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じょ~か~部!  作者: 杠 音韻
4/18

四話 [完結するジョーカー部]

「へぇ、部長が中に入れたって事ですかね?」

「うー、少なくとも私は入れて無いよ。そもそもなんで私の写真が………赤司」

「………えぇ!? 俺じゃ無いですよっ!! 美智までっ!?」

どうやら俺が疑われている様だ。いや何この状況。

「どうせお前が部長さんを盗撮して隠し持ってたんだろ? はい百円」

「いやいやしてないし!! しかも罰金が微妙に痛い!!」

「じゃ千円」

「だから違いますって!! なんか金額アップしてるしっ!!」

俺が疑われていると、部長が徐に口を開く。

「………懐かしいなぁ、昔の私………」

その部長の声色が何時もよりも低く、辞めてと訴えている様に聞こえたのは俺だけじゃじゃなかった様で、美智も止めてくれる。

「部長さん変わって無いですね………こちらの方は?」

冬美ちゃんが興味を持った様で話し掛ける。指差す先には、同じく笑っている部長の隣、優しそうな女の子だった。

「この写真は中学三年生の頃だよ。昔、仲が良かった親友が居たんだ」

「……………んで、その子は別の高校に………」

「違うの」

俺がそう言うと、部長は拒絶する様に冷たく声を発した。こんな部長は初めてだった。

その異変に他の二人も気付いた様で、二人の顔がくぐもる。

勿論俺もだ。

「彼女は…………病気でね、学校にもろくに行けない子だった。たまたま学校に来たときに初めて会った訳よ。日が経つ内に私達はどんどん仲良くなって、日が経つ内にどんどん病気も進行して行った。案の定学校にも殆ど来れなくなったんだけど、私から病院に会いに行ったの」

「……………」

俺達は何も言えなかった。何も言わなかった。

ここまで感情の読めない部長は、おかしいぐらいに怖かった。

「だけど、1日だけ病院の外で遊べるようになったの。二人で服を買いに行って、二人で遊んで、二人で笑ってた。でも、それが最後だったんだよ。会えるのが。いや、会えたのが。」

「…………つまり、彼女は………」

そこまでしか声が出なかった。震えて何も言えなかった。

「うん、死んじゃったの。その子。」

そう笑ってた自嘲気味にはにかむ部長の笑顔は、やはり悲しい。やはり感情が無い。

「それで、最期に言っていた言葉がね、[道化師の様な笑顔でも良いから、ひーちゃんは笑って生きて]ってさ。まぁ、それがこの[ジョーカー部]発足につながる訳よ。ほら、皆。そんな暗い顔しないで!! とっとと残りの仕事やるわよー!!」

「………………」

やはり、部長が笑ってそう言っても、つられて笑う奴はいない。

だが、そのお葬式みたいな空気を壊す人が一人。

「さぁて、まだ[じょ~か~部!]のイラストレーターさん決めてなかったから、今日はイラストレーターさんも決めちゃおう!!」

「じゃぁここは敢えてゆでた○ご先生で」

「百合漫画のイラストレーターさんでも良いですかねっ!?」

いや、ぶっちゃけ三人。

いつまでも暗い顔してちゃいけない。誰だか知らない人にここまで勇気を貰えたのは初めてだろう。

[道化師の様な笑顔でも良いから、ひーちゃんは笑って生きて]

道化師みたいな笑顔、か。

ジョーカー部らしいその言葉を、忘れる事は無いだろう。さぁ、仕事に移ろう。

「なんでいちいち変な方向に逸れるかなっ!?」

「じゃあここは角川ス○ーカー文庫に頼んでいとう○ゐぢ先生にでも頼んで見よー!!」

「だからどうして角川スニー○ー文庫なんですかっ!? もうちょっと電撃(ビリビリ)文庫とかMF(ミツルギファイヤー)文庫とかあるじゃないですか」

「いやぁ、一番手玉に取りやすいから角川○ニーカー文庫だよ」

「最早レーベルさえも下等集団的扱いですかっ!?」

そこでさっきまで黙っていた二人が話の本線に戻ってくる。

「じゃぁ拓はどんな人をイラストレーターにしたいんだよ?」

「え、えぇ俺!? うーん、そうだなぁ。特に誰でも良いっていうか………」

「んじゃ、瀬戸内○聴で」

「なんかいきなりイレギュラーレベルの人材出てきたんですけどっ!?」

そのイレギュラーレベルは例えるなら、川で鮎を釣ってて、一向に釣れず餌を取り替えようとしたらホオジロサメが釣れてた的な感覚だよっ!! 意味わかんねぇ!!

