おっさんは、結界の儀式に挑みます。
「今度こそ、頼むぞ?」
「まだ言ってるのか」
バラウール2号の言葉に、クトーは軽く眉をひそめた。
「そりゃ言うだろ。『まだ』一ヶ月しか経ってねーんだからな!」
「きちんと直しただろう?」
「他人様をあんな状態にしといて、その言い草はありえねぇ……」
人じゃないが。
そう思いながらも、クトーはその言葉を口には出さなかった。
今いる場所は王都の地下であり、国王から借り受けた屋敷の中ではない。
薄く青い光に包まれたその場所は、結界の中心地だ。
場所は当然ながら極秘である。
ここには聖属性結界、異空間形成の核となる二種類の魔法陣に加えて、共鳴魔法陣が敷かれていた。
術具もすでに配置されており、後は魔力を流し込めば起動するようになっている。
クトーは現在、バラウール1号の最終点検を終えたところだった。
小規模実験は成功したが、今日が本番である。
念には念を入れて入れすぎるということはないため、運び込んだバラウール1号と魔法陣の点検は入念に行った。
後ろで騒いでいるバラウール2号は、聖魔法によって異常をきたした為、強化聖結界と異空間魔法陣を本格起動することを過剰に心配しているのである。
「ふむ」
点検を終えたクトーは、改めてアゴを指で挟んだ。
「バラウール」
「なんだよ」
「聖魔法の話だが、防御系魔法ならお前に影響がないことはすでに把握している」
「あん?」
「実際、王都には結界がすでに張られているからな」
バラウール2号はその中で問題なく稼働しているし、王都を出る時も入る時も結界をくぐり抜けているのだ。
現在王都に張られた旧結界は、魔法陣移し替えのために一時的に消える。
その間に攻められることを危惧して、【ドラゴンズ・レイド】は東西南北の王都外縁を、リュウと三バカで固めていた。
可能な限りのメンバーを王都内に散らしてもいる。
さらに、王都の精鋭も秘密裏に重要な場所に配されていた。
前準備の段階で、最大限重要な要素の一つ。
魔法陣起動が無事終われば、後は会談の警備や興行の準備に全力を注ぐ予定だった。
「心配するな」
「信用はしてるが、それはそれだよ」
「よく分からないな」
「お前だって、嬢ちゃんや白毛玉が自分にどうしようもない事をしてたら、危なくねぇって言われたって心配だろうが?」
「ふむ」
それに関しては、一理ある気がした。
むーちゃんとレヴィは、今、ミズチと共に異空間の入り口となる場所にいる。
何かが起こった時に即座に連携が取れるよう風の宝珠は繋ぎっぱなしなので、パーティーの仲間たちには会話が丸聞こえだろう。
「まぁ、良いだろう。しかし改めて、ミスリルが聖属性攻撃を透過するのは研究に値するな。この結界に関することが落ち着けば手をつけてみてもいいかも知れん」
クトーは、久しぶりに研究をして少し熱が入っていた。
仕事がてらに出来そうなことを考えてみるのは、少し楽しいかもしれないと思っている。
「ヌフ。それってなんの役に立ちそうだい? クトーちん」
作業の間、一緒に点検をしていた変態研究者のジクが口を挟んできた。
入口のそばには、彼と片時も離れないドール型ゴーレムのルーが、静かに佇んでいる。
「ぼ、僕ちんと違ってクトーちんは、実益のないことはしないよねぇ? 『思念の宝珠を内蔵したミスリルゴーレム』なんて、多分他にいないだろうし……」
ガリガリに痩せた白衣の男は、相変わらず不健康そうな顔色をしていて、篭ったような早口で言う。
顔にはヘラヘラと笑いが浮かんでいた。
直した時には内蔵した魔法陣などに影響が見られなかったので、クトーも最初はバラウール2号の意外な弱点が露呈しただけだと思った。
「『ミスリルが聖魔法を透過する』という観点で見ると、使い方次第では有益だ。興味があるのか?」
