おっさんは、調査に乗り出すようです。
翌日の昼。
休憩時間を利用して、クトーは仕事場と同じ屋敷内に、滞在が決まったケインを訪ねていた。
リュウ以外に、レヴィとむーちゃんも彼に呼ばれてこの場にいる。
さらに、必要があってトゥスも呼んであった。
広い屋敷ではあるが、ケインが王宮ではなくこちらに滞在しているのは、本人の希望だった。
生家ではあるが自分の場所ではない、という意識が明確にあるようで、息がつまるのだという。
言われてみれば、ケインの若い頃の武勇伝は『なんで王族がそんなところで魔物退治を…?』と言いたくなるような場所でのものが多く、昔から王宮を抜けてあちこちに出向いていたようだ。
「チタツのう……これまた懐かしい名前が出たもんじゃの」
揺り椅子に座ったケインは、相変わらず槍を肩にかけていた。
馴染むには四六時中持っているのが一番だ、という理屈は分かるが、猛獣が牙を手放さないようにしか見えない。
「そのチタツっていう魔族は、ブネより強いの?」
当時はまだ幼く、その頃から辺境住まいだったレヴィにとっては、イマイチ実感が湧かないのだろう。
動かないバラウール二号にじゃれつくむーちゃんを横目に見つつ、ケインの横で床に座り込んだレヴィが首を傾げた。
「どうだろうな。戦った状況がかなり違う」
レヴィが直接顔を合わせたことのある魔王軍四将の名前に、クトーはメガネのチェーンをシャラリと鳴らして彼女に顔を向ける。
「前の王様を操ってたのよね?」
「そうだ」
チタツを相手にした時は、こちらはその当時としてはほぼ最高の戦力で挑んだ。
【ドラゴンズ・レイド】全員が揃っており、当時まだ加入していなかったジョカと、ホアンの育ての親であり現近衛隊長のセキがいた。
それでも苦戦したのだ。
が、リュウの勇者の装備は不完全な状態だったし、そもそも王都攻略戦で消耗もしていた。
メリュジーヌの店にある転移結界から地下迷宮を通って、温存していた少数精鋭で突入、臨戦態勢の王宮の兵らとも戦ったので、三連戦だ。
単独で戦ったブネと、どちらが強い、とも言い難い。
しかし、今回の本題はそこではなかった。
「魔王の言葉を信じるのなら、奴らは今も誰かを操っている。人を苦しめるのが楽しくて仕方がないんだろう」
正直、直接戦闘を仕掛けてくる相手ほど楽な相手はいない。
小は街のチンピラから、大は部隊戦まで。
国家戦争、総力戦レベルまで規模が大きくなれば被害も大きいが、局地戦ならば【ドラゴンズ・レイド】が出向いて殲滅すればいいからだ。
高い戦闘力を持ちながら、それを使わずに策を弄してくる相手だから厄介なのである。
しかも目的が金儲けではない。
損得を勘定しないので、動きが非常に読みづらい相手だった。
「こちらに近い誰かが操られている、と俺は仮定している」
「今まで、露骨な妨害などはなかったかの?」
「現状では、会談の計画に滞りは見られないですね」
操られている者がいるとしたら、ここ最近入り込んだか、あるいは宣戦布告まで鳴りを潜めていたかだ。
「リュウ。それにトゥス翁。会った奴らに普段と違う気配は感じたか?」
「いんや」
『さてねぇ』
2人が共に首を横に振り、トゥスがふよふよと浮いてキセルから煙を吐きながら、問い返してきた。
『お前さんは、身近な連中をどこまで疑ってるのかねぇ?』
「この場にいる以外の全員を、だ」
クトーの言葉に、リュウとレヴィが驚いた顔をした。
「なんだ? 何かおかしなことを言ったか?」
「全員、ってレイドの連中もかよ?」
「クトーが仲間を疑うなんて、珍しいわね……」
当然だろう、とクトーは思った。
個人的にも不愉快な話ではあるが、相手が相手なのだ。