「瀬戸内寂○も駄目なのかよ…………じゃあ誰なんだって」

「瀬戸○寂聴レベルを採用するお前の頭が駄目だろうがっ!! もうちょっと可愛い絵を描く人だよ……」

「じゃあピカソで」

「絵の可愛いの次元が違いすぎるわっ!! 最早これは時の問題だよっ!!」

「ならもうそこら辺のギャルゲーのイラストレーターで良いじゃん。決めるのめんどくさい」

「え、えぇ………そんなんでいいんですかぁ部長?」

俺がそう言うと、社長椅子から体を起こし、目を爛々とさせ言い放った。

「一応私達の部活の小説なんだし、イラストも私達が描いちゃおうよ!! 流石私ね!!」


こうして[ひのきラグナロク]が発足したのであった。


「さて、勢い余って五百万冊刷っちゃった!!」

『!?』

「また角川スニー○ー文庫に頼んで来たら、到着と同時に出迎えされて、お菓子貰って、お茶飲んで、[五百万冊刷っといて♪]って言ったら即座にやってくれたよ♪」

「編集長の皆さん、本当にすいません」

「なに謝ってんのさ。赤司のイラストは酷かったから抜いておいたけどさ」

「…………」

「いやぁ、初めてイラストを描くもんだから、結構緊張したぜ………」

「そうだねー。冬美ちゃんも頑張ってたよねぇ!!」

「ひぅ…………もう二度としないですぅ…………」

なんか俺を差し置いて、三人で女子会気分か。くそっ!! なんて理不尽な世界なんだっ!!

「ところで、再版とかの予定は流石に無いですよね………?」

「あー!! そうだった、言い忘れてたよ。再版追加で五百万冊決まったよー!!」

「うわぁ、軽く聖書の出版冊数越えそうな勢いですねぇ!?」

部長は何かを考え込む様にして、閃いた様な顔をする。

何だ。次は火星探査宇宙船でも作るのか?

「あーそうそう、二巻以上からは絵描くのめんどくさいし、あのへっぽこロリコン小説家にイラスト描かせる様にしたよ。めんどくさいし」

「どうして二回言ったんですかねぇ!?」

「じゃぁ、今日の部活終了!! 解散!!」

『ありがとうございましたー』

「………………」



その後の夕方。ひのき。

「ふぅ、久し振りにくるみの事思い出したなぁ。けど、もう思い出しても痛くないよ? だってもう笑ってるもん!! 昔の私じゃ無いんだよっ!!」

《ふふ、ひーちゃんは大人ね。さすが私の親友》

「え? 当たり前じゃない!! くるみが居なくても、私はやってけるもん!!」

《あはは、そうね。もう大人だから、私が居なくても大丈夫ね、ひーちゃんは》

「だ、だけど、やっぱりまた会いたいな……………また、くるみと会いたいな………」

そこに響くのは、枯れて落ちた葉っぱが音を立ててさ迷う音。やっぱり寂しい。寂しいよ、くるみ。

「寂しいよ、くるみ…………うわっ!?」

後ろからの衝撃、私は少し怒る。

「ちょっと~!! 赤司、カバン当たったよ~!!」

「ひ、ひぃ!! いやこれはその美智が………え? 何その黒光りしてるゴツゴツしたソレは………いや、ちょ、そんな物入らな………ア――――――ッ♂!!!!!」


もしかしたら、大丈夫かもしれない。

もしかしたら、居なくても私は出来るかもしれない。

だけど、ちゃんと側に居て?

ちゃんと私の事を見ててね? くるみ。


今日も、歩き出す。



ひのき編 完

ちょらーっす、音韻です。ひのき編、完結。以上。

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