表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Satanic express 666  作者: 七針ざくろ
さぶうぇい!
43/48

その6 ~パンの耳詰め合わせ~

~流行の発信源~


ケ イ 「いっせーのせ、3!」

       ケイ・ポール・チャドの三人は貸しスタジオで暇そうに指を立てる

       遊びをしていた。

       そこへギターを担いだレイラが入ってきた。

レイラ 「ゴメン、ゴメン待った?」

チャド 「あ~、いつもよりは早いほうじゃねえか?」

       突然、レイラは思い出したようにケイを見た。

レイラ 「そうそう、来るときに赤い頭巾被った子が前を歩いてたから、ケイかな

     って声を掛けたら全然知らない子だったの」

       レイラが笑いながら話した内容にチャドとポールは同じように笑い

       ながらうなずいていた。

チャド 「俺も間違えた事あるわ。しかも正面から」

ポール 「確かに最近、ケイちゃんの真似をしている人を見るね」

       明るい笑い声の中でケイだけは眉間にしわを寄せていた。

ケ イ 「みんな、アタシの事を頭巾だけでしか見てないの?」

       彼女の問いかけにスタジオ内は水を打ったように静まりかえった。

レイラ 「いや… 条件反射? チャド兄さんの件は論外だけど、赤いフード付き

     ケープを見たらケイが真っ先に思い浮かんじゃうんだよ」

チャド 「論外って… 俺は赤いフードに金髪の子だったから間違えたんだって、

     お前よりはちゃんと見てるぞ」

       三人は揃ってケイの顔を見た。

レイラ 「でも、同じ格好されるって事は人気があるってことでしょ」

ケ イ 「人気があっても、間違えられるのはなんかな…」

レイラ 「じゃあ、フードに角でも付けたら?」

ケ イ 「嫌だよ、普通がいい」

       チャドがふと時計を見ると針は12時を指していた。

チャド 「レイラ来たばっかだけど。とりあえず、飯にするか」

レイラ 「こっから一番近いのだとぉ…」


       一行はファミレスで昼食を取ることにした。

ケ イ 「水取ってくる」

レイラ 「じゃ、ウチはコーラね」

チャド 「俺、オレンジジュース」

ポール 「俺お茶なら何でも良いよ」

       口々に自分の飲み物を頼むメンバーにケイは呆れ顔を見せた。

ケ イ 「まだ注文してないけど… てか、アタシをパシらせないでよ」

レイラ 「どうせ頼むじゃん、ウチも行くよ」

       ケイとレイラがドリンクバーへ来るとレイラは女子高生らしい二人

       組に声を掛けられた。

女子A 「あのぉ… ロートケプヒェンのレイラさんですよね?」

レイラ 「ん? そうだけど」

       レイラが何気なく答えると女子高生二人は互いに抱き合って喜びを

       爆発させた。

女子A 「どうしよう! ヤバい、ヤバい! 本物だ!」

女子B 「ヤバい! カッコいい! テンション上がりすぎて死にそう!」

       目の前で騒ぐ彼女たちにレイラはファンに対する素直なうれしさ、

       そのうるささに対する素直な苛立ち、という相反する二つの感情の

       間でなんとも言えない顔を浮かべていた。

女子B 「あのっ、写真いいですか?」

       騒ぎ声が落ち着くと、一人がスマホを取り出した。

レイラ 「別にいいけど、他のメンバーもいるし一緒に撮る?」

女子AB「マジっすか!」

レイラ 「ほら、そこにケイ居るし」

       レイラが水を汲んでいるケイを指さすと女子高生二人は彼女に目を

       向けた。

       しかし、レイラの時とは反応が違った。

女子A 「えっ… あの人ですか?」

女子B 「もしかして… ズキンさん?」

       微妙な視線を受けながらケイがやってきた。

ケ イ 「何か用ですか?」

レイラ 「この子達、ウチらのファンみたいなんだけど…」

       ケイに対する反応の悪さにレイラの説明もたどたどしくなった。

女子A 「あっ、ごめんなさい。最近、周りにズキン系女子が多くて… そのぉ…

     ただのファンの方かと……」

女子B 「なんか… 思ってたよりも普通だったので……」

       ケイは持っていたグラスを落とした。


       ファミレスからスタジオへの帰り道。

       ケイはボケーッと空を見ながら歩いていた。

レイラ 「さっきの引きずってんの?」

       レイラに声を掛けられた彼女はコクンとうなずいた。