「レイドの連中が乗っ取られている可能性は限りなく低いが、少なくとも興行の話以降に王都の外に出たことのある人間、また外から来た人間は疑う余地がある」
「王宮詰めの連中以外ほぼ全員じゃねーか」
「だからそう言っただろう」
【ドラゴンズ・レイド】の面々から、ニブルやユグドリア、フヴェル。下手をすればホァンやタイハク、セキまで。
あるいは、ファフニールやナイル。ムラクにルギー、そしてルーミィとセンカ、それにムーガーン。
理由をつけられそうで、かつ疑いの余地がある関係者はこれでほぼ全員だろう。
「んで、ここの連中が除外されてる理由は?」
呆れ顔のリュウだが、余計な口は挟まない。
魔王の悪辣ぶりはクトー同様によく知っているのだ。
クトーはメガネのブリッジを押し上げてから、理由を説明した。
「まず、リュウ。お前は勇者だ。勇者と対となる存在である魔王は、お前の魂を犯すことは出来ないという話だった」
魔王との戦いに臨むための冒険の最中、古文書に記されていたことだ。
勇者の魂には手を出せない。
だからこそ、魔王が人を操る術を持っていても勇者は敵対者足り得るのだ。
もし干渉が起こったら、おそらくは本来リュウの持ち物である【真竜の偃月刀】を含む、勇者の装備が反応する。
今までも、彼の身に何かが起ころうとしていれば、警告するように何がしかの反応を見せていた。
「じゃ、私は?」
「ここ最近、お前は常に【ドラゴンズ・レイド】の誰かと共にいる。魔王との接触があったとしたら、一度先代宰相に体を乗っ取られた時だ」
今まで支配されたレヴィが演技をしていたのなら、おかしな点が一つある。
「お前が魔王を身に秘めているのなら、白装束の元になった宝珠が力を与えることはなかっただろう」
あれがむーちゃんに関係のあるものならば、本来聖属性のアイテムである。
あの時は、竜の卵を守るために守護者に力を与えた、と見えた。
さらに、魔王は闇属性の存在であり、操るのは天地の気ではなく瘴気である。
レヴィはあれからも、瘴気ではなく《風》の属性や天地の気を直接行使していた。
「だったら、レイドの人たちに天地の気を使わせてみればいいんじゃ……?」
「後でやる。だから、その程度でバレる相手を支配している可能性は低いと判断した」
戦闘を行わない者の方が、疑いは強まる。
そういう意味ではムーガーンも確認は出来るのだが。
そもそも彼に対してクトーが戦闘を望むことが不敬に当たるし、承諾はしそうだが手加減をするとも思えないので、命の危険もありそうだ。
「それとなく、ムーガーンと手合わせ出来そうなのはケイン元辺境伯ですが、先に遠慮しておいて欲しいとお伝えします」
「なぜじゃ?」
「そのまま殺されたら、それこそトラブルの元だからです」
「惜しいのう。ワシは魔王と戦いに来たんじゃぞ?」
からかうようにそう口にするケインに、クトーは眉根を寄せた。
「しまいには拘束しますよ」
「それはつまらんから嫌じゃの」
ほほ、と笑ってケインは先をうながした。
『次はわっちかねぇ?』
「トゥス翁は、最初から魔王だったのでなければ、力が増している以外に気配に全く変化がないのはおかしな話だろう?」
クトーの言葉に、ピクン、と獣の耳を動かしたトゥスが面白そうに笑う。
『へぇ。気づいてたのかい。兄ちゃんは相変わらず油断も隙もねーねぇ』
「それなりに一緒にいるからな」
トゥスは魂と、それを覆う霊質そのものの存在だ。
それを見切れないほど巧妙に擬態し、歪みなく在り続けられるのなら、そもそもクトーには誰が魔王だったとしても見抜けないだろう。
「トゥスの力が増してるって、どういうこと?」
レヴィには感じられなかったのか、不思議そうに言われる。
「理由は知らないが、洞穴で五行龍の指輪を託された辺りから、だろう?」