「ヌフ。もちろんだよぉ」
『自分を殴るゴーレム』を作ることを生きがいにしてはいるが、彼はかなり好奇心旺盛だ。
その知識への貪欲さは、たまにクトーでも感心する。
「例えばだが、マージ系の魔物には有効な手段になる可能性がある」
魔法を主体に使う魔物は、肉体的には脆弱なことが多い。
普通は後衛が防御結界で魔法を防ぎ、迅速に前衛が倒すのが常道だ。
「しかしミスリルを使った鎖鎌や簡易結界などで拘束すれば、魔力の消費も抑えられるし、魔法自体の威力が弱まるだろう」
「そうだねぇ。そこに聖魔法を放つの?」
ジクの言葉に、クトーはうなずいた。
ミスリル系の武装は、相手と同時に自分の魔法の威力も弾いてしまう。
が、聖属性攻撃魔法ならその心配はないのだ。
「行動を制限したまま攻撃可能。戦術としてはそれなりに価値があるとは思うが」
同じような戦術はすでに使われているが、パーティーの攻撃手段が魔法が主体であれば、拘束者と術者になってる高度な連携が求められる。
魔法着弾と同時に拘束を解かないと、無駄撃ちの頻度が上がるからだ。
が、拘束したまま攻撃出来るのなら戦術としてのハードルが下がる。
「そうだねぇ。問題は、最低でも闇属性の魔物を倒せる高位聖魔法を使える人や、ミスリル系武装を手に入れられる人が、下位冒険者には少ないってことくらいかな?」
ヌフ、ヌフ、と笑いながら、ジクがクトーを指差した。
「さらに、それが出来るクトーちんは、そもそもそんな戦術が必要ないんじゃないかなって思うけど」
「幅を広げるのは大切なことだろう」
対魔物戦において、出来て無駄なことなど基本的にあまりない。
「しかし、それはたしかに問題だな。ミスリルよりも効果が落ちるが安価な拘束武器や、特定魔法を透過する素材などではどうだ?」
「格は落ちるけど、有効かもねぇ……何かあるかなぁ……武装自体がダメージを受けると元も子もないしねぇ」
サラマンダー系の皮膚装備に氷魔法、などの組み合わせでは、弱点魔法を受け続ける武器の寿命が短くなってしまうのだ。
「うーん、頭がしゃっきりしない。ちょっとルー、僕ちんを殴って……」
「ここではやめろ」
『マスター、殴られたいのですカ?』とルーが命令を受諾する前に、クトーはジクの言葉を遮った。
2人が殴り愛でヘマを打つことはないとは思うが、今この場にあるのは最優先で守るべき魔法陣の群れとゴーレムである。
「ヌフ、残念だなぁ……じゃ、外に出てから考えようかな」
「そうしてくれ」
そこで、入口からフヴェルが現れた。
「準備が終わった。人を入れるぞ」
「ああ」
「そこのポンコツは大丈夫なんだろうな?」
言いながらバラウール2号をみた、赤い瞳に白髪を持つ美貌の青年は相変わらず不機嫌そうだ。
が、化身した氷の巨人は、どこか張りのある顔をしている。
自分たちの研究成果が、目に見える形で現れるのを心待ちにしていたのだろう。
「誰がポンコツだって?」
「貴様だ貴様。トラブルの元である思念の宝珠など取ってしまえ」
「それをしたら、むーちゃんの遊び相手がいなくなるだろう」
仲良く言い合う2人に、クトーは口を挟む。
このゴーレムは、知性を持つからこそ遊び相手として相応しいのだ。
「先ほどバラウールにも言ったが、1号と2号の問題は王都に戻ってからの調整で解決した」
2号が得た学習を即座に1号が取得する形で共鳴していたのを、2号の状態が正常であることを確認してから情報を取得するように、術式を組み直したのだ。
思念に異常が見られた場合には、貯蔵記憶を使って速やかに2号を元の状態に復帰させるようにもしてある。
「むっつり野郎。この変態野郎にポンコツを触らせてないだろうな?」
