七話 [燃やされたいジョーカー部]
「なぁ、これで全部………だよな」
「あ、あぁ。その筈だ。拓は先に生徒会室まで行っててくれよ、今日の部活の事を冬美にも聞かなきゃいけないし…………まずお前と居たくない」
「うん? なんか今とてつもない暴言が聞こえた気がするけど………」
「お前と居たくない、それだけ。んじゃな!」
「悪びれもしない美智!! さりげなに言うセリフじゃねぇ!?」
俺がそう言うと颯爽と走り去っていく美智。俺は後ろ姿を目で追うことしか出来なかった。
現在、生徒会の貯まった仕事を受け持っており、つか元々これは生徒会の仕事。マジで呪いたいんだが、快く部長が引き受けてしまったため、雑用の俺にやらされている。
ただの書類運びだが、殆ど美智がスタスタ持っていってしまう。
「アイツ…………恐ろしい物を見る目で去っていったけど、どうしたんだろうなぁ」
まぁ、大体検討は付いている。
いや、これしかない。
やっぱりアフロでエヴァンゲ○ヲンのプラグスーツは駄目だったか………
あ、因みにアスカバージョンだ。
俺は事の発端であるプラグスーツを脱ぎに、トイレに入る。
プラグスーツを脱ぎ、トイレの個室から出ると、山谷君が用を足しているのが見えた。
山谷君はワイルドなクラスメイトで、野球部だ。
「よぉ山谷、部活か?」
「うん? あぁ赤司か、そうそう部活ぶか……………」
「ぶか………?」
「ごめん、やっぱりお前とは仲良くなれる気がしない。じゃ、じゃあな。これで勘弁してくれっ!!!」
山谷君は俺を全宇宙に混沌をもたらす最強の存在を見たかの様な顔で俺を見つめ、地面に千円札を置いて走り去っていく。
全く、訳が分からない。
生徒会室は二階なので、ここから一つ下の階に行かなくてはならない。
トイレの横の階段から降りてすぐの所、俺は階段を降りる。
途中で金崎さんが階段から上がってくる。優しい印象が強いクラスメイトで、図書委員の眼鏡が良く似合う生徒だ。
「おう金崎さん。図書委員頑張ってな」
俺は金崎さんに優しく微笑み会釈をし、金崎さんも会釈を…………返さず、コンパスを豪速球で返してきた。
「痛ったうべべふぢゅかあがががつつっつぶぶりつすがやクソ痛いうおぉおおお」
「ゴメンね赤司君っ………!! 君とは………君とは肉体関係になれないよぉっ―――――!!!」
「アンタは何処まで関係を深めてるんですかねぇ!? あ、行っちゃった………」
どうやら刺さった箇所は針の部分では無く、鉛筆の部分だったから良かったものの、やはり痛む。赤くなった乳首を擦りながら、階段の踊り場に出る。
「おお、やってるな運動部」
「ファイッ、オー!! ファイッ、オー!! ファイッ、オー!! ファイッ………………」
あれ、声が止まった。先陣を走っていたのは、クラスメイトの伊井さんだ。陸上部の二年のキャプテンで、面倒見が良い頼れるクラスメイトだ。
伊井さんは何かを探し、右手に掴んだソレを、大きく振りかぶって、投げる。それも此方に向かって。
そう、その赤と白のコントラストを放つボールは………。
モンス○ーボールだ。
「うわぁあああああああ痛ぇっ!!!!!」
「も、もうアンタなんて………。だいっ、だいっ、大嫌いなんだから―――――っ!!!!」
『!?』
「えぇ…………」
そう言って走り去っていく伊井さん。その速さたるや、全盛期のベン・ジョンソン並だ。
俺は真っ赤に腫れたおでこを擦りながら、階段を降りる。
階段を降りた先で、富良野先生が横切る。
「先生こんにちは―――――――っ!!!」
「うるせぇなっ!! って何だ赤司じゃないか…………お、お前っ……」
「へ?」
「何時でも先生の所に来なさい。悩みを聞いてあげるから」
何故か先生は慈愛の表情を浮かべ、急に俺を抱き締めた。
先生は涙を拭いながら職員室に入っていく、なんだろう。意味が全然分からないんですけど。
目の前は生徒会室、扉に手をかける。すると、中から聞こえてくる声が耳に入る。
「それじゃあ連花ちゃん、じゃあねーっ!!」
「はい、これからひーちゃんは部活でしたっけ?」
「うん。部室で皆が待ってるから行くねー!!」
油断していた。向こうからの強制的な介入により、反対側から開かれるドアにバランスを崩す。
「うわぁぁああああ……………痛ってて………」
「うわぁっ!? ………何だ、赤司じゃな…………いですね。サヨウナラ」
「えぇっ!? 俺は俺、赤司 拓。正真正銘俺ですよっ!!」
すると、瞬間的だが、永遠にも思える炎。つか熱い。激烈な痛み。
「いやあっつすすづづすづづうづうづうっづづうぅぅぅうううっ!!!!!」
「ひーちゃんは部室に居てください。ここは私がこの全裸を地獄に送りますので」
「う、うんっ!!」
その日から、[赤司 拓は全裸アフロで校内を走り抜けた]という武勇伝がここ一帯の地域に広がった。