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キスから始まる物理系女神様の世界更生伝説  作者: 朝月ゆき
【第一章】
17/41

〜恋雨(17)〜現役女子高生の必須物

ーー闇神の心情編。


時神&霧神おいてけぼり笑!!



「私のスマホおおおおっ!!!」


突然、美耶が叫び声をあげたと思ったら、彼女は取り出した四角い物体を大切そうに抱き込んだ。


驚きと同時に歓喜の表情をした美耶が理解できず、どうしたんだ、と闇神は問い詰めた。


すると、大きな涙を目端に浮かべた美耶が闇神をふり返った。


ーー不覚にも、潤んだその目に心臓がひときわ大きな音をたてたことを知ってしまった。


彼女を思い切り抱きしめたい衝動がわく。


「これ、私の大切な物なのっ!大好きな類斗(るいと)の画像がいっぱいあるのっ!ああ、まさかスマホがあるなんてっ!!」


ーーだが、彼女の口から聞いたことのない男の名が(つむ)がれたことに、腕をのばすより、顔をしかめてしまった。


「類斗……?」


一体誰だ。

耳にしたことのない名だ。だが、聞くからに男だと分かる。

無意識に、表情が厳しくなっていく。


「誰だそいつは」


言葉を発すると同時に、狂喜乱舞する美耶の細い腕をつかんでいた。


ーーなぜ、こんな行動をとってしまうのか。


そう疑問に思う余裕さえなかった。


「ーーい、痛いっ!!」


悲鳴をあげて、無理やり闇神の腕を振りはらおうと試みた美耶だったが、彼はそれを許さなかった。

彼女が素直に答えるまで、決してはなさない。


「言え。誰なんだ」


「ーーっ、弟に決まってるでしょ!さっさとこの腕をはずしてよ!めっちゃ痛いんですけど!!」


弟。

脳内に、その単語が落ちてくると、闇神は美耶の腕をはなした。


途端、美耶は闇神を思いっきり睨みつけた。


「女の子痛めつけるなんて…最低」


そう吐き捨て、彼女はふいっと顔を背けた。

そんな彼女に、自分が今なにをしていたか理解し、胸中で微かに狼狽した。

ーー自分が彼女を傷つけた。

その事実が胸を貫く。


なぜ、狼狽する?


自分は散々、彼女を精神的にも追い詰めたはず。

非情な行為をたくさんしたはずだ。

そうーー

一方的に彼女を奪おうとしたり、彼女が大切に思っているあの神は死んだ、と虚偽を言ったり。

たとえ彼女が、そんな行動をとる自分をどんな風に思おうと、どうでもよかったのだ。

だが、今はーー?


(俺はこいつに色々狂わされているな……)


いくら価値ある神といえど、女に自ら食事を食べさせたりしないし、拘束具を付けて、からかったりしない。

自分が好むのは、戦い。血なまぐさい戦闘。武器。

それ以外は何もないはず。

しかし、この少女に関わるのは戦う時とはまた違う高揚感を覚える。

それは、認めざるをおえない。


では、なぜ自分は彼女にこんなに気持ちを振り回されている?


ーー本当はわかっているのだ。

あの時、自分が衝動的にした行動。

甘く、感情を狂わされたゆえーー勝手に動いていた。


ーー恋情。


そんなものを持ってしまった。


(この俺が……)


ーー笑える。

冷酷無慈悲。

そう囁かれている自分が恋情?あまりにも馬鹿げている。

他神にとっても滑稽で愚かな話だろう。


だが、一度抱いてしまった気持ちは簡単には消えない。

どうしても、彼女の一挙一動に、鋼のごとく硬く揺るがなかった心が呆気なく動かされる。

彼女を翻弄しているように見えて、本当は彼の方が彼女に翻弄されている。


強力な力を持つ神が多数いる中でも、最高位に位置する男神。圧倒的な力で、敵なしとも囁かれていた闇神。その彼がーー。


(本当に、笑える)


ーーどこか、自嘲気味になっていた。


謎明かされるまでもう少し。

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