「いつも思うが、お前の呼び方は名前を呼ぶよりも長い気がするな」
クトーには、わざわざそこまでの労力をかけて悪口のような呼び方をする意味がよく分からない。
不思議に思いつつも、質問には答えた。
「目視点検を一緒にしただけだ」
「ならいい」
フヴェルはうなずいて、さっさと外に出た。
それに続いて地上に出たクトーたちは、異空間の入り口となる場所へ向かう。
以前、フヴェルに叱責されて向かった候補地。
そこに数名の男女が待っていた。
大通りの方角に面した、広い畑の隅。
そこに四角錐の柱が立ち、表面には術式が刻まれている。
今はまだ警備兵に守られているだけだが、準備が終われば覆うように小さな建物を建てる予定だった。
「始まるの?」
「ああ」
むーちゃんを抱いたレヴィが、そう問いかけてくるのに、クトーはうなずいた。
腕の中の子竜は、飛び回れないからか退屈そうにプラプラと尻尾を揺らしている。
彼女の横にはミズチが立っており、目立たない外套を着て目深にフードを被った者たちも3名いた。
そして、土地を売ってくれた老人と興行の責任者であるナイル。
周りを、普段の警備より多い憲兵たちが囲んでいる。
クトーはまず、老人に歩み寄って話しかけた。
「要請に応じてくれたことを、感謝する」
「こちらこそ、要望を受け入れていただき、ありがとうございます」
老人がうやうやしく頭を下げるが、無理を言ったのはこっちの方だし、そもそも自分はそんな敬意を払われるような人間ではない。
「もしこの土地の周りが賑わい、迷惑するようなことがあれば言ってほしい。必ず対処する」
畑との間に柵を立てることで、一応仕切りはしてあるが今後この辺りには大勢の人が来る。
ホアンは、もし必要ならば畑と建物の間に壁を立てる、とも約束してくれていた。
「重ね重ね……」
「礼は良い、と言っている。言うべきはこちらだ」
クトーが外套の3名に目を向けると、大中小の彼らはそこだけ見えている口もとで微笑んだ。
「あの御仁たちはどなたですかな?」
ふと気になったのか、何の気なしに問いかけて来る老人に、中くらいの背丈の男が歩み寄って来る。
「内緒だけど。一応、この国を預かっている者だ。私からも、貴殿に感謝を」
笑みを含んだ声音で言いながら軽く外套をずらして見えたその顔に、老人が驚愕した。
「こ、国……ッ!」
「それ以上はダメだよ」
そっと口もとに指先を当てたホアンに、クトーはため息を吐いた。
老人は、今にも心臓が止まりそうな顔をしている。
残りの2人は、宰相のタイハクと近衛隊長のセキである。
増えた警備兵は、近衛と宮廷魔術師たちの偽装だ。
「あまり人を驚かすな」
ホアンに苦言を呈しながら、クトーは老人に目を向けた。
「この場だけ、気にしないことだ。どうせ元はただの田舎貴族だからな」
「言ってくれるね。間違ってないけどさ」
久々に城を抜け出し、執務から解放されて上機嫌なのだろう。
元の位置に戻ったホアンは、クトーに言った。
「始めてくれ」
「ああ。……準備はいいか?」
問いかけると、風の宝珠からそれぞれに返事があった。
背後で、セキと将軍のやり取りも聞こえる。
「バラウール」
「はいよ」
共鳴の媒介となるサテライトゴーレムが、四角錐の前に置かれた魔法陣の上に立った。
それが終わると、タイハクがホアンに問いかける。
「結界を解除いたします。よろしいですかな?」
「許可する」
結界が消える気配と同時に、緊張感が高まった。
クトーはその中で、迅速に術式を練り上げる。
本来なら偃月刀で行うはずだった術式展開を、指輪によって作り上げた魔力の『器』を媒介に行う。
「央に女神、四方に四神、八方に四神。九つの柱に力添えを願う」
クトーは短縮された呪文ではなく、古来より伝わる結界の聖句を唱えた。