『ご明察だねぇ。ま、出来ることは大して変わっちゃいねーけどねぇ』
最後はケインだった。
「ほほ。ではこのワシは?」
「それに関しては、魔王への信頼、という微妙な理由ですが……魔王は、ゲッケイリンの紅茶が嫌いだそうです」
「ほ?」
魔王との最終決戦の前。
壊滅させられた連合軍が集った場所は、その高山地帯の近くだった。
後々調べてみると、ちょうどそちらの方面から向かってきていた派兵が、道中で壊滅させられていたのだ。
戦う前に理由を問うと、帰ってきた答えがそれだった。
『あの地方の茶葉の匂いが嫌いなんだよね。せっかく楽しい遊びをするんだから、血の香りまで含めて楽しみたいじゃない?』
サマルエはあっけらかんとそう口にしていた。
「奴は快楽主義者です。演技のためとはいえ、自分が不快なことはしないでしょう」
「なるほどのう」
「少しおかしいと思うことがあるんだがよ」
「なんだ?」
リュウは腕を組んで、少し眉根を寄せる。
「俺にも奴の気配が感じられねぇってことは、そもそも奴は『本来の力』を持ってない状態で誰かの体を乗っ取ってんじゃねぇのか?」
「どういう意味だ?」
「本人も自覚のないまま、まだ魂を喰われずに中に潜んでる可能性があるんじゃねーのかって話だよ。それなら俺とレヴィはともかく、他は今調べても分からねーぜ?」
腕組みを解いてガリガリと頭を掻くリュウに、クトーはうなずいた。
「そうだな。つまり今後の発芽ということだ。なら、まだ中枢の連中さえ抑えられれば手はある」
興行、そして会談。
これら二つの運営に関わる連中はそう多くない。
「外からの邪魔、という可能性はないのかの?」
「あるかもしれませんが、それはそれで各国の動向を探ればいいでしょう」
外からの仕掛けとなれば、戦争だ。
必ずどこかが動く。
一気に戦力を王都に転移するような真似をされれば分からないが、逆に会談間近には常に臨戦態勢で備えればいい。
「魔王が現在牙を剥いているわけではないのなら、一番疑わしいのは、ファフニールやナイル、次いでフヴェルとムーガーン王、そしてルーミィです」
「根拠はあるのかの?」
「会談そのものを邪魔する事が目的であれば、中枢に近い人間ほど妨害がしやすいからです」
それ自体は単純な話だ。
目的が、興行の失敗なのか、会談での虐殺なのか、で優先順位が分かれるが。
こちらを困らせることが目的なら、何かのトラブルを引き起こせる立場であることが望ましい。
それがクトーの仕事を増やすことにつながる。
そういう意味では、先のムラクとナイルの言い争いもアクシンデントの一種ではあるのだ。
「この5人は外様です。が、まずルーミィの優先順位が下がる」
クトーは、一本指を立てた。
「彼女は『外部の人間としては先に現れた』というだけで、興行に直接口を出す権利もなければ、会談への参加資格もない」
「そうじゃのう」
「彼女からの行動で妨害があるなら、考えられる可能性としては、ゲリラ的急襲です」
内部から混乱を引き起こそうというのなら、根回しがいる。
そのために戦力を得ようと根回しをしていないか、を探らせるのだ。
「あいつの口にした、自分が北からの追放された話そのものがフェイクってことか」
「……実は追放されてない、ってことですか? リュウさん」
レヴィの質問に、答えたのはケインだった。
「そういう建前のスパイじゃ、ということだのう、レイレイ」
「スパイ?」
ニコニコと笑みを浮かべてトントン、と槍で肩を叩いた老剣聖は、目の色だけを真剣なものへと変えて言葉を続ける。
「北が会談に参加する目的が、油断させるための『侵略の準備』であった場合。北の軍隊が王都入りすると同時に牙を剥くじゃろう」