ケ イ 「やっぱ、角付ける…」


       その後、ケイは頭巾に角を付けてみた。

       それから数日の内に角付きフードがファンの間で流行りだし彼女の

       カリスマは再び頭巾の中へと隠れていった。




~みんなの昔話 猿蟹合戦編~


       これは街行く人に「『猿蟹合戦』の内容を教えてください」という

       質問に答えていただいたものをまとめたものです。


シテツ 「昔々、カニさんが大きなおにぎりを拾いました」

コクテツ「そこに見ず知らずの猿が現れ、品種も発芽率も分からない柿の種一つと

     おにぎりを交換してくれと小学生でも分かる露骨なシャークトレードを

     吹っ掛けるという暴挙を働きました」

J B 「でも所詮は蟹。甲羅の中はカニミソしか入っていないから、猿が都合の

     良いエンディングを話すとそれを信じ込んでしまったの」

メ イ 「カニは無事に柿の木を育てるんだけど… 『桃栗三年柿八年』と昔から

     言われるように結構な年数を柿の栽培に費やしていることを考えると、

     そもそもカニはそれなりの生活環境を持っていて最初のおにぎりも必要

     だったのか疑問が残るんだ」

シテツ 「やがて、柿の木には沢山の実がなりました。しかし、カニさんは木登り

     ができないので柿の実を取ることができませんでした」

コクテツ「んで、カニは絶望に打ちひしがれて自殺を決意するんだけど…

     なんと、首吊り用のロープが木に掛けられません!」

ア ナ 「全ては計算通りといった感じで、種を渡した猿が蟹の所にまた来たの。

     そして、こう言ったの「キミの代わりにこの木に登ろうか?」ってね」

コクテツ「カニは猿に木に登ってもらい、ロープを掛けてもらいました」

シテツ 「カニさんは死んでしまいました。残された子供たちはカニさんを死なせ

     た猿を恨みました」

J B 「だけど、カニは柿の木が自分の背丈より高くなった時点でこうなること

     を考えておくべきだったと思わない?」

メ イ 「ほぼ逆恨みだけど、『目には目を、歯には歯を』理論で子蟹たちは猿を

     殺しに行くことになるんだ」

コクテツ「第一次猿蟹合戦の開戦です」

ア ナ 「合戦でも敵討ちでも宣戦布告はしなきゃダメでしょ」

コクテツ「蟹軍の猿に対する宣戦布告を受け同盟関係にあった栗軍、蜂軍、臼軍が

     支援を表明しました」

メ イ 「表向きは親蟹の敵討ちって話だけど。実際は猿の剛田主義とそれに反対

     する者たちのイデオロギー闘争でもあるんだ」

シテツ 「あと… 昆布と卵が居たような…… 居なかったような…」

コクテツ「そして…7月8日。拮抗していた戦局が大きく動きました。

     蟹連合軍に友好的であった卵と昆布がホテル・パールハーバーにて猿に

     攻撃されました。そう、イケダヤ事件が起きたのです。

     この時、卵が階段から転げ落ちて割れた事は 舞台やドラマで再現され

     有名なシーンとなりました」

メ イ 「だから卵や昆布は話によっては全く出てないんだよね」

コクテツ「パールハーバーでの猿の奇襲攻撃により盟友の昆布を締められた牛糞が

     それまでの静観の態度を一変させ連合軍側への参戦を表明しました」

J B 「これで猿は足元をすくわれるのよ」

コクテツ「そして、12月14日。蟹、蜂、栗、臼、ウンコの連合軍総勢47士が

     猿邸への討ち入りを決行しました」

シテツ 「猿はまだ家に居なかったので、栗は」

ア ナ 「塹壕を掘り、砲撃戦の準備」

シテツ 「子蟹は」

ア ナ 「パラシュート降下による白兵戦の準備」

シテツ 「蜂は」

ア ナ 「敵艦隊への雷撃準備」

シテツ 「うんちは」

ア ナ 「敵陣内部からの工作活動」

シテツ 「臼は」

コクテツ「速い! コーナートップに駆け上がった!」

J B 「そんな危険な自宅に間抜けな猿が帰って来るの…」

シテツ 「帰ってきた猿は暖を取ろうと囲炉裏に近づきました」

ア ナ 「砲撃開始!」

シテツ 「突然、栗に攻撃された猿は火傷をしてしまいました。急いで火傷を冷や

     そうと水瓶に走って行きました」

ア ナ 「蟹部隊展開! 栗は援護射撃!」

シテツ 「蟹に挟まれた猿は薬箱へと走って行きました」

ア ナ 「敵艦接近、蜂部隊出撃!」

シテツ 「蜂に刺された猿は大慌てで家から飛び出しました」

ア ナ 「敵部隊後退を確認。情報網を遮断して退路を断つ!」

シテツ 「こうして、身動きが取れなくなった所に」

コクテツ「百年に一本の木材が飛んだ! ハイフライフロー、決まった!

