三.大雨注意報 8
つい 一昨日までは生活感の無い唯の《 空部屋 》だったのに、今は生活感が漂っている。
掃除はしていたものの、使われていない部屋の雰囲気は、孤独で寂しさが漂い、何処と無く暗く、まるで心臓が止まったまま死んでいる様に感じられたが、今の部屋の雰囲気は、春の日だまりの様に暖かく、明るく感じられた。
人が使っているだけで、こんなにも部屋が生き生きしている様に感じられるものなのかと、マオは思った。
『 セロに部屋を貸して良かった 』──と、生活感のある部屋に変わった《 空部屋 》を見ながら、マオは顔を綻ばせた。
マオ
「ええと──、セロに話したい事なんだけどな…、明日のスケジュール表をだな、オレなりに作ってみたんだ」
セロフィート
「スケジュール表…です?」
マオ
「うん。
セロに見てもらおうと思って、持って来たんだ。
これなんだけどさ…」
丸めて持っていたスケジュール表を広げると、右横に座っているセロフィートに見せる。
セロフィート
「ははぁ…これが明日のスケジュールです?」
マオ
「そっ!
『 森林浴したい 』って、昨日、言ってたろ?
だからさ、朝起きたら《 噴水広場前:テコ 》へ行って、森林浴をしながら《 噴水広場前:オマ 》を通って《 噴水広場前:エコ 》へ向かうんだ。
《 商店街 》の中にある近くの《 飲食店 》で朝食を済ませてから《 駐車所 》へ行く。
《 竜車受付所 》へ行って《 竜車乗車所 》から《 竜車乗車停 》へ移動して〈 竜車 〉に乗って《 大広場二区 》へ行く。
到着するのは昼頃になるだろうから、近くの《 飲食店 》で昼食を済ませたら、今日行けかった《 図書館 》へ行くんだ。
夕食は近くの《 飲食店 》で済ませて《 竜車乗車停 》で〈 竜車 〉に乗って《 大広場一区 》に戻るんだ。
軽めに夕食を《 屋台 》で済ませたら、家に帰る──って感じだ。
どうかな?」
セロフィート
「明日の朝食,昼食,夕食は外食になるのですね…」
マオ
「そうだな。
外食は嫌か?」
セロフィート
「いいえ。
マオと 一緒ですし、楽しみです♪
──マオ、このスケジュールを見ると……朝から出掛けますね」
マオ
「そうだよ。
散歩をするなら朝に限るからな!」
セロフィート
「…………。
マオ、午前は霧が出るから外出はしない様にとマーフィから言われました。
忘れてます?」
マオ
「う…忘れてないけど……。
午後から《 図書館 》に行ったんじゃ、着くのは夕方だぞ。
明るい午後に着いた方が本も沢山、読めるんだ。
その方が良いだろ?」
セロフィート
「マオ……。
有難う、マオ。
ワタシの為に明日のスケジュールを考えてくれて。
マオの気持ち、ワタシは嬉しいです」
マオ
「う、うん(////)」
セロフィート
「──ですが、マーフィと約束しました。
霧の出ている午前は外出しないと。
外出するのは午後にしましょう」
マオ
「…………え?
でも、それだと《 図書館 》には行けないけど…」
セロフィート
「森林浴を楽しみたいです。
朝の散歩は清々しくて良いかも知れません。
暖かい昼間の散歩もワタシは好きです。
マオは昼間の散歩は嫌です?」
マオ
「嫌じゃないけど…。
ま、まあ…セロが『 どうしてもそうしたい 』って言うなら、セロの希望に変更するけど!」
セロフィート
「はい♪
そうしてもらえると嬉しいです。
有難う、マオ」
マオ
「べっ別に…いいさ!
そうするなら、昼食はどうするんだ?
家で食べてから行くか?」
セロフィート
「霧が晴れたら出掛けたいです」
マオ
「ふーん?
なら昼食は明日の霧の引き具合になる…か」
セロフィート
「──マオ…《 図書館 》へは明日以降で大丈夫です。
急いでません。
どうか落ち込まないでください」
マオ
「──べ、別に(////)
オレは落ち込んでないからな!
変な心配するなよな(////)
じゃあ、明日は、森林浴だけな!
お休み!
──あっ、明日の朝食の時間も 八時だからな!」
セロフィート
「はいはい。
朝の 八時ですね。
御休みなさい、マオ」
マオ
「じゃあ──」
ドアを開ける為に、鍵を開け様と、セロフィートに背中を向けたマオの体は、不意に後ろから抱き締められた。
セロフィートはマオの背中に腕にを伸ばすと、マオの両肩を包み込む様に抱き締めた。
マオ
「──っ?!