「我、天地の気より聖の威を顕し、永き時、守護を望む意志を持つ者なり」
背後に、ふわりと何かが寄り添うような気配を感じた。
律儀なことだ、とクトーは、この前初めて顔を合わせた女神の顔を思い浮かべた。
そして、締めの句を口にする。
「邪なる者に排斥を、請い願う者に祝福を、我、ここに世界の片隅を封ずる」
そうして、クトーは四角錐に魔力を流し込んだ。
魔法陣とバラウール、それら全てが白く清浄な光に包まれる。
新たな結界が生まれ広がる気配と共に、クトーはそれに重ね合わせる術式を細心の注意をもって練り上げた。
「我、世界の律を異なる理を持って、安定の内に顕す。其は時の流れに通じ、しかし神属なり。故を以って天地の気より虚影の実と成らしめん」
聖結界の広がりの後を追うように、ぽう、と黒い光を放った四角錐から狭い場所をこじ開けるように力の気配が広がっていく。
入り混じる異なる術式が、天地の気を魔力へと変換する魔力の『器』と繋がり、しばらく経った後に安定を見せ始めた。
細心の注意を払いながら、それぞれに綻びがないかを観察したクトーは、仲間たちを振り向いた。
フヴェル、ジク、ミズチ。
それぞれが肯定の仕草を返し、最後にリュウの声が聞こえる。
『……成功だな。完璧だ』
その声に、おおお……と宮廷魔術師たちの感嘆が漏れた。
※※※
『……ヒヒヒ。兄ちゃんは本当、油断も隙もねーねぇ』
無事に成功した儀式の後。
その場に居残っていたクトー、レヴィ、バラウール、ナイルの前に、トゥスがふわりと姿を見せた。
「どういう意味だ?」
この仙人が神出鬼没なのは今に始まったことではないので、特に驚きはなかった。
何か、興味を引くような面白いことがあったのだろうか。
『あの異空間形成の術式……見覚えがあらぁね』
言葉を濁しているが、クトーはその内容を正確に察した。
トゥスに導かれた神域を形成していた魔法の話だ。
クトーはあの後、修験者の里に一泊させてもらった際に、改めて『場』の情報を見ていたのだ。
「元々、それが狙いだったんじゃないのか?」
クトーは、人の作るカバン玉と、魔族の生み出した瘴気結界を元に異空間形成の魔法陣を組んでいた。
それが完成しつつあるタイミングで誘いをかけたのが、トゥスだ。
『そんなつもりはなかったよねぇ』
どこまで本気か分からない言葉を口にしながら、トゥスは耳をピコピコと揺らした。
相変わらず外見は可愛らしい。
神域。
すなわちそれは神による異空間形成魔法の賜物だ。
3種の形成魔法の内、どれが最も神の属する領域である聖結界と相性がいいかなど、考えるまでもない。
「助かった」
『だからそんなつもりはねーって言ってるよねぇ?』
ふ、と煙を吐いたトゥスを見て、ナイルがここに来て初めて口を開く。
「この方が、クトーさんの言っていた待ち人でございますか?」
「いや」
むーちゃんはいいかげん待ち飽きたようで、スヤスヤと眠っている。
「遅いわねー」
レヴィが子竜の背中をさすりながら、大通りのほうをチラチラと見ている。
彼女には待ち人の正体を伝えていた。
懐かしい、と言い、この場で待っているのだ。
するとちょうど折良く、声が聞こえた。
「おお、この辺か!!」
「ここか、じゃないですねぇ。人の話を聞かないから遠回りする羽目になったんですからねぇ」
「うるせぇアホタレ! ちゃんと止めねーオメーが悪いんだよ!!」
「理不尽ですねぇ。しかも声がデカいですねぇ。恥ずかしいんでやめてもらえませんかねぇ」
「張っ倒すぞ!」
やかましい声が近づいてきて、ナイルが少し迷惑そうな顔をする、が。
「あれが待ち人だ」
クトーが指差した先には、妙にデカい二人組がいた。
1人は、ヒゲモジャでイカツイ顔の大男だった。
