろう、と思われた。


『おっかねぇな。あれだけの数が統制取れてるなら、Sランクドラゴンも大した損害なしに倒せるぜ?』

「そのドラゴンを単体で仕留める、お前を相手にする向こうが不運だな」

『背中に乗ってる奴も大概だしな』

「俺はただの雑用係だ」


 そこで見張りがこちらに気づいたのか、降着場と見張り台の上で慌ただしく兵士たちが動き出す。


「気付いたな。相手が準備を整える前に、やるぞ」

『おう』

 

 クトーは【死竜の杖】を構えると、何もないグレート・ロックの北端に杖先を向けて、魔法を放った。


「ーーー〝灼き尽くせ〟」

 

お久しぶりでございます。


2020/2/15に、雑用係書籍版の三巻が発売されます!ヾ(๑╹◡╹)ノ"これも皆様の応援のおかげでございます、ありがとうございます!


webにはない帰り道の道中、ほぼ完全に書き下ろしです! 

新キャラと初登場の港町オーツで起こる、翼竜誘拐事件、ゾンビ発生事件、それらが温泉街とオーツを繋ぐ強盗団と結びついて……?


そんな三巻の主舞台は、オーツにある王国の兵士養成学校! レヴィが少女の護衛を命じられて、海辺で【水の布】を身につけます! 胸元に名前があるアレ!ヾ(๑╹◡╹)ノ"クトーさんの変態っぷりも格好良さも加速しております!


ぜひ手に取ってみてくださいね!


またコミック・アーススター、ニコニコ静画にてコミカライズも公開されていますので、そちらもぜひぜひお楽しみください!ヾ(๑╹◡╹)ノ"


挿絵(By みてみん)


雑用は次は18時更新、以後は18時更新になります。なるべく毎日更新を心がけて参ります。


後、新作始めました。下のランキングタグから読めますので、こちらもよろしくお願いいたします!



裏ボスより強い鬼神が、なーろっぱから来たくっころ女勇者と島国ジパングを旅するお話。

N6839FZ『世界を滅ぼすと予言された最強の戦鬼は、返り討ちにしたくっころ女勇者を嫁にしたい。』


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