     おっと、臼橋またコーナーに登った! 二発目だぁ!

     ハイ フライ フロー! フォールに入る!

     1! 2! 3! 入った! スリーカウント取りました!」


J B 「ここまでがお子様向け」

メ イ 「大体は臼に圧殺されて終わるんだけど、この話の続きがあって…」

J B 「臼に潰されてもまだ息があった猿は命からがら逃げ出したの。でも…

     その先には子蟹が待っていて彼の首を切るの」

メ イ 「完全には切り落とせないにしても、頸動脈を切って絶命させる」

J B 「蟹のハサミじゃ、スパーンと綺麗には切れないでしょうね。引きちぎる

     ようなブチィっと鈍い切れ方じゃないかしら?」

メ イ 「こうして、親の敵討ちは成就したってオチ」




~ジャパニーズスタイル~


コクテツ「読者の皆様、こんにちは。轍洞院コクテツです

     皆様は日々の生活に物足りなさや不満をお持ちですか?


     ……

     

     今、ほ~んの少しでも心当たりが有った方は本日ご紹介する商品が大変

     おすすめです!

     

     本日ご紹介するのは、国産高級藁人形です」

       コクテツは丁寧に束を揃えて作られた藁人形を見せた。

コクテツ「こちらの人形に使われている稲藁は最高級米を収穫した後のものを農家

     から直接買い付けた新鮮な物だけを使用しています。

     また、各部を縛る赤い糸に国産のシルクを用いて職人が一体一体手作業

     で作り上げることで他の藁人形には無い上質な高級感を演出します」

       

       ハッピーイエロークリニックの受付や診察室にこの藁人形が置かれ

       ている図が示される。

コクテツ「このように、日々の味気ない空間に和のテイストを加えるワンポイント

     として飾れば、場の空気が変わること間違いありません!」


       今度は幼い少女がこの藁人形で遊んでいる。

コクテツ「全て天然素材でできているので小さなお子様やペットがいるご家庭でも

     安心してご使用になれます」


       コクテツはどこからか五寸釘を取り出した。

コクテツ「今なら、さらにこのオリハルコン製の五寸釘も一本お付けします」


       神社でシナモンが微笑みながら大木に藁人形を五寸釘で打ち付けて

       いる。

コクテツ「伝説の金属オリハルコン製ですので、釘を打っている間にも折れ曲がる

     心配が無く、女性でも簡単に藁人形を打ち込むことができます」


       今度はシナモンがコンクリートの壁に藁人形を打ち込んでいる。

       釘を打ち終えた彼女がクルッと振り返ると、その後ろの壁一面には

       大量の藁人形が打ち付けられていた。

コクテツ「従来の鉄の釘では打ち込めなかった場所にも簡単に打つことができます

     ので、コーディネートも自由自在」


       どこかの家族の団らんの中心に藁人形が置いてあった。

コクテツ「この国産高級藁人形が今なら税込み3万7千564カーネ!