「内外から突き崩すのは、兵法の基本ですからね」
「そうじゃの。密命を帯びた将軍が戦力を集めて内部蜂起し、王都壊滅と諸国トップの一網打尽を狙っている、という可能性じゃ」
「……それって、魔王は関係ないんじゃない?」
バラウールが動かないので飽きたのか、パタパタと自分のもとへ飛んで来たむーちゃんを抱きとめながら、レヴィは難しそうな顔をした。
「単に北の国が戦争しようとしてるだけっぽいけど」
声に嫌そうな色が滲んでいるのは、戦争に対する忌避だろう。
ビッグマウス大侵攻の時と同じかそれ以上に悲惨な状況になるので、クトーとしても好ましくはない話だ。
だが、レヴィに見えていない部分は話すべきだろう。
「北の覇王、ミズガルズ・オルムが死んだ、という情報が以前流れていたな」
「そうね。それが?」
「それが真実であれば、魔王がすでにあの国を掌握している、とする可能性は死んでいない」
外患を見回した時に、現状で一番疑わしいのが北の国なのだ。
以前魔王が策を弄して支配しようとした国の一つでもあり、不穏な噂も絶えない。
敵対者として国民から長い間、認識されている国なのである。
「俺は、そこまで疑わしいところを素直に使ってくるような、優しい相手じゃねーとは思うけどな」
「違いない。が、だからと言って警戒を解く理由にはならないな」
リュウが反対意見を口にするが、クトーは一蹴した。
自身も念のため口にしただけなのか、別に気にした様子もなく首を回している。
そこで、ふぅむ、とケインが唸った。
「しかし、ムーガーンか……ワシが誘った相手じゃし、そこまで行動を把握され巧妙に騙された、とは思いたくないところじゃが」
「ですが、会談そのものに参加する人物です」
会談側を魔王が狙っているとすれば、ファフニールよりもこちらを狙って傀儡にするだろう。
「諸国連が集まった中で、一番襲いやすい場所にいる」
「じゃが、参加者なら条件は他国の連中も同じじゃろう?」
「こちらの警戒態勢が整う前に現れたのが、問題なのです」
「それも、真理じゃの……少し軽率じゃったかのう?」
「最初からそう言っています」
あまり反省した様子のないケインにはっきりと告げて、クトーは他に意見がないかを見回した。
先ほどから、退屈そうに紫煙をくゆらせるだけのトゥスに声をかけてみる。
「翁はどうだ?」
『わっちにゃ、難しい話はこれっぽっちも分かんねーねぇ』
いつものように煙にまく口調で言いながら尾を揺らめかせ、トゥスはニヤリと笑みを浮かべた。
『まぁ、ファフニールが計画の邪魔をしやすい場所にいるってぇなら、ニブルやユグドリアもそうさねぇ』
トゥスに、リュウが同意を示してうなずいた。
「ギルドの支配者と警備計画の責任者だからな」
「そうした役割を加味した上で、ファフニールが一番疑わしい理由はなにかのう?」
「直接魔王と接触している可能性が、一番高いからです」
誰かから興行の情報を聞いた、と最初に王都を訪れたのはファフニールで、彼が計画のために連れてきたのがナイルだ。
ニブルやユグドリアの役割は、興行を行うことが決まってから定まったもの。
それに関してはフヴェルも同様である。
だがこの3人は、役割が決まった後に王都を出入りしていない。
いくらタネを撒くにしても、全く力を発揮できない状態の魔王が王都で接触してどうにかなる相手ではないのだ。
仮にも、魔王城突入に従軍したAランクパーティーの面々なのである。
魔王に奥の手でもあれば別だが、現状では警戒の優先順位が下がるのだ。
「後は王宮連中か。強さの面で一番疑わしいのはタイハクの爺さんだが……」
「一番警戒が強いのもあそこだからな。ケイン元辺境伯が乗っ取られていたのなら、いきなり彼らを殺すのが一番混乱する」
