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キスから始まる物理系女神様の世界更生伝説  作者: 朝月ゆき
【第一章】
3/41

〜恋雨(3)〜目覚めた先にあるのは


ーー優しい鳥の鳴き声がきこえた。

爽やかな風が穏やかにとおりすぎる。


ーーこのままずっと眠っていたい。


*******


ーーポツリ、と冷たい何かが美耶の額を濡らした。


ぼんやりとした意識の中で、美耶は力なく(まぶた)をもちあげた。


(ーー雨…?)


身体を濡らし始めた物の正体を悟り、美耶は気怠(けだる)げに上半身をおこした。

そこで、視界一面にひろがった景色に言葉を失う。


ーー見知らぬ森だった。


緑の世界。美耶を暖かく包む微かな花の香り。優しく笑う風。

まるで、美耶の訪れを歓迎しているよな。


(……でも、何で)


ーーこんな所に?


穏やかに降り始めていたはずの雨が急に勢いをました。

ーー神秘的な森が暗くなっていく。


確か、美耶は部活を終えて、家に帰っていた。

そして、その途中で雨が降り始めてーー


(………あれ?)


それから、どうしたのだろう?

漠然とさえ覚えていない。

ーーただ。


(理央……)


誰の名だろう。その名だけが、混乱を極める頭の中にはっきりと刻まれている。

まるで、母親が可愛い赤子を抱くように、大切にその名だけをかかえている。

誰にも奪われないように。誰にも傷つけられないように。


(……よくわからないけど、この名前は誰にも教えてはいけない気がする)


美耶は雨に打たれないようにとにかく走り出した。


(てゆうか、本当にここ、どこっ!?)


自分が置かれている状況を理解しようと、美耶は必死に頭をまわそうとする。

だが、雨が痛いくらいに鋭さを増したため、思考回路を回すことに失敗した。


「なんかもう、あり得ないんですけどーーっ!!」


気がつけば、綺麗だけど見知らぬ森にいた上に、記憶の一部が消えてしまっていた。そして、とどめにこの雨。

誰かの恨みでも買ってしまったのだろうか。


「んなの、しるかっ!!」


今日までずっと誠実かつ噓いつわりなく生きてきたのだ。


(ーー運命の神様のばかやろう。)


とにかく、自分をこんな状態にした奴を罵っておく。誠実さのかけらも見えない悪態をとった美耶への嫌がらせなのか、今度は雷までも美耶をおそった。


「ぎゃゃゃあっ!!無理っ、無理ーっ!!」


一介の女子高生にすぎない自分。

容赦ないこの展開。あり得なさすぎて、泣ける。


無我夢中で、この雨と薄闇と化した森から逃れるべく走り続けたが、不意に足元がふらついた。

ーー無残に転倒。

もう、泣いていいだろうか。

こけた上に、顔面を目の前にあった大樹に激突させるなんて。


「くそぉう…っ!」


(うめ)きながら、美耶はズキズキして止まない顔を両手で覆った。

全てのものに殺意を放ちそうだった時だった。


「………え?」


美耶の顔面攻撃が見事にさくれつしたこの大樹が突如、淡く輝きだした。

そして、大樹が光を放ちながら、あろうことか凝縮した。

再び、言葉を失った。


ーー大樹の光の中から、美貌の男性があらわれた。

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