セ、セロ…(////)
急に何だよ?!」
突然の出来事に、思わずマオの声は裏返ってしまう。
セロフィート
「ふふっ…。
眠る前に、マオの顔が見れて…マオの声が聞けて…マオと話せた事が嬉しいのです。
──今日は有難う御座いました。
明日も 一日、お願いしますね?」
マオ
「あ…ああぁあ当たり前だろっ!?
セロは久々の客人だからな!
そんなの気にすんなよ(////)
ど、何処の家でも同じだし?
べ、別に特別な事でもないし?!
普通だからさ!」
セロフィート
「──マオ、鍵が開けれません?
…………はい、鍵を開けました」
まごつくマオの代わりに、ドアの鍵を開けてあげると、マオの耳元で優しく囁く。
マオ
「あ…〜〜〜〜っ、ありがと(////)」
耳元で聞こえたセロフィートの心地好い声が、マオの胸をキュッと締め付けた。
マオの胸がドックンと高鳴る。
マオは顔だけでなく、耳まで真っ赤に染まった。
セロフィートの腕から解放されたマオは、ギクシャクした動きでドアを開けると《 貸部屋 》から出る。
ドアを閉める時に、ニコリと微笑み、手を振ってくれるセロフィートに見送られ、マオはドアを閉めた。
──*──*──*── 廊下
マオ
「(──っ、はあっ!! 吃驚したっ〜〜〜〜!! セロの奴〜〜、いきなり抱き付いて来るなんて、何を考えてるんだよっ!! あ…あんな声で、耳元で言わなくてもいいのにっ!! 〜〜〜っ、ドキドキしちゃったじゃんかよっ!!)」
マオは顔を真っ赤にさせながら、そそくさと《 自室 》へ戻った。
──*──*──*── マオの部屋
部屋に入るや否や、ルームシューズを脱ぎ散らかし、ベッドへダイブする。
顔が熱い。
誰かから、あんな心地好い声で囁かれたのは初めてだった。
マオの胸は未だドキン、ドキン──と高鳴っている。
マオ
「…………セロの奴──。
何だっていきなり〝 あんな事を 〟して来たんだよ?
悪ふざけも過ぎるよな?」
モヤモヤする気持ちと悶々する妙な気持ちがマオを襲う。
マオはさっさと寝間着に着替えると、ベッドの中に潜り込んだ。
頭が見えなくなるまで、掛布団を被ったマオは、目を瞑ると、無理矢理、寝る事にした。
──*──*──*── 貸部屋
一方のセロフィートは、マオを送り出した後、再びドアの鍵を掛けると、ベッドの上に腰を下ろし、座る。
マオが持って来た明日のスケジュール表を手に持ち、読み返しながら、マオの様子を思い出しては、悪戯っ子の様にクスクスと笑っていた。
セロフィート
「ふふふ♪
ワタシの為に明日のスケジュールを考えてくれていたなんて……。
マオ、可愛い♪
顔を真っ赤に染めたマオも可愛かったです♪
狼狽えるマオも可愛かったですし♪
本当にマオは面白い子ですね♪
からかい甲斐があって楽しいです♪
──〈 久遠実成 〉……いい子と出会わせて戴いた事を感謝致します…」
クスクスと思い出し笑いをしながら、マオが作ってくれたスケジュール表を丁寧に折り畳むと、ベッドの端に掛けてある丈夫そうなポーチの蓋を開けた。
中から日記帳を取り出し、日記帳を開ける。
白紙の頁の間に折り畳んだスケジュール表を挟んだ。
セロフィート
「使う事はなくとも、マオがワタシの為に作ってくれた手作りです。
記念に取っておきましょう」
愛しい眼差しで、日記帳の表紙を暫く撫でると、日記帳をポーチの中へ入れる。
ポーチの蓋を閉じると、ベッドから腰を上げて立ち上がり、椅子へ移動し、腰を下ろし、椅子に座った。
机に向かい、閉じていた本を開ける。
頁を捲り、栞を挟んだ箇所を開くと続きを読み始めた。
一時間程、本を読み進めたセロフィートは、頁に栞を置くと、本を閉じた。
部屋に入って直ぐに寝間着に使っている衣服に着替えていたセロフィートは、椅子から腰を上げて立つと、窓の鍵を掛け、カーテンを閉める、ベッドの中に入る。
セロフィートは両瞼を静に閉じると、眠りに就いた。