     なのですが… 

     販売459万体記念としまして、藁人形と五寸釘をさらにもう一セット

     お付けして、お値段は変わらず3万7千564カーネでご提供します」


       シナモンが部屋に飾ってあった藁人形を水の張った洗面器に静めて

       から外に出る、彼女は外出先の森で藁人形を木に打ち付けた。

コクテツ「二つあれば、ご自宅でも外出先でもいつでも誰かを呪い殺すことができ

     て大変便利です」


コクテツ「国産高級藁人形とオリハルコン製五寸釘セット。今なら、もう一セット

     付いて税込み価格3万7千564カーネ」


     お電話番号は012……」


       視界がテレビの砂嵐のようになりコクテツの姿が見えなくなった。




~自然教室~


       ムレウマ森林保護レンジャーのベースキャンプの中。

ハルナ 「はぁ~い♪ よい子のみんな~! 今日は、ムレウマこども自然教室に

     来てくれてありがとう。私はみんなと一緒にお勉強するハルナお姉さん

     だよぉ」

       ハルナはとびきりの笑顔で子供達に自己紹介をしていた。

       そんな彼女の前には子供のように目を輝かせた轍洞院姉妹だけしか

       いなかった。

ハルナ 「…… ヤメヤメ、明日から使える遭難時のサバイバル術教室に変更」

シテツ 「えっ! 何でですか」

コクテツ「自然教室楽しみだったのに!」

       ハルナは目の前の姉妹をそれぞれ指差した。

ハルナ 「年いくつ」

コクテツ「23」

シテツ 「18です」

ハルナ 「()()()自然教室に参加しようとして、よく実年齢言えるね…」


       その後、三人はムレウマの森深くを散策していた。

ハルナ 「ん~、何から扱おうかな」

       周囲をキョロキョロ見回していたハルナは実を付けた一本の木の前

       で立ち止まった。

ハルナ 「おっ! ゲッソールの実がなってる」

シテツ 「食べれる実なんですか?」

ハルナ 「ダイエットに効果的な果物だよ」

       ハルナの説明を聞と、コクテツがすぐに木から果実を穫ってシテツ

       に渡した。

コクテツ「はい、食べなよ」

シテツ 「いや、ダイエット必要無いし!」

       否定しながらも受け取ってしまったシテツはピンク色の果実をじっ

       と見つめていた。

コクテツ「ねーねー、ハルナお姉さん」

ハルナ 「子供ぶらなくていいから… で、何?」

コクテツ「あの果物ってダイエットにどんな効果があるの?」

ハルナ 「下剤。しかも、超強力で即効性が高い」

       ハルナが答えると、「ゴクリ」と何かを飲み込む音がした。

       彼女が音のした方を見ると、大量の冷や汗を浮かべたシテツが涙目

       で口を固く閉ざしていた。

ハルナ 「まさか…」

       シテツは小さくうなずきながら、一口だけかじられた果実をハルナ

       に見せた。

ハルナ 「あっちゃぁ… よく分からない物は絶対に食べない。サバイバルの基本

     だよ」

コクテツ「おおっ! スゴく為になる!」

シテツ 「いや… 食べれそうな… 説明してた……」

       呆れるハルナと感心するコクテツに挟まれて、絶体絶命のシテツの

       お腹が轟音を上げ始めた。

シテツ 「あ、あの… 最寄りの… トイレって……」

ハルナ 「ベースキャンプしか無いよ」

シテツ 「えっ… じゃあ……」

ハルナ 「そこら辺の草むらだね」

       サラリと答えたハルナにシテツは大きく首を横に振った。

シテツ 「じょ… 女子… ですよ……」

ハルナ 「男でも女でも出る物は出るんだから、それは仕方ないじゃん」

シテツ 「(涙声)で… でもぉ……」

       少し泣いているシテツの顔の前にハルナはビシッと人差し指を立て

       鋭い視線を向けた。

ハルナ 「生き残る為には恥なんか捨てろ! たかが一回野糞して楽になるのと、

     いい年こいて惨めにビチグソ漏らすのどっちの方がマシ?」

シテツ 「うっ……」

ハルナ 「そうでなくても、今は生きることが最優先。漏らした場合、衛生環境の

     悪化で感染症などの恐れがある。 ……あとは分かるね?」

       諦めたようにシテツはトボトボと草むらに歩いて行った。

コクテツ(スゲぇ… ガチなサバイバル教室だ……)