昔のケガの後遺症で軽く右足を引きずりながらも、元気な様子でもう1人に吼えている。
頭をはたこうとする手を避け、罵詈雑言を柳のように受け流しつつ挑発しているのは、大男よりも少しだけ背の低い青年だ。
こちらも、人の良さそうな顔をしてはいるが筋骨隆々である。
レヴィがその2人を見て笑みを浮かべながら大きく手を振った。
「ムラクー! ルギー!」
「おお、レヴィ!!」
「お久しぶりですねぇ」
2人がこちらに気づいて、手を振り返す。
「……あれが?」
ますます訝しそうな顔をするナイルは、どこか納得出来ないようだった。
「優秀な職人だぞ。魔物の総合加工を専門とする者はそれなりに見てきたが、腕前は間違いなくトップクラスだ」
「クトーさんがそう仰るのでしたら、そうなのでしょうけど……後で、証拠を見せていただいても?」
商人の娘らしく、自分の目で見たいという姿勢だ。
好ましいことなので、クトーはうなずいた。
が、その審査はムラクなら必ず通るだろう。
彼は魔王を倒す前からの知り合いで、今は温泉街クサッツに住む魔物素材総合加工職人であり。
「リュウの装備を存分に見せてもらえばいい。古びて使い物にならなくなっていた竜の装備を完璧に修復したのは、あの男だ」
「……!?」
ナイルは、その言葉に目を剥いた。
『相変わらず、いい土の加護を纏ってるねぇ』
彼の雰囲気を気に入っているトゥスが、心地好さそうに笑みを浮かべる。
「よぉクトー!! わざわざ馬車まで用意して至れり尽くせりで呼び出しやがって!」
近くまで来たムラクは、クトーの肩を強く叩いた。
「相変わらず加減しないな」
軽く眉をしかめて、クトーはムラクに言い返す。
その横にいるルギーにも目を向けた。
「依頼を受けてくれて感謝する」
「いえいえ、出不精の親方が二つ返事だったんでねぇ。依頼の額もデカいし、むしろ助かりますねぇ」
ニコニコと、ルギーが揉み手をする。
彼らを呼び寄せたのは、異空間内の闘技場建設の依頼をするためだった。
何せ初めての試みであり、内部での戦闘に耐えるだけのものを作る必要がある。
その為に、素材を調達することは出来るが、アイデアや実際の工程などを管理する熟練の防具職人が不足していたのだ。
何せ、各国トップクラスのメンバーに加えて、リュウまであわよくば暴れる気なのである。
生半可な建物では、保たない。
「さっそく現場を見せてくれ!」
旅の疲れを微塵も感じさせずに、ムラクが言う。
「いいだろう」
内容はすでに伝えてあるので、やる気十分なようだった。
「勢い余ってコケないでよね」
「ガキじゃねーんだから、そんな間抜けな真似するか!!」
「いやぁ、親方ですしねぇ」
今にも踊り出しそうなムラクから、むーちゃんを抱いて一歩離れるレヴィと、それにチャチャを入れるルギー。
相変わらずである。
「こっちだ。同じようにしてついてこい」
クトーは四角錐に近づくと、軽く手を触れた。
すると、まばたき一つの間に景色が変わる。
待っていると、次々と仲間たちが入ってきて、感嘆するように声を上げた。
「広いわね……」
『流石だねぇ、兄ちゃん』
「白毛玉を遊ばすのにもいい空気だね」
「これだけ面積があれば、設営には困らなそうですね……外にも建材を置ける余裕がありますし」
「おー、妙なとこだが……ここに頑丈なヤツを建てりゃいいんだな?」
「経費にも糸目はつけないらしいですが、時間を考えて下さいねぇ。いやでも、こりゃ凄いですねぇ」
何もない円蓋を持つ土でできたような空間だが、不思議な輝きに満たされて視界は広い。
その広大な土地は、王都の4分の1程度の広さがあった。
書き足したいことが出来て一日お待たせしましたが、下準備編はここで終了です。
再開まで二週間ほどお待ち下さい。




