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じょ~か~部!  作者: 杠 音韻
11/18

十一話 [羽ばたきたいジョーカー部]

その柔らかな体は、小さいけど、ちゃんとした暖かさがあった。

突然の抱擁に思考がついていけない。

「……………………私の事………ずっと好きだったの?」

抱きついたまま部長は徐に口を開く。俺は腕を部長抱きつくようにして。

「当たり前じゃないっすか………こんな完璧人間、恋しない奴なんて居ませんよ」

「ふふ、そうだよね。私って完璧だから、だよね。罪だなぁ、私って」

「そうですよ。部長は罪深いです」

部長は絡んでいた腕を徐々に、緩やかにほどき、冬空の下、俺を見据える。

部長の顔はいつもより火照っているようで、頬が赤い。

「そう言えば、まだ返事まだだった………よね?」

「はい。いきなり抱きついちゃうから…………」

まだ温もりが残っている。

ヤバい、思い出すと此方も恥ずかしくなる。



「答えは、NOだよ」



部長は、そう言い放った。


だけど、部長は笑っていて、気付けば俺も笑っていた。

「…………ごめんね、赤司は私が卒業しちゃうからだったんでしょ?」

「まぁ、嘘とは言えませんね………」

「あははー。…………だけどさ、何か隠してるでしょ……? 分かるよ、今日の赤司はおかしいもん」

どうやら全てがお見通しの様だ。部長はイタズラっぽく笑い、心配そうに目を向けた。

全く、毎度毎度部長は鋭い。

「俺、今年で玄園から出ます」

「うん」

部長は驚きもせず、笑いもせず、怒りもせず、何の感情も持たない微妙な表情でそれを答えた。

顔は笑ってるが、目は泣いている。

ここだけ分かってしまう俺が情けなく見える。いや、情けない。

好きになった人を泣かせるなんて、クソ人間だ。

部長は表情を変えず、一歩、一歩と近付き、俺の目の前に立つ。

「そうだったんだ………けど、真剣そうだから安心したよ。いつもちゃらんぽらんであほあほの赤司が何を言うと思ったら、そんなカッコいい事だったんだ」

「あほあほって…………。いつも俺は真剣ですよ」

「なははー、ごめんごめん。だけどさ、今日の赤司はカッコ良く見えるなー。そんな赤司が大好きです」

「…………うっ」

思わず泣きそうになる。


感じてしまったんだ。ずっと隠そうとしていた感情。


もう部長達と会えないんだと。


もう楽しくジョーカー部が出来ないんだと。


涙が止まらない。拭っても拭っても溢れだして来る涙は止まらない。

そしてまた柔らかな抱擁。


「まったく、まだまだだね、赤司は………私が居ないと何も出来ないんだからぁ…………うぅ………まだ離れたくないよぉ…………まだ一緒に居たいよぉ…………赤司ぃぃいいいいいい………」

俺はその暖かさを消さない様に。

「俺もっすよ…………俺もまだ部長と一緒にいたいっすよ………まだまだ話足りないっすよぉ………!! 皆と………まだまだ会いたいっすよぉ………っ!!!」

壊れないようにそっと、だけど、離れないようにしっかり。

部長と泣いた。




時は流れ。


卒業式。


来ないように思っていたけど、やっぱり来てしまう、嫌な日。

俺は徐にジョーカー部、改め。

[新演劇部]の目の前に立っていた。

先生から予め貰っていた鍵で、中に入る。中はそのままキレイなジョーカー部。

一つだけ違うのは、部屋の名前が違うだけ。

俺は旧ジョーカー部の表札を手に取る。

「道化師の様に笑顔を絶やさないで………か。……果たせたかな、俺達」

いつの日か、部長が言っていた言葉を思いだし、口に出して言ってしまう。

俺はジョーカー部の表札を机の上、部長の席の前に置き、足を動かす。

「遅れたな、先はお前だったか」

手にかけていた扉が向こうから開き、外から声がする。

「なんだ、美智か。もうすぐだから行かないとな」

「ああ。私も拓と部長さんと居るのが最後だから、記念撮影でもしようと思ってな、後で来いよ」

「是非是非来るですっ!!! 多分良いことがありますから………」

隠れていたが、冬美ちゃんも居た。

俺は美智たちと一旦別れて、もう一度あの場所へ向かう。


初恋が実った、あの場所へ。




次回、最終回。

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