~みんなの昔話 金の斧編~


       これは暇な人に「『金の斧』の内容を教えてください」という質問

       に答えていただいたものをまとめたものです。


シテツ 「昔々、あるところにとても真面目な木こりが居ました。ある日のこと彼

     が泉の畔で」

コクテツ「村の祭りであるトマホーク投げの練習をしていると」

シテツ 「斧を泉へと落としてしまいました」

J B 「不注意も良いところよね」

シテツ 「すると、泉から女神様が現れました」

J B 「普通なら、上から斧が降ってくれば訴訟問題になるけど」

シテツ 「彼女は右手に金の斧、左手に銀の斧を持っていました。そして、悲しみ

     に暮れている木こりにこう言いました「あなたが落としたのはこの金の

     斧ですか?」」

コクテツ「すると木こりは急に猛烈に怒り始めました「金なんかでできた斧で木が

     切れるか! そんなもんすぐに曲がるだろ、馬鹿野郎!」と声を荒げて

     正論で言い返しました」

シテツ 「女神様は「では、この銀の斧ですか?」と尋ねました」

コクテツ「木こりは「鉄だよ、鉄! お前、斧を見たことないのか?」とマジギレ

     しました」

シテツ 「女神様は泉へ戻り、底から木こりが落とした斧を持ってきました「この

     斧ですか?」」

コクテツ「「そうそう、それそれ!」と木こりの怒りは静まり、彼は女神様に感謝

     しました」

シテツ 「女神様は木こりに「あなたは正直者ですね」と最初に見せた金の斧と銀

     の斧も彼にあげることにしました」

コクテツ「しかし、木こりは「そんなモン要らねえよ!」と自分の斧だけを持って

     帰りました」

メ イ 「こんな超常現象に遭遇したら誰かに言いたくなるもので… 彼は友人の

     木こりにこの話をしたんだ。友人は事の真相を解明するために泉へ行き

     実証実験を行ったんだ。もちろん、斧を泉に落とすという方法でね」

シテツ 「すると再び女神様が現れました。彼女は正直者の木こりの時と同じよう

     に金の斧と銀の斧を持って尋ねました「あなたが落としたのはこの金の

     斧ですか?」」

メ イ 「ここで彼は友人の証言を確かめるために人にあらざる者の問いにNOと

     答えたんだ。すると、彼の証言通りに今度は銀の斧かと問われる、コレ

     にもNOと答える。そして、人にあらざる者の姿が一度消え自分の斧を

     持ってくるので、それにはYESと答える。そして異形の者は全ての斧

     をくれると言う」

J B 「斧である必要は無いけど、金や銀ならば欲しいものよね」

メ イ 「彼は金の斧と銀の斧をもらってみることにした。はたしてこの斧が本当

     に金または銀なのか、所持していることで身に異変は起きないか、など

     突き詰めることは数多くあったからね」

J B 「でも、私はこの話をするときにいつも思うの… もらった金の斧を泉に

     落としたらどうなるのかって」

メ イ 「それから数日の検証を経て、彼の身辺に異常は起きなかったし金も銀も

     本物であると鑑定結果が出た」

コクテツ「金は重いからもらった斧はトマホーク投げの練習に最適で、それから彼

     は毎日もらった金の斧でトレーニングをしてたんだけど…

     また泉に落としちゃったの」

メ イ 「しかし、それは泉の怪異の正体を暴くのには絶好の機会」

コクテツ「すると、またまた懲りずに女神様が泉から現れました。ただし、今度の

     彼女が持っていたのは彼が落とした18金製の斧を上回る純金製の斧と

     プラチナwithダイヤモンド装飾の斧だったのです!」

メ イ 「同じ展開、ならば既知のパターン通りに動くのがベターと判断した彼は

     人にあらざる者が最初に持っていたもの二つは否定して、その後に出て

     くる落としたものを認めたんだ」

コクテツ「もはや斧というよりアクセサリーになった二つには全く興味が無かった

     んだけど、女神様が「持ってけ」と言うんで彼は運良く豪華三点セット

     を手にしたの」

J B 「まあ、使えない斧なんか貴金属として売るのが唯一の使い道」

コクテツ「あれよあれよという間に手にした大金で彼は急に羽振りが良くなって、

     村の人々から疑われ始めたの… そして、最初に斧を落とした木こりが

     彼を告発しました」

J B 「考えてみて、一人目は不慮の事故で斧を落とした。二人目は金の斧の話

     を知っていてわざと落とした。仮に、女神を保険会社や国の補償として

     捉えれば… この話は立派な詐欺事件の話なのよ」

コクテツ「親友に裏切られ、彼は牢屋へと入れられたのでした」

J B 「マネーロンダリングでもしてればね…」

シテツ 「結果的に真面目な木こりは」

コクテツ「仕事に対する熱い情熱で身の丈に合った幸せな生活を送り、楽して金を

     手にしてしまった男は地位も名誉も親友も全て」