しかし現状ではそうなっていない。
あくまでも興行を行えるかどうかというゲームだからなのか、は、魔王本人に聞いてみないとなんとも言えないが。
「紅茶の件がなければ、ケイン元辺境伯が一番疑わしかったのですが」
「ま、魔王の紅茶へのこだわりはそこまでなの?」
あまりピンとこないのか、じゃれつくむーちゃんの毛並みを撫でながらレヴィが顔をひきつらせる。
「逆に警戒を解くために、というところまで考えておるかもしれんぞ?」
疑われた当のケインからもそう言われて、クトーは手でリュウを示した。
「だからこそ最強のカードをつけています。もし疑いを完全に消そうと思っていただけるのでしたら、俺としてはリュウやレヴィと一緒に大人しくしていてほしいところです」
「別に構わんよ。パーティーハウスにでも赴こうかのう。おぬしのパーティー連中の懐かしい顔もまだ見とらんし、レイレイもむーとやらも可愛いでのう」
レヴィとむーちゃんが可愛らしいのは完全に同意だが、今考えるべきはそこではない。
ケインに居てもらうのなら、この屋敷よりはパーティーハウスか自分の自宅の方が安全かもしれなかった。
「現状の最優先事項は、ファフニールの現在の動向を探る事と、ナイルとフヴェルに監視をつけることだ」
ムーガーンはすでにバラウールが張り付いている。
結果として最も適任な相手を選んでいたようだ。
バラウールならば、本体を突き止められない限り乗っ取りも出来なければ、殺されもしない。
「フヴェルの仕事は任せている時の分まで俺がさらい、ミズチを補佐につける。ナイルも同様だな。サピーを呼ぼう」
王都の一つ先にある街でギルド職員をしている彼女は、クトーが面倒を見た中ではミズチに次いで有能な事務員である。
「ギルドの2人を使うのか? 可能性が低いっつっても、もし乗っ取られたのがニブルやユグドリアだった場合は気づかれるぜ?」
クトーは、リュウの苦言にアゴを指で挟んだ。
俯くと、シャラリ、と眼鏡のチェーンが微かな音を立てる。
「今回の件は、元々魔王側にアドバンテージがある。結果的に動きづらくなればそれでいい」
普段よりも頭を使って、誰をどう組ませるかを考えながら言葉を口にする。
「サピーにはバラウール3号をつけ、ムーガーン王の監視は別の誰かに役割を担ってもらおう。本来ならフヴェルをつけたいところだが……ジョカの方が適任か」
フヴェルの戦闘能力はかの王に劣るし、性格的には相性が悪い。
ジョカであれば、ムーガーンの神経を逆なですることもないだろう。
「呼び戻せるのか?」
「貴族院は王に縛られない。直接交渉でどうにでもなる」
「じゃ、ファフニールを探るのは? 外にいる奴が1人もいなくなるぜ」
「それに、ジョカが外に出ているのなら、奴こそ乗っ取られている可能性もあるのう」
矢継ぎ早に投げかけられる疑問。
しかしそれらに首を横に振ってから、クトーは仙人に目を向けた。
「今、この場で決めたことまでは読めないだろう。元々ギリギリまで外を探ってもらう予定だったジョカを狙う可能性は低い。……トゥス翁。外での情報収集を頼めるか?」
『やれやれ。めんどくせぇことは嫌いなんだけどねぇ』
それは知っている。
しかし現状、信頼できる仲間は少なく、彼以上の適任もいなかった。
「どうしても無理なら、他の奴に頼むが」
『いんや。たまには王都を抜けてプラプラするのも一興さね。兄ちゃんに恩を売るのも悪くねぇ』
ヒヒヒ、とようやくいつもの笑い声を出して、トゥスはキセルで膝を打った。
『引き受けようかねぇ。いずれ貸しは返してもらうさね』
「感謝する」
とりあえずの話し合いを終えて、場は解散になった。