シテツ 「失ってしまいましたとさ。おしまいっ♪」




~米国式~


       浮かない顔のバニラが深いため息をつきながら屋敷の庭掃除をして

       いた。そこへ、シナモンがやってきた。

シナモン「バニラ、どうしたの?」

       バニラは掃除の手を止めてシナモンを見た。

バニラ 「あぁ、シナモン。ちょっと聞いてよ、友… いや、知り合いで嫌なヤツ

     がいて、昨日久々に会ったんだけどいつも通り大喧嘩になったの。

     あ~ぁ… ホント、嫌になるよ…」

       困った様子のバニラをシナモンは笑い飛ばした。

シナモン「な~んだ、そんな事か」

バニラ 「そんな事って、本当に困ってんだから!」

       シナモンはボロボロで継ぎ接ぎだらけになった棒人間のような姿の

       ぬいぐるみをどこからか取り出してバニラに見せた。

シナモン「この呪い人形を使えばそんな悩み1発で解決するよ」

バニラ 「それで?」

シナモン「まぁ、見てて」

       シナモンはぬいぐるみの腕を縫い針で刺した。

AJ声 「痛っ! 痛たたた!」

       すると、どこからともなくAJの悲鳴が聞こえてきた。

バニラ 「何が起きたの?」

シナモン「この呪い人形に攻撃をするとターゲットになった人の同じ所にダメージ

     が与えられるんだ。もう一回やってみるね」

       今度はぬいぐるみの足を刺した。

AJ声 「きゃぁぁぁぁ!」

       屋敷の方からガタンガタンと何かが階段を落ちるような大きな音が

       聞こえてきた。

シナモン「今は足を狙ってみたんだけど、多分階段から落ちたね」

バニラ 「何で分かるの?」

シナモン「これは直接ではなく、事故を起こさせてターゲットにダメージを与える

     仕組みなんだ。自分だけしか手を出した事を知らないから警察に捕まる

     可能性も低く安全って訳」

       バニラは呪い人形を手に取ってみた。

バニラ 「すごーい! コレならあの馬鹿を酷い目に遭わせられるね」

シナモン「うん、実際に使ってみた人たちの声も聞いてみよう」


       ケイが興奮気味でインタビューに応じていた。

ケ イ 「昔から悪質なストーカーに合っていて… なんとか撃退できないかって

     考えていたときにこの呪い人形に出会ったの。

     初めは半信半疑だったけどね、試しに人形の首を刺してみたら家に忍び

     込もうとしたストーカーが二階から落ちて首の骨を折ったの!

     それで確信した、「コレは本物だ!」って。

     それから変態野郎はみんなベッキベキにしてやってる、本当に呪い人形

     には助けられているよ」


       JBが淡々とインタビューに答えていた。

J B 「コレは本当に凄いわ。気に入らない人がいればザクッと刺しちゃえば、

     その人は病院送り。

     事故扱いだから警察の心配も要らない事も凄く魅力的ね」


バニラ 「早くて確実で安全。この呪い人形は言うこと無しだね」

シナモン「でしょ! 画面の前のあなたも人生メチャメチャにしたいヤツがいたら

     今すぐお電話…」


       視界がテレビの砂嵐のようになり二人の姿が見えなくなった。




~次回予告~


コクテツ「さ~て、次回のサタニックエクスプレス666は~♪」

シテツ 「シテツです。

     寒さも和らぎ、外の花のつぼみがだんだんと大きくなってきましたが、

     ウチのジンチョウゲの鉢はまだ葉っぱすら出ていません。

     梅の木に小鳥が止まっていたので「あっ、ウグイスだ!」と言ったら、

     「あれはメジロ」だと速攻でメイに否定されました。


     次回のサタニックエクスプレス666 さぶうぇい! は、

     『トーマスの家出』

     『ネタ切れしました』

     『秘境ムレウマ・湯けむり連続殺人事件

      雪山に消えた妹、女レンジャーの勘が暴く自然のトリック!

      そのとき姉は…』

     の三本です」


コクテツ「う~ん… 62点。そのまま本線の予告!」

シテツ 「はい…

      

     アナさんが謎の武装組織に攫われちゃった!

     私設軍が出せないってどうするの!  えっ… ジャルさんが? 

     そんな… メイドさんが一人でなんて危険ですよ!

     組織に雇われたっていうシスターさん凄く強そうですし…


     必ず、帰ってきてください……

      

     次回 サタニックエクスプレス666

     『従者として… ジャル、別れの時』

     想像のその先へ、出発進行☆」


コクテツ「ハイ、お疲れ~♪」

シテツ 「ねぇ… この遊び、どこが楽しいの……」

コクテツ「ノリだよ。声優気分、それだけだよ」




                       〈サブストーリーその6 